ゴールデンアクリリックス
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この日記はゴールデン社
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更新履歴
2006年の日記
2006.11.27
冬支度
2006.3.28
試作品
2006.2.26
品質の対価
2006.1.31
絵具セット
2006.1.17
私と絵具
2006.7.24
アクリル古色
もし私たちのアクリル絵具やみなさんのアクリル絵画の未来、今から100年後、 500年後、1000年後を見ることが出来たら、どのように見えるでしょう?少々こ じつけになるかもしれませんが、一緒に未来に跳躍して、過去数十年間に絵 画に起きたことから、数百年後の姿を考えてみるのも素晴らしいことではない でしょうか。このためには、これら年月を経た絵画についての全く新しいボキャ ブラリーを開発しなければならないでしょう。なぜなら絵画は時と共に崇拝の対 象となっていくからです。例えば、油彩画では黄変やヒビ割れを「ゴールドトーン」 とか「クラカルー」、あるいは画面に吹き出た不定形な形を「オーガニック」と呼 んで敬っています。だからアクリル絵画の変化についても、同じように気持ちを 高揚させるような表現が必要でしょう。芸術において私たちがありがたがってい る老化の兆候は、自分の顔に現れるシワや筋を敬うようなものだと、私は自信 を持っていえます。経年変化を評価する言葉の定義として、まずは「古色(patina)」 がよいでしょう。どのような材料でも年とともにその古色を帯びてきます。アクリル も例外ではありません。

では最初の跳躍です(ここはカメラのレンズにワセリンを塗るところ…つまりソフ トフォーカスで)。熱可塑性の無着色アクリルによくある変化は、マニラフォルダー (クラフト紙)のように表面が黄みがかってくることです。これは耐光性のよい顔 料で強く着色された場合には、そのパンチのある色の強さを保つので問題には なりません。アクリル絵画は千年たったとしても、変化はあまりわからないでしょ う。こうしたアクリル絵具は黄変がとても少ないのですが、メディウム分がほとん どで着色顔料がほとんどないような部分は暖色、つまりゴールドグレーズに徐々 に変化しているでしょう。

ワニスをかけた絵画は顕著な清澄さや鮮やかさを保っているでしょう。それ は修復家がワニスを除去する際に表面のダメージも取り除くだけでなく、同 時に水溶成分をも取り除くからで、もしこの水溶成分が残っていると大きな 黄変の原因になるからです。最初の光沢が高く、ワニスをかけていなかった 作品は、光沢が大きく低下し象牙のような古色になっています。つや消しの 作品はスリ傷が付きやすいので、取り扱い時の痕跡が画面に残ります。

ほとんどがゲルで創りあげた厚く盛り上げたグレーズでは、いくらか曇りが生 じて下地の色が見えるのを妨げるでしょう(もちろん、厚みによります)。ガラス 越しというよりは、ヴェール(布地)越しに見たようになるでしょう。盛り上げ効 果がより強く感じられるようになりますが、それは厚塗り部分が薄塗り部よりも 強調され差異が目立つからです。深い凹みのある盛り上げ部分は、数百年に およぶホコリのクリーニングのために磨り減って鋭さがなくなります。極端な盛 り上げや立ち上がり部分は、アクリルは古いガラスと同じようにゆっくりと流れ る性質があるために、垂れてきます。

アクリルは収縮を続ける性質があるので、張っていないアクリル画は巻き込 んできます。幸い、直射日光に当たらなければアクリルはかなり柔軟性を保 つので、著しいヒビ割れの問題は避けることが出来ます。しかし、低温環境で 粗末に扱ったり移動したために、重要な作品に同心状のヒビや、もっと典型 的なのは張り枠の端に平行に走るヒビが出てしまった例には枚挙にいとまが ありません。恐らく最も目立つ問題は、梱包材料や他の作品に接したことに よるフェロタイプ、つまり押し痕でしょう。

幸い、これら損傷を受けた作品の多くは、作者の美的意図の通りに戻すべく 修復リストに載せられています。しかしさらに多くの絵画は格段の処置を施さ れることなく、この素晴らしい古色、つまりは作品が古くなっていることの兆候 がそのままに放置されているのです。 しかし、ニューヨークのMoMA(Mausoleum of Modern Art:近代美術霊廟)と揶 揄されるMoMA(Museum of Modern Art:近代美術館)がやっと、アクリル絵画 コレクションに対し合成樹脂絵具という表示を止めアクリルと表示するようにな りました。
オリジナルページに書き込まれた
アーティストからのコメント
私自身はワニスはしていないが、ゴールデンの相談室からはワニスの練習を することを勧められた。ただし既に出来た作品ではリスクが大きいので、捨て てよいようなサンプルでするように勧められた。タバコを吸う人がいるとアクリ ル画も(ヤニの汚れで)変色するのではないか。

マークさんの返事
ユーザーの方が当社の絵具を使うより前に、寿命について多くの事項を提示 するのが私たちの目指すところです。当社が提供する製品は耐久性(相対的 な意味)が最もよいものであるよう、懸命に努めています。加えて当社は何年 にもわたり非常に多くの情報を提供し、アーティストが作品に対し、そしてその 将来に対し、情報に基づいたよりよい選択ができるようにしてきました。 私はあなたのワニスをしていない作品についてはあまり心配していません。確 かに大きな保護作用になりますが、アクリルという材料自体が非常に強固なも のです。ただワニスをかけないと、将来の修復がより困難となります。当社の技 術相談がまず練習を勧めたことをうれしく思います。私は、多くのアーティストが ワニスの塗付についてよく理解しないままに自分の作品に試みて取り返しのつ かないダメージを与えてしまった例を数多くみてきました。 私たちは嵐にも耐えるような絵具の研究も続けています。完全に水に使って嵐 にさらされた絵を、乾燥させ汚れを取り除いたら非常によい状態に戻ったという 話はいくつか聞いています。煙はまた別の話です。アクリル画面の吸着性は煙 を取り込む可能性があります。大きな損傷になりかねません。引き続き研究を 続けています。
アーティストからのコメント
1973年頃、火事にあい作品は煙で相当なダメージを受けたが、アクリル画 (当時はゴールデンはなかった)は万能クリーナを吹き付けスポンジで洗った らきれいになった。 それ以来キャリアを積み、今ではほとんどゴールデンを使って描いている。売 れずにギャラリーから返却された絵を見ると、また描きなおしたくなるがワニス を塗っているとまた剥がすのが面倒なので、ワニスは塗っていない。

マークさんの返事
素晴らしいコメントをありがとう!いつも話しているように、ワニスを含む様々な テクニックはまず美的観点からの選択です。 私たちが目指すのは、最良の情報を取り繕うことなく提供することです。私は当 社の製品の耐久性や耐光性は最大限に配合されていると自信を持っています。 すべてのアクリルのテクノロジーと、それがメーカーやアーティストに提供してくれ る可能性に今でも興奮するのです。しかしまた、時間がすべてのものに対し与え る影響について、私たちは現実的にならなければとも思います。 私が覗いている水晶玉がどのくらい有効なのか、修復分野の方からコメントを いただければと思います。
Mark Gottsegen教授のコメント
古色について書いたことを賞賛したい。コメント内容は考えうる他の誰のもの よりも正直なものだと思う。ブラボー! 「嵐にも耐える絵具」については、むしろ「反地球温暖化絵具」に集中するのは どうか。嵐に対しできることはほとんどないが、温暖化に対しては多くが可能だ ろう。 水晶玉について ヘンリー・ウィルヘルムは印刷デジタルメディアの寿命予測に水晶玉を長年使 っている。「もしこのようなインクをこのような紙に、この、またはあのプリンター で印刷すると、プリントは137年持ちます。」メーカーの販促部門はこれに飛びつ いて、問題を抱えることになった。 天気予報が地域の午後の予報も満足にできないなら、ヘンリーはどうして137年 後のことが分かると思うのだろうか? しかし気にすることはない。修復家に直接コメントを届けるほうがよいだろう。彼ら は直接ブログにコメントをすることはないだろう(もしあったら驚くが)。多分、何人 かは直接コメントを返してくれるだろうから、公開できるところだけここに書けばよ いと思う。

マークさんの返事
新しい話題のひらめきをありがとう。「反地球温暖化絵具」は素晴らしいし、私たち は実際に努力しています(少なくとも小さな手段で)し、責任があります。矛盾だらけ ですが時間がほとんどありません。 年月の経ったアクリルの古色について、私たちグループ内では幅広い議論をしてい ます。少なくともいくらかの人々が時間による変化について考えてくれるようになれば と思います。またアーティストと、何が許容できる変化で、何ができないかを話し合う ことも可能になりました。 私は、非常に勇気と創造性と冒険心のある修復家がいて、霧の中に飛び込むことを 楽しく思い、私たちと一緒に考えることを望んでいるに違いないと思っています。 注)ヘンリー・ウィルヘルム:ウィルヘルム・イメージングリサーチの創設者で写真や プリンター印刷の耐光性表示の元になるデータをだしている。日本の100年プリント やインクジェットの耐光性もこれを根拠にしているが、絵具や塗料とは異なる基準 のため、信頼性に疑問も持たれている。 詳しくは当社ホームページのゴールデン資料参照。
http://www.turner.co.jp/japanese/art/golden/technicaldata/justpaint/jp14/jp14article2.htm
アーティストからのコメント
学芸員にとってホコリは古色にはいらないのではないか。テイトモダンのジャ クソン・ポロックの絵は汚れていて洗浄が必要だ。他のポロック作品はもっと 「芸術」っぽく、ヴェニスのグッゲンハイム美術館にあったものにはすっかり魅 惑されてしまった。

マークさんの返事
素晴らしいコメントです。私たちは未だにホコリと絵画の問題を理解しようとし ています。アクリルの重大な問題の一つはその塗膜の柔らかさと、ホコリのツ ブを定着させてしまう可能性です。アクリルが高い塵埃吸着性を持つという説 に着目している研究者もいます。これは提案されているものの、証明されては いません。ホコリの問題は、これがいかに重要な問題かを決定する所見が提 案されるべきです。 アクリル画面からホコリを除去するのが非常に難しいのは事実です。乾式テ クニックだけでは、食い込んだ塵を取り除くには不十分でしょう。実際、湿式処 理でも十分ではないでしょう。作品が制作の条件から壊れやすいものである場 合(ミクストメディア、極端な希釈など)、ホコリは一つの古色となり得るでしょう。
アーティストからのコメント
「アクリルの重大な問題の一つはその塗膜の柔らかさと、ホコリのツブを定 着させてしまう可能性です。」 これが、アクリルにワニスをかける理由なのか?私のフォーラムのメンバー には、アクリル画はそのままで素晴らしいからワニスには絶対に反対で、除去 可能なワニスは作品を周囲環境から守る保護膜としての価値があるという議 論を拒否する人もいる。

マークさんの返事
ワニスをかけるかどうかという議論は、当社のコメントの有無に関わらず続くで しょう。私たちが明らかに出来るのは、ワニスに何が出来るかということだけで す。選択はあくまでアーティスト次第です。 何度も言っているように、まずワニスの選択は美的観点からの選択であるべき です。「ワニスをかけたとき、自分が成し遂げようとしている視覚効果は改善さ れるか、あるいは少なくとも阻害することはないか?」 もし答えがノー、つまりワニスが意図した作品の視覚効果を阻害するなら、次の ような潜在的な問題に直面します。多孔質なアクリル塗膜の画面にシミや指紋、 ホコリ、その他の汚染物質が入り込んでしまったら、作品を完全に洗浄すること はとても困難なことになります。作品に対し、そうした変化による影響の方がワニ スによる視覚上の影響よりも小さいという自信があるなら(そして作品を購入する 顧客にその決定を知らせているなら)、選択は簡単です。ワニスを止めなさい! ワニスがけで視覚効果が影響を受けない作品でも、その作家は同じ選択に直面 すると思います。作品の洗浄が完全にはできないまま変化に任せることを(作家 が)受け入れることができるとして、将来その作品を所有するかも知れない人が よりオリジナルな(変化しない)状態で絵を保管したがっているとしたら、作家が自 分の意向とその将来の所有者の意向をどれくらい考えているかが問題になります。 私からすると、これは美的問題というよりは、当初の作品意図と倫理観の問題です。
Mark Gottsegen教授のコメント
しかし、もし美的選択がツヤ消し画面なら、マットワニスを使うのはどうなのか?

マークさんの返事
ワニスは、画面をツヤ消しやサテン調、半ツヤ、あるいはグロス(全ツヤ)に仕 上げるように出来ています。しかし作品によっては、どのようなワニスであっても 画面の質感を変えてしまう性質のものがあります。加えて、一つの画面の中で ツヤ有りとツヤ消しの面の違いを出しているものもあります。確かに、その作品 には異なるワニスを使い分けることも可能ですが、そうした差異にワニスを調整 するのは非常に難しいことです。 私たちがいつも推奨するのは、まず最初にツヤ有を塗って画面をシールし、続い てマットあるいはサテンのワニスを塗ることです。多くのアーティストがワニスを嫌 がるのは第一には直感に反するからのようです。このテクニックは、グロスであれ マットであれ、あるいはその中間の何であれ、最終の仕上がりの清澄さを劇的に 改善します。しかし同時に塗り重ねなければならない層の数が増えます。そして ワニスは画面の美観を変えてしまう可能性も高いのです。 みなさんは本当にワニスがけを練習する必要があります!これはほとんどの作家 が持つ技術の道具箱に入っていない非常に大切な項目です。