ターナー色彩株式会社

 
美術手帖2011年9月
大塚いちお オル太
祭りと生の芸術

石井芳征=取材・文
間部百合=撮影影(作品図版除く)
Text by Yoshiyuki Ishii Photo by Yuri Manabe
CDs
ユニバース・オブ・ねこまんま 2010 畳、ビニールにアクリル絵具ほか サイズ可変 撮影=神宮巨樹

つちくれの祠 2011 42×59.4cm
土、藁、木、竹、石にアクリル絵具ほか
500×500×700cm 撮影=神宮巨樹(上)
写真提供=川崎市岡本太郎美術館(下)



オル太の田 2010 土、藁、木、紙にアクリル絵具ほか
サイズ可変 撮影=加藤健 ©Tokyo Wonder Site


大きな工場の一画をアトリエに構えるオル太。つねにメンバー同士の対話からアイデアを積み重ね一つの作品をつくっていく

過去の作品ファイルにはアクリル絵具で描かれた大量の絵画作品が束ねられていた

制作中の米袋の作品には、赤ベコの絵が描かれていた

毎回膨大な数の作品で空間全体を埋め尽くすオル太の展示。制作は分担で行われる

発色の良いオレンジ色で塗られた埴輪。立体作品の彩色にもアクリル絵具を使用
多摩美術大学絵画科出身の11名のメンバーからなるアーティスト集団、オル太。今年、第14回岡本太郎現代芸術賞を受賞した《つちくれの祠ほこら》をはじめ、パフォーマンスを含んだインスタレーションやプロジェクトのスタイルをとった作品が多い。おそらく、ホワイトキューブを展示の前提にしていたらこのようなカタチにはならない、「間」というものを無視した、ものと人のひしめき合う空間。野太く粗野なエネルギーが渦巻く「生」の場というのが、オル太の作品から感じる印象である。

「みんなの中で、これがオル太だって思えるものが漠然とある。言葉で言うのはなかなか難しいけれど、誰かがバカなことやりはじめて、面白いなって感じでまとまっていったときに、『あっ、いまのがオル太だよね』って。制作のときも誰かの案に対してみんなで話し合い、つくっていく過程でオル太になっていくんです」。

土、藁(わら)、木などを素材に使い、高さ5メートルにも及ぶ巨大な祠、メンバー自ら「生きた供え物」として作品の一部となる《つちくれの祠》は、インスタレーションの域を越えている。
それは出来事を生み出す身体表現の「場」という意味では、演劇的とも言える。しかし、舞台と客席という境目がなく、観客もその渦中に放り込まれるような体験をするという意味では、むしろそれは、「祭り」と呼ぶにふさわしい。

「節分の日に、急に思い立って鬼ごっこをしたんです。棒を振り回しながら鬼が本気で追いかけてきて、みんな逃げ回って。それが本気で痛くて、豆投げてもひるまないし、すごく怖かった(笑)。意外とそういった遊びが作品につながるときもありますね」。

そのときの映像を見せてもらったところ、ほとんど通り魔が若者に暴力をふるっている衝撃映像にしか見えなかった。しかし、予定調和ではない出来事に彼らが純粋に反応してしまうところは納得がいく。ロジックを越えて生じるリアリティー、それこそまさに「祭り」の醍醐味というものである。

オル太の過去の作品にもこうした「祭り」的な要素は共通して存在する。「+GIMICK-」「HERO」など、外部から様々なアーティストを集め企画した芸祭的なグループ展や、御柱祭を想起させる30 キロの丸太を担いで昼夜徒歩で移動する様子を映像に記録した《オイリーオル太〜丸太プロジェクト》、ギャラリー内に田んぼを再現し豊作を祈る祝祭《オル太の田》など、大小様々な「祭り」が試行されてきた。それが、岡本太郎現代芸術賞への出品・受賞という過程を経て、岡本太郎がかつて示した「祭り」、人間性を回復させる「べらぼうなもの」に接近したことで、より鮮明になったと思われる。彼らの芸術は明らかに「美」ではなく「生」を基準に行われている。オル太と同じく集団的表現を行うChim ↑ Pom や未来芸術家遠藤一郎など、見渡せば「生」を基準とした若い芸術は、あちこちで噴出しはじめている。

「人は土の上にじかに立っていたほうがより身体を感じられると思うんです。いまって土からどんどん離れている気がして。そうした身体感覚を忘れかけている時代に、土の中にある有機的なものを感じてインスピレーションの源泉にしているところがあります」。

  3月11日の震災以降、概念や思想ではなく、衣食住といった日々の生活の中の様々な場面で、「生」を突きつけられることになったいま、オル太が示す「生」を基準とした芸術は、図らずも時代にマッチしたと言える。しかし、いまや土の中には彼らも求めていなかった有機的ではないものが混じってしまった。震災後ボランティアで現地に入りいろいろな実感を持ち帰った彼らだが、まだそれは彼らの中でも消化しきれておらず、安易に表現するものでもないと考えているようだ。

「新しいビジョンがあるというよりは、いまあるもの、やってきたことをしっかりやり続けていくのが重要かなと思っています」。

取材時《つちくれの祠》を発展させた新作《つちくれの精霊》を制作中だった彼ら。メンバーがモノと人が一体化した中間的な存在、精霊になったアニミズム的な世界観が増した作品になるということだった。芸術の限界と可能性を同時に示す、今後のオル太の「生」の表現に期待を馳せる。
 
オル太 OLTA
2009年3月に結成した1980年代生まれの11人からなるアーティスト集団(取材当日は8人が参加)。多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。メンバーは、Jang-chi、長谷川義朗、川村和秀、梅田豪介、斉藤隆文、井上徹、今井達也、高木真希人、大和武司、前川瞳美、メグ忍者。2009年5〜11月、毎月連続で企画展を開催(TURNER GALLERY、東京)。10年「オル太の田」第4回展覧会企画公募入選(トーキョーワンダーサイト本郷)。11年《つちくれの祠》で第14回岡本太郎現代芸術賞岡本太郎賞受賞。10月2日までグループ展「NEXT - TWS10年!(」トーキョーワンダーサイト渋谷)に出展。8月7日〜21日、個展「つちくれの精霊(」生誕100年「人間・岡本太郎」展関連企画、ヨコハマトリエンナーレ連携プログラム)を開催予定。
私の一色 ロー アンバー [116-A]
「とくに平面作品を描くときに、この《ロー アンバー》を黒の代わりに使っています。彩度を保ちながらも、暗くしたいときに他の色に混使ぜて使うんです。それって絵画教室で教えてくれるような基本的な手法なんですけど、あえてそういう古くさいところを狙って黒の代用をしています。GOLDENは、大学に入る以前から使っているので、昔描いた絵をいま見ても当時の色と変わらないですね。耐久性の面でも発色のよさを実感します」