ターナー色彩株式会社

WEBマガジン「アクリル絵具の現場」

vol02:大槻和浩

CHAOS 第60回記念二紀展 2006 第57回二紀展 2003

ーアクリル絵の具が手放せないところ

以前は「油絵」という言葉に捕らわれて油絵の具を使うことが当たり前でした。しかし仕事の関係で制作時間が限られるようになってからはアクリル絵の具を使うことにしました。アクリル絵の具は乾燥が速いので制作時間を短縮できると考えたからです。しかし、当初はどうしてもアクリル絵の具では油絵の具のような微妙な表現ができなかったり、重厚感がでなかったり、油絵の具の作品に負けない工夫が必要だと思っていました。

しかし、大事なことは自分自身が何をどのように表現するかであり、今では油絵との比較を気にすることなく、逆にアクリル絵の具の特性を生かし、自然にアクリル絵の具で表現し、アクリル絵の具を楽しんで使っています。工夫次第で多様な表現が可能で、まだまだ可能性を秘めた絵の具だと思います。

ーアクリル絵の具をどんな技法で使いこなしているか

少し前まではモデリングペーストでつくったマチエールの上からアクリル絵の具で描画し、さらに膠の代わりにマットメディウムで溶いた岩絵の具を塗って拭き取ると、マチエールの凹の部分に残った岩絵の具と下地のアクリル絵の具との色が微妙に重なり、独特の効果を出すことができました。

今はほとんど、他の顔料等は使用せず、アクリル絵の具の微妙な重なりだけで色の効果を出すように工夫しています。最も多用する技法は拭き取りです。ある程度仕上げた上から別の色(主にジェッソ)で塗りつぶし、布で拭き取りながら浮き上がる形を残す。残った形を頼りにまた描き、また塗りつぶして拭き取る。これを幾度と繰り返すことで、深い色、微妙な色の変化を出すように仕上げていきます。塗りつぶした絵の具の乾くタイミングによってさらに複雑な色合いが偶然出ることもあります。私は人物の顔を描いていますが、この繰り返しがアクリル絵の具で微妙な表情を醸し出すための一つの手法でもあります。

ーアクリル絵の具を使うときの秘密の道具、
 秘密の基底材、秘密の素材

基本的にほとんど道具にはこだわりはありませんが、絶対に欠かせない道具は、使い古したタオルです。もちろん拭き取りに使います。これがなければ、今の自分の作品は成り立ちません。

筆は主に100円ショップの筆とホームセンターで買ったペンキ用の刷毛を使います。マチエールの上に塗るので、筆はすぐに摩耗し使い物にならなくなります。高級な筆は描きやすいかもしれませんが、すぐに使えなくなるのでもったいなくて・・・。制作時間の7〜8割は絵の具をタオルで拭き取っているので、筆の役割はそれほど大きくないのです。

もう一つ秘密の道具といえばデジカメとパソコンです。狭いスペースで描いているので、大作を描く場合に引きがとれなくて全体が見えません。そこで制作途中の作品をデジカメで撮影し、パソコンの画面上で確認したり、フォトレタッチソフトでその後の色や構成の展開をシミュレーションしています。そうしている間にアクリル絵の具は乾いてくれるので、長時間待つことなく描き進めることができます。