ゴールデンアクリリックス
ゴールデンフルイド

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この日記はゴールデン社
2007.5.7
水彩画にワニス???
この一年ほど、水彩画に当社のMSAワニスを塗りたいというアーティストからの 要望が増えています。コンセプトは単純なもので、水彩画の表面を保護して、紙 に描いた水彩絵具の顔料と樹脂をしっかりと定着させたいということです。当社 のMSAは、紫外線フィルターとHALS(光安定剤)と呼ばれる成分により、紫外線 量とその破壊力を軽減します。

このコンセプトはよさそうですし、MSAは多孔質の水彩に容易に浸透し、紙への 接着と保護効果を与えます。私の懸念は、この技術的な効果でもなく、またガラ スのカバーが不要になるのか、という質問に対してでもありません。

このMSA(ミネラル・スピリット・アクリル)を塗ってしまうと、その意図や目的にか かわらず、作品に対し永久的な処置になるということです。アクリル樹脂は、水 彩の顔料やアラビアゴム、紙に充満していきます(塗付方法や塗付量によりま すが)。水彩画家にとって、これはミクストメディア作品ということになります。また、 このテクニックでワニスが画面の美観を変えないようにするには、非常に多くの 修練を必要とします。画面の変化なしにワニスを塗るということは、おそらく最も 難しい部分でしょう。

しかし、ガラスで覆わなければ、描画面やワニス、紙は環境に直接さらされること になり、大気汚染やタバコの煙、指紋、あるいは虫などに傷つけられる可能性が あります。このような損傷を除去することは非常に困難です。

しかし、私が重要だと思うことは、不可逆的なプロセスによる、得失です。得られ るのは、顔料の紙への定着がずっとよくなる点と、鑑賞者が直接触れられるよう になることです。失われるのは、上質の自然な紙の感触と、美しい水彩画の全体 の質感が変わってしまう可能性です。ワニスというテクニックは、作品をガラスで カバーするよりもずっと安上がりであることは分かりますが、それが主要な価値と すべきではありません。最終的な選択は個々の判断になりますが、その結果を 理解した上で行うことが重要です。


マークさんのコメントに、水彩画のワニスについての過去の記事やその役割についての補足をします。

1.「トーマス・ゲインズボローのワニスがけした水彩技法」
P. Derow, Master Drawings, Vol. 26, no. 3, Autumn 1988, pp 259-271
フォッグ美術館で行われた、1770年代におけるゲインズボローの特異な水彩技法に関する議論と検査。
他のコレクションにある同様の水彩画も検査。記事には多くの顕微鏡写真や修復家が興味を持つような 技術情報が含まれ、著者はMarjorie Cohnや他の修復家の協力に感謝している。

2.スタンフォード大学資料
大切なことは、純粋に保護目的で透明な物質を塗った伝統的な作品と、印刷物や水彩画を、より高価な油 彩画と同様の外観にするために、つまり販売目的で行うワニスがけは、区別すべきということだ。もうひ とつのワニスの目的は、高価なガラス額を使わずにすませようとすることで、これは1645年のOliver Cromwell によるものまでさかのぼることが出来る。修復という観点からは不幸な結果であるが、この手法の動機は 別のものであり、またそれ自身が魅力ある歴史の一部でもある。同様に、ワニスがけは耐水性を与えるこ とと、巻いたり開いたりするときに柔軟性を与えることも指摘したい。

  サラ・サンズ  ゴールデン社技術サポート部

オリジナルページに書き込まれた
アーティストからのコメント1
キャンバスに描いた水彩にワニスをかけたとき、一つ勉強した。
カーポートの床にキャンバスを寝かせ、最初にフキサチーフをかけたが、下半分は十分ではなかった。ワニ スを刷毛で塗るときに、水彩の下側の色(暗い色)が溶け出し、全体に広がってしまった。この作品は販売 価値がないと考え寄付してしまったが、色がより鮮やかになった効果はよかったし、受け取った側は作品が ダメージを受けたことにも気がつかなかった。

マークさんの返事
どういうワニスを使ったのですか?

アーティストからのコメント2
私は紙に描いた水彩にワニスをかけたことはないが、この2年、水彩キャンバスに水彩画を描くようになり、 その場合はワニスをかける。私にとって、ワニスの利点は莫大なものだ。ガラスのカバーなしで作品を見るの が好きだし、油絵画家が使うようなカバーのない簡易な額縁を使えるのがよいし、額縁に入れる縁取り(マット) やガラスがないためにその分、サイズも大きくならず、視覚的な価値を得ながら経費節約ができる。
私も、最初にフキサチーフやウレタンクリアなどをスプレーした後、UV保護のワニスを刷毛塗りしている。 使っているのは、ダニエルスミスのマットピクチャーワニスだ。ゴールデン製品もUV保護があるということ だから、次回は使ってみたい。アクリルマットメディウムも使えるかもしれないが、試したことはない。
水彩画団体の多くは展示会にワニスがけした水彩画は受け付けていないので、それがワニスがけの難点の一つだ。 個人的には、紙に描いた水彩画にワニスをかけないのは、カバーのガラスを避けるためだけではなく、紙は直接に 額装(フレーミング)するだけの耐久性がないと思うからだ。ガラスを使いたくないならば、水彩キャンバスか、 テクスチャーをつけたクレイボード(粘土板)を試してみるとよい。

マークさんの返事
可能ならば、最初の定着コートにはアクリルクリアを使ってください。ウレタンはお勧めするとしても、その前 に経時変化の評価をしたいところです。お使いのウレタン等の情報がありましたら、当社で評価できます。
それから、マットメディウムを定着(遮断コート)や上塗り(トップコート)にするのも避けた方が良いです。 多くのアーティストはこの材料が、多くの画面、特に布地や紙に溶け込むように見えるので好んでいることを知 っています。サイジングの材料としては、フルイドのマットメディウムがベターでしょう。それほどマット(つや 消し)ではありませんが、透明性が高い製品です。
マットワニスを塗る前の処理方法は素晴しいと思います。アーティストが犯す最も大きな誤りの一つは、非常に 吸収性のある画面をマットなワニスでシールして(覆って)しまうことでしょう。ほとんどの場合、ワニスの液 体成分が吸収性の面に急激に吸い込まれ、つや消し剤の粉っぽい残留物が残ることになります。シールされていな い面や部分的にシールされた面に白い斑点が残ったり、ひどい場合は作品全体が曇って霧に覆われたような状態に なって回復できなくなります。当社では、マットを塗る前にクリアのグロス製品でシールすることを勧めています。 水彩の場合、いつもこれが可能とは限らないかもしれませんので、その場合は当社のサテン(半つや)ワニスが選 択肢となるでしょう。
何をしようと画面は変化します。ですから、出来上がった作品に直接実施する前に、必ずテストをすることです。 情報をありがとうございます。時間がかかるかもしれませんが、多くの水彩画団体がこうした作品に門戸を開くと 信じています。なぜなら、アクリルや他の水性画材に門戸を開いてきたからです。またサラさんが、歴史的な経過 について情報提供してくれました。太陽の元では新しいものなどない(英語のことわざ)のでしょう。

アーティストからのコメント3
私はゴールデンのスプレー缶入りワニス/紫外線カット(国内未発売)を使ってうまくいっている。私の作品がミク ストメディア(混合技法)と言われてもかまわない。ゴールデンへの質問があるが、スプレー器具を使える、大容 量のワニスは売っているのだろうか。スプレー缶では二つの絵しかできなくて、費用がかかりすぎる。

マークさんの返事
質問をありがとう。当社のMSAワニス(紫外線カット)はスプレー缶の代わりとしてほぼ同様に使えます。最大の 違いは、筆塗りやスプレーをする際は希釈しなければならないことです。
こちらにMSAワニスと希釈方法に関する情報があります。

ゴールデンワニスの塗付ガイドライン(日本語)

もし直接お話になりたいなら、技術部のマイク・タウンゼンドにお電話くだされば、スプレーのための適切な希釈 方法の詳細を説明いたします。彼はスプレーの大家です。

アーティストからのコメント4
ハイ、マーク。ロイ・ラーナー・スタジオからです。あなたの提案にしたがって、蛍光絵具のための紫外線カット ワニスを見つけました。
試験用に、蛍光レッドの絵具をそのまま、蛍光レッドとハイソリッドゲルと不均一に混ぜたもの、ライトモデリン グペーストと不均一に混ぜたもの、以上の3種を塗った試験用のパネルを作りました。これはアトリエでの様々な 制作の再現をカバーするためのものです。
それぞれの半分に、20%の水で希釈したワニスをスポンジ刷毛で塗り、残りの部分には何も塗っていません。これ を太陽光線の元に出して(豪雨でないときだけ)、その効果とこの塗付方法が十分かどうかを見ようと思います。
結果が出るまで、どのくらいかかるだろう?また、屋外で絵具が硬化してからワニスを塗ったが、芯まで完全に乾 いていたわけではなかった。これはワニスの効果に影響するだろうか、またワニスは硬化しつつある絵具からの水 分の蒸発を妨げたりするだろうか。アクリルには、水性のワニスか、溶剤系のMSAワニスのどちらがよいだろうか。
それとは別に、枠張りしていない大量の絵画を我々のアトリエに持ち込みました。多くは重質の生キャンバスに描 かれています。古いものは70年代のものもあり、キャンバスは黒いカビに覆われています。どう処置したら一番よ いのかよく分かりません。以前にBHT(防カビ剤)の処理がよかったという話もありますが、カビを取るには効果は なくて、カビの発生を抑えるものだと思います。古い作品は、ゴールデンの様々な絵具や、他の絵具が使われてい て、クリーニングでどんな障害が出るかが分からないので、何を使ってクリーニングしたらよいか困っています。

マークさんの返事
こんにちは。なかなかとよい材料試験のようですね。完全に乾燥してからワニスを塗るほうがよいという考えは正 しいです。しかし、試験する上ではそれほど影響はないでしょう。
MSAワニスは水性のワニスより緻密な塗膜を作りますので、保護効果も優れています。ロイ氏の作品にスポンジ刷毛 でワニスを作品に塗るのは考えられないですね。たとえ蛍光色の部分だけであっても、スプレーで4回か5回塗るほう がよいと思います。
黒いカビについては、専門家の助けがいります。技術サポートに電話をください。最善を尽くします。

アーティストからのコメント5
こんにちは。
私は、クリーム色のフランクフルト紙(ドイツ製の紙)に水彩のウォッシュを使い、ついで変性アルコールに混ぜた 琥珀色のシェラックを使う。乾燥したらそれをドローイングの画面に使う。
私の先生によると、シェラック/アルコール混合液は紙を鉛筆での制作に使えるようにするということだ。これは 人物デッサンのクラスことだ。MSAワニスはシェラックと比較してどうだろうか?
ところでゴールデンのグラファイト(国内未発売の色)はとても面白い。

マークさんの返事
当社のMSAワニスがどうなのかはよく分かりませんが、試してみてご報告しましょう。難しい質問は大好きです。気持ち が素晴らしく新鮮でいられます。