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この日記はゴールデン社
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更新履歴
2006年の日記
2006.11.27
冬支度
2006.3.28
試作品
2006.2.26
品質の対価
2006.1.31
絵具セット
2006.1.17
私と絵具
2006.5.19
テイトでの近代画材シンポジウム
テイトでの3日間のシンポジウム「近代絵具を紐解く(Modern Paints Uncovered)」の最終日がちょう ど終了したところです。修復科学者、現役修復家、そして学芸員、教育者、画材メーカーなどの関連分野の人々の共同研究は何と素晴らしいことでしょう。驚くべきイベントを企画してくれたテイトのトム・ラーナ ーや他のすべての人たちに感謝します。

この技術シンポジウムは4年前から計画されましたが、それはナショナル ギャラリー、テイト、ゲッティー、その他世界中の仲間が、近代画材の 性質に関する基本的な問題に答えるべく、相互協力に合意したときから です。このような注目すべきイベントでは、答え以上に多くの疑問が挙 がってきました。しかし非常に意義ある研究は、とても有望な調査分野 と、アーティストへの実践的なアドバイスの始まりを示していました。

シンポジウムにおいて、当社の技術部長ジム・ヘイズはバッファロー州 立大学のグレッグ・スミス博士と共同発表を行いました。それはアクリ ル絵具の配合において、様々な性質のバランスをどのように取るかとい う詳細な報告です。私たちはこのような会議に招待されたことに謝意を 表します。

------------------------------------------- *テイト(ロンドン)、ナショナルギャラリー(ワシントン)、ゲッテ ィー(ロサンジェルス)は、いずれも世界有数の美術館で、充実した研 究機関を有する
オリジナルページに書き込まれた
アーティストからのコメント
2006.5.21 下記のホームページに手作りの絵具に関する有益な情報がある(英文)。 http://www.paintmaking.com

テイトでの発表論文が公開されたなら知らせて欲しい。

マークさんから
ご紹介のサイトはとても興味深く有益です。当社も不定期冊子「Just Paint 7号(未訳)」で絵具作りに関する技術情報を掲載していますので、ご参照 ください。

アーティストが自分で絵具を作ってみることは、必要性の有無にかかわらず、 自分のニーズに合うものを探す上で大切な課題だと思います。少なくともど の美術学校でもこれをカリキュラムに入れなおすべきです。よくご存知のよ うに、独自の材料を作ってみることで代えがたい技術レベルを獲得できるの です。

そのような教育内容のリンクを作ろうとしていますが、なかなかできておらず、 申し訳ないと思います。

テイト・シンポジウムでの発表論文の公開については、出版が2007年ごろにな るようですが、どの論文が出されるかについてはテイトの判断になります。ま た論文を提出した各機関が普通は出版権を持っているので、彼らの判断次第で もあります。テイトはホームページで多くの研究成果を公開していることで高 い評価を受けています。しかし各執筆者も同様に版権を持っていますので、そ れはまた別の問題になります。当社のホームページにもテイトが公開してくれ ている当社が関係した論文(英文)へのリンクがあります。
http://www.tate.org.uk/research/tateresearch/tatepapers/04autumn/jablonski.htm

こうした最近の学会などで可能なものの要約をみなさまのために作りたいと思 っています。有益な情報のホームページをご紹介いただきありがとうございました。
アーティストからの返事
Just Paintの記事は読んでいる。絵具を自分で作ることは、様々な面でアー ティストを解放し、それまで知らなかった使用材料の基本的な知識の可能性 を広げる。知識はすべてにおける力だ。自分で絵具を作っているアーティスト に対してゴールデンはサポートが出来るだろう。 今回のように様々な関係者が協力や連携を始めたことは素晴らしい。多くの メーカーや研究機関が材料情報を秘密にしていたのはそれほど昔のことでは ない。新世界のアクリルメーカーやASTM(アメリカ試験・材料協会)、Mark Gottsegen教授などがそのような障壁を崩す先方となっている。

Mark D. Gottsegen教授から
まず応援をありがとう。マークゴールデン氏や私が、メーカーや学芸員を含ん だ美術界の中でのコミュニケーションをよくしようと努力していることを本当に 評価してくれる人がいる。

次に、Just Paintの絵具を作る記事を読んで感じたのは、アクリル絵具を作る ことがいかに微妙で複雑で難しい工程かということだ…自分のエッグテンペラ 絵具を作るのとは違う。

学校で若い学生に絵具作りやどのように作られるかを教えることには賛成だ。 もちろん安全性を第一に考える必要がある。粉末顔料や薬剤を扱う場合は、 何をするのか、そして体を保護する手段を知っている必要がある。時には単 に手袋やマスクをするだけでは済まないこともある。生徒はみなそれを認識し なければならないし、教える方も正しい知識を持っていなければならない。

続いてだが、エッグテンペラやフレスコなどでは自分で絵具を作らなければな らない。エッグテンペラのような絵具では自分なりに工夫するのは楽しい。Just Paintの記事が暗示しているが、油絵具のような単純な絵具を作ることは、要領 さえつかめばそれほど難しくも複雑でもない。しかしアクリル絵具は別だ。

アクリル絵具は複雑で、時には間違いのゆとりがない。少なくとも作ってみれば 間違いにすぐ気が付く。それは作りそこないの油絵具の場合よりもずっと早く分かる。

しかしもっと大きな疑問は、美術学校での経験以上に、なぜ自分で絵具を作るの かということだ。「絵描きになりたいのか、絵具メーカーになりたいのか」ということだ。 確かに、時には何か新しいことを経験し遊んでみることは素晴らしいことだが、自分 の絵具を作り貯めしようとすれば時間はすぐに過ぎ去ってしまう。その時間はきっと 自分の作品を作るためにもっと有益に使えたろうに。

そのあたりをちょっと考えてみて欲しい。
アーティストからの教授に対する反論
「・・・美術学校での経験以上に、なぜ自分で絵具を作るのか」

様々な見方がある。

まず、エッグテンペラ画家は自分で作らなければならないが、それを瞑想の ための日課としている。自作絵具では色数は基本色に限られるが、それに より実践の経験が増える。

私自身は市販絵具と自作の混合だ。どのメーカーの製品でもなく、選択肢は ほとんどないが、ちょっとした努力の対価は私自身の創造ニーズに合う絵具 となる。どの作品でも30%程度は自作の絵具だ。

グレッグ・ヘンゼルは絵を描いている場所から集めた天然の土の絵具で描い ている。このような作品と材料の詩的なつながりはアトリエで絵具やパステルを 作ることからしか生まれない。

市販絵具の多くは様々な理由から、たくさんの添加剤や増量材を含んでいる。 自作絵具なら添加剤フリーの純粋なものができる。

顔料によっては細かくしないほうがきれいな場合もある。しかしメーカーは絵具 を均一なプラスチック的品質にするために、過剰に顔料を粉砕しているという 多くの証拠がある。アトリエでは色の美しさが最適になるような細かさにつぶす ことができる。

中には単に費用を節約するために自作する人もいる。

数百年前には絵具はすべて必要に応じてアトリエで作っていたが、それが創造 性の邪魔になったとは思えないし、逆に絵具化学の深い知識を得ていたことが、 どちらかというと貧相な材料であのような耐久性のある絵画を作り出していた理 由の一つとも思える。

絵具自作が創造性を減ずるとしたら、私がまずその一人になるだろうが、例えば 近代ではジャスパー・ジョーンズやアンドリュー・ワイエス、古くはダ・ヴィンチなど、 部分的にでも絵具を自作する習慣のある画家の作品を見ると、創造的経験と喜 びを感じる。

大半の画家は画材店でチューブ入りの絵具を買う以外に興味はないだろうし、彼 らにはグッドラックといおう。しかしそれ以外の我々にとっては、絵具自作の楽しみ にふける理由がなくることはない。

Mark D. Gottsegen教授から、アーティストの反論に対する反論
絵具を作る楽しみを妨害するつもりは全くないが、私はアクリル絵具の ことを話していたことを指摘せざるを得ない。それ以外のものについて は、何をしようとかまわない。

1.エッグテンペラはもちろん、自作しなければならない。売っていないし、 作るのも簡単だ。防腐剤の入ったエッグオイル・テンペラは売っているが、 そんなものは必要ない。

2.土を掘り出して絵具に使う場合、少なくとも水洗などもせずに使うと、 有機物が画面に残って将来的に構造的な問題が起こる可能性がある。

3.最良の市販品は必要成分しか含んでいない。販売面と技術的な理由で必要 なものだ。添加剤がすべて悪いわけではない。

アクリル絵具の場合、基本的な配合でも恐らく11種類ぐらいの成分を含み、 それぞれの成分はさらに5-10くらいの構成要素からなるだろう。メーカーが 何を作るかによるが、ほとんどの成分は技術的な理由で必要なものだ。 原料メーカーで分散された顔料を一般的なアクリルメディウム(そして多分、 増粘剤と消泡剤)に混ぜるだけでも絵具はできる。しかしそれがいいのかど うか?それがよい絵具なのかどうか、どうやって知ることが出来るのか、あ るいは20年後、50年後になればわかるのか?

自分が求める何か特別なアクリル絵具を生み出したとして、それを市販の 絵具と混ぜたとしよう。それで何か(問題が)起こらないのだろうか?どう やって知るというのか?

4.節約。節約したいアーティストはたくさん知っているし、だから彼らは値 段を見て材料を買っている。しかし彼らはレストランでの食事や素敵な車 に使うお金には頓着しない。20年前、ニューヨークで有名だったあるアー ティストを知っているが、一番安いアクリル絵具を使いながら二百万円以上 で作品を売り、衣服や海外旅行、あるいは別荘には惜しみなくお金をつぎ込 んでいた。私はそのアーティストが誰と学んでいたか知っているから、その アーティストが品質のよい絵具と安物の違いが分かっているということも知 っている。あの作品の将来は最悪だ。

自作絵具で節約をしようという話なら、話は終わりだ。自作絵具は長い目で 見れば、結局は節約より高くつくにもかかわらず、だれもお金について話し たがらない。

5.何世紀も前・・・、最も基本的な絵具は今でも同じだが、それらを除けば絵具 はどれも今のものよりずっと単純だった。作家は十分な評価を受けていたし、 工房で弟子たちが絵具作りをしたので、創造的な活動に専念できたから彼らの 作品は残ってきた。

おっしゃっている近代の作家たちが自分の絵具を作った理由はそれを買うことが できないからだ。ジョーンズはエンコースティック絵具を作っていたジョセフ・ トーチを知っていたと思う。トーチのもとで働いていたリチャード・フラメスは エンコースティック絵具の製造販売を引き継いでいる。ワイエスは自分のエッグ テンペラを作らざるを得なかった…今でも作っているのかどうか?

絵具の科学と化学は19世紀後半まではよく理解されていなかったし、今でも新しい ものが出てきている。その昔、絵具を作っていたアーティストはせいぜい錬金術師 というところで、他の人々の情報や原料供給に頼っていた。原料を売る業者はそれ が売りたいから色々と企みもする、つまり材料を正当化するために様々な話を作り 上げたものだ。いい例が、megilp(つづりは色々とあるようだ)で、これは後に ルーブル美術館の修復家がその製法を解明しマロジェのメディウムとされたが、 当初から悲惨な材料だった。

6.セラピーやインスピレーション、瞑想などの面での絵具作りの効用については、 議論する気はない。 個人的には、セラピーというなら料理やガーデニング、芝刈り、絵画用パネル制作な どの仕事をしたい。もしエンコースティックやエッグテンペラが必要になった時には 自作するだろう。油絵具さえも作るが、それは年に一度、授業で生徒に見せるためだ。 近代絵具の自作については、やはり画家がすべきではないと思う。

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・ジョーンズ:エンコースティック絵具で作品を作ったジャスパー・ジョーンズのこと
・ワイエス:エッグテンペラ作家として有名なアンドリュー・ワイエスのこと
・マロジェのメディウム:油絵の創成期に使われたといわれる伝説的な謎のメディウムをフランス人マロジェが解明したといわれ、彼の書物に配合が記されている。
描きやすく乾燥が速く耐久性のある絵に仕上がるという意見がある一方で、年月と共に黄変しヒビ割れが発生するので使うべきでないという意見もある。
マーク・ゴールデン氏から
マーク、素晴らしいコメントを書いてくれてありがとう。 Mark Golden