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この日記はゴールデン社
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更新履歴
2006年の日記
2006.11.27
冬支度
2006.3.28
試作品
2006.2.26
品質の対価
2006.1.31
絵具セット
2006.1.17
私と絵具
2006.7.14
ハウスペイントは使えるでしょうか?
ハウスペイント(建築用塗料)は使えるでしょうか?一体何度聞かれたことか分からないくらい、この質問をアーティストから受けました。もし私の許可をお望みなら、どうぞハウスペイントをお使いください。アーティストが作品を創造する上で何を使おうと、私たちの承認を得る必要はないのです。創造の機会、創造のための材料は無限です。それは喜びに満ちたことです。アーティストたちが試そうとしている材料はとてつもない視覚的比喩表現を見せてくれます。魚のウロコ、ピーナッツバター、氷、コーヒーに紅茶、ケーキ生地、コールタール、木工用ボンド、木の葉、あらゆる種類の植物、コウモリの糞、昆虫、段ボール、塩ビパイプ、ゴミ袋(紙やポリ)、そして床用からエポキシ接着剤などまで含むあらゆる工業用塗料、ゼラチンの塗付材(サイズ)、多様な木々、木製品、ベニヤ板など。布切れや削りくず、あらゆる種類の毛。そして手工芸品店に並ぶあらゆる素材。これらはまるで発想の磁石のように多くの人を引き付けます。

しかし、続いて疑問が起きます。これは保存できるのだろうか?つまり耐久性があるのか?中にはそのような疑問を全く持たない人もいます。しかしそれを気にする人にとっては、これは私たちが待望する疑問なのです。これは作品の寿命を本当に気にかける人がいることを示しています。それは商業的な理由かも知れず、あるいは彼ら自身の遺産意識かも知れません。アーティストが気にすべき理由はたくさんあると思いますが、同時に全く違った理由があることも考えられます。

最近のテート・モダンでのシンポジウム「近代絵具を紐解く(Modern Paints Uncovered)」において、すべての材料は古色(サビ色)を発することを再認識しました。時間の経過と共に、あるものは劇的に変化しますが、それほどではないものもあります…しかしあらゆる材料はいずれにしろ変化するのです。ブロンズは信じられないほどの濃い茶色に変化したり、あるいは屋外では様々な緑色や白の緑青を発生します。銀は色調が深まっていき、あるいは黒色化する傾向があります。木材は時と共に色調が暗くなります。油絵具は琥珀色に変化 し、またクラカルー(ヒビ割れ)が発生します。

これから分かることは、時間がたつにつれて材料はどのように変化するのか、というのがよりよい質問だということです。第一に永久にその状態を保つものは何もないということですが、私たちは時間と共に作品をどのように変化させるかをある程度決めることができます。どのような変化が予想されるか、そしてそのような作品の変化を許容あるいは緩和するためにはどのように扱うべきかを、アーティストが実際に次世代に対して説明するのは素晴らしいことだと思います。

ですから、最初の質問に戻りますと、「ハウスペイントは使えますか?」−はい、使えます。第二の質問「それは耐久性がありますか?」

それはハウスペイントです。この製品が必要とされるいくつかの品質を達成するために非常に明確に配合されています。製品はローラー塗装が非常にスムーズにできなければなりません。また塗り重ね部分に筋がでると壁面の視覚的な均一性を損なうので、筋が出ないようにしなければなりません。 ローラーで塗装した場合に、塗料がはねないようにしなければなりません。 塗り重ね回数が多くならないように素晴らしい隠ぺい性(被覆性)を必要とします。簡単な調色ができるように白とそれに混ぜる他の色を持っているのが普通です。特別なデザイナーブランドの塗料を購入するのでない限り、ハウスペイントの色は高々12色程度です。耐摩耗性がなければなりません。つまり、かなり粗いクリーナーで洗うことができて、なおかつ磨耗しないことを意味します。このような特定の品質条件すべてをうまく配合するのはかなり難しいことです。このレベルの一貫した性能を達成するには多くの費用がかかります。

しかし、これらの製品は数百年どころか数十年の耐久性さえも持たせるという意図では作られていません。たぶん配合技術者はまったくそのようなことは考えていないだろう、私は保証できるくらいです。これらの製品が柔軟な支持体に使われるとか、世界中に配送されるとか、または、何10年間ものその表面状態を維持させるというような使用法のために配合されたとは、どう転んでも考えられません。したがって、次の質問に移らせてください…こうしたハウスペイントは時と共にどのような変化をするでしょうか。ここに、「ハウスペイント」の時間による変化についての私の提案があります。高品質のハウスペイントであっても、最も重要な問題はやがてヒビが発生するということです。このヒビは、作品が湿度と温度の変化にさらされたり、そうした条件下で動かされたりするほどに、最も明白になるでしょう。別種の絵具が上に塗られていると、これらのヒビは上面に突き抜けるように伝播し始めるでしょう。これらのヒビの中にはキャンバスからの絵具層の脱落を招くものがあるでしょう。この表面の硬化のために、絵画を張り枠から取りはずして巻くことが簡単にはできなくなり、またはゆるんだキャンバスを張りなおすためのタックス(釘)を使うことも容易ではなくなるでしょう。時間の経過につれて起こるかもしれない他の問題は使用した塗料によるでしょうが、色調が相当に黄色あるいは中には茶色に変色することがあり得ます。他の問題は、明らかにブランドと色に依存しますが、表面にエフロレッセンスを起こすかもしれません(すなわち、表面における白い粉末状の蓄積物の発生)。また、低品質の着色剤を含むものに関しては、ほとんどの色で退色が起こるでしょう。

では、ハウスペイントによって構成された絵を見てください、そして画面にこの新しい変化を想像してください。あなたが、変化に満足であり、そのような変質を正当なものと出来るなら…ハウスペイントを使ってください…あなたは私の許可を必要としないのです。
オリジナルページに書き込まれた
アーティストからのコメント1
画材の状況についてよい指摘だ。アーティストの中には長期的な芸術よりも、 むしろその瞬間に傑出したものをみせることに関心を持ったり、別の方向に 行ってしまったり、作品に対するアプローチにダイナミックな面を許容する人 もいるだろう。あるいは私のように、50年の内に絵に対し意図していなかった どんな変化をするのかに興味を持つ者もいる(絵具を混ぜることの面白さは、 描いた画面のあちらこちらが退色して全く違ったイメージが現れること)。

アーティストからのコメント2
20世紀のアートは商業的な塗料を使った作例に惑わされている。その結果は 多くの場合は壊滅的で色彩を保てない。ひまわり油を好んで使ったデクーニン グがすぐに思い浮かぶが、全く乾燥せず画面は重力で徐々に垂れ下がっている。 最近、テイトモダンでロスコーの再展示を見たが、作品の初期の状態を覚えて いた友人はいかにインパクトが変化したかを語った。作品は暗い部屋に展示さ れているが、劣化を食い止めるためだろう。 ロスコーは、退色しやすいナフソールレッドを使った市販の調合済み赤色塗料を 好んで使ったと思う。さらに悪いことにロスコーは塗料を希釈して弱い顔料をさ らに弱めてしまった。 私は単なる心配性な画家で、こうした現象を記録するのは美術史家だが、作品の 現状は何かが起こったことを示している。 ロスコーの退色を心に強く留め、常に製品がどう作用するかに気をつけている。 アトリエにはとても大きなゴールデン製品の試験参照フォルダを置いている。失 敗すれば絶対に忘れない。開発にかかった時間は材料に払う価格の価値がある。

マークさんの返事
90年代初頭、「Flakey Art(薄片状のアート)」という記事がマークロスコーの退色を 扱っていました。そこにはロスコーが近代の材料を使ったとかかれていました。そ してアクリル絵具も近代の材料と続きました。かくして、アクリル絵画は退色するの だと。不幸なことにこのようなことが真実だとして流布しています。 当社が絵具に配合するアクリル樹脂や他の原料は、工業用として作られたものであ るのは事実です。近代においてアーティストのためだけに開発された原材料はほと んどありません。私たちのアーティストに対する責任とは、全力を傾けて、当初の色・ 清澄性・接着性・表面性を維持する機能が最も高い成分を使うことです。それ以外 にはこれらの材料の研究を続ける責任があります。そして最終的な責任はアーティ ストに対し、我々が知りえたことを、良し悪しに関係なく確実に伝えることです。

情報がお役に立てて光栄です。私たちにとってそれが大切なことです。