「U-35」誕生のものがたり
アートの世界を未来へつないでいく
それがターナーの使命
デジタル化が加速するなか
絵具には何ができるのか
暮らしのさまざまな場面にデジタル化が急速に浸透していく現在。絵についても誰もがパソコンのアプリケーションやタブレットで簡単に描くことができ、人々の絵具離れはますます進んでいます。1946年の創業当時から絵具に関わってきたメーカーとして、手描きのアート、デジタルでは表現できないアートの世界を未来へしっかりと残していきたい。それがターナー色彩に託された使命ではないか。その想いから、いま活躍しているアーティストの力になることはもちろん、これから才能を開花させる次世代のアーティストを応援したいというコンセプトで、まったく新しいアクリル絵具「U-35」を企画。製品化の決定まで長くはかかりませんでした。
ターナー色彩だからできる
かつてなかったものを
「U-35」製品化のバトンは企画部門から開発部門へと渡されます。日本にはすでに多くのアクリル絵具が普及し、他社に並ぶ製品では次世代アーティストにとってどれも同じ。アーティストのエネルギーに応え、表現力を新たな領域へと誘うことは容易ではありません。これまでになかったアクリル絵具を、どれだけ形にできるか。ターナー色彩が製造するからには、その個性をどれだけ製品に表現できるか。開発のスタートはまずターナー色彩の持てる力を、ターナーらしさを見つめ直すことでした。幾多の水性絵具や合成樹脂絵具の開発からアクリルガッシュの開発を経て、70年以上積み重ねてきた絵具の知識と技術がある。他社にはない、耐候性と発色にすぐれた塗料を製造するノウハウもある。そして世間で評価されているターナー製品の色のよさ、のびのよさは「U-35」も必ず踏襲しなければならない。ターナーらしさを突き詰めていった結果、プロフェッショナルが安心して使えるクオリティと初心者でも安心して使えるパフォーマンスを両立するというひとつの目標が定まりました。
課題とスピードに
技術者全員がチームで挑む
通常の開発は個人がひとつの製品を担当します。しかし「U-35」では研究開発室の全員でチームとして取り組むことになりました。これは現在のメンバーでは初めてのこと。ベテランの経験と知恵に若手の発想とエネルギーを融合し、チーム一丸となったシナジー効果によって製品開発の高いハードルを越えたのです。原材料は現在使用しているものを含めてゼロベースで見直しました。発色や透明性のレベルを圧倒的に上げるためには新しい原材料も必要となります。本当に見つかるのかという不安を抱えながら、探しに探しました。重要な顔料では欲しいものが廃番となっていたり、コロナウイルス影響下のロックダウンによって原材料の調達が困難に。メディウム開発ではシミの解消に試行錯誤するなか、まったく用途の違う原材料に効果があることが判明。立ちはだかる壁も乗り越える術も予想外の連続でした。一進一退しながらも多くの課題をクリアし、完成にたどり着けたのは個人を超越するチーム力の賜物です。加えて、数々の局面で最後の最後に発見や出会いに恵まれたことも事実です。
アクリル絵具の最終進化形として
世界のスタンダードへ
「U-35」にはターナー色彩がこれまで培ってきた知識と技術のすべてが注ぎ込まれています。また過去と未来を結ぶ「U-35」の製造を機に、ロールミルや充填機などの最新設備に数億円を投資しました。世の中にはさまざまな絵具製品が存在し、これ以上に新しい製品は登場しないほどの飽和状態にあるといえます。ターナー色彩にとって「U-35」はアクリル絵具の最終進化形になり得る品質を実現しました。近い将来、世界のアクリル絵具のスタンダードとなり、次世代アーティストの表現力を広げ、制作活動を強く支えていくこと。それが「U-35」に託された使命です。