ゴールデンアクリリックス
ゴールデンフルイド

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この日記はゴールデン社
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更新履歴
2006年の日記
2006.11.27
冬支度
2006.3.28
試作品
2006.2.26
品質の対価
2006.1.31
絵具セット
2006.1.17
私と絵具
2006.2.15 9:24 am
アクリル絵具の品質とは何か - I
この問題に関して、以前はとても狭い見方をしていました。答えは単にほとんど差異のない僅かな品質の問題でした。基本的にはどれだけ顔料分が多いか、そしてその顔料とバインダーは耐光性があるかということです。あるいは粘度や一定した色管理、絵具の色による触感の差などです。

顔料分
品質は単純で...顔料が多ければ...品質はよいということです。これは今でも学生用グレードの画材と専門家用のグレードを分けるものとして変わりません。しかし顔料を入れすぎるということもあり得ます。これは重大な問題を起こす可能性があります。顔料の多すぎる絵具はひび割れ、汚染物質やシミの吸着、すり傷などが起こりやすいのです。固形分が多すぎる製品は塗膜を保護するバインダーの力を弱めます。そのような問題のある絵具−ハイロードアクリリックス−を当社が作ると誰が考えたでしょう。この製品は友人でありアーティストであるスーザン・ロスとの会話から生まれました。彼女はキャンバスの下塗りに、吸い込まれるような濃度の高い黒を探していました。私たちはまずブラックジェッソから始めましたが、最初のころはグレーにしかならず不成功に終わりました。しかしオキサイドブラックのような不活性な顔料を補助的に使うことで、やっとよい結果が得られるようになりました。その成果は最終的にはハイロードの各色の開発となりました。これは顔料が多すぎる絵具ですが、つや消しで濃度のある素晴らしい質感を作り出しました。

注1】バインダー:色の元である顔料を定着させる糊の役目をするもの
アクリル絵具ではアクリル樹脂、水彩絵具ではアラビアゴム、油絵具では亜麻仁油などの植物油
注2】ハイロードアクリリックス:国内未発売商品

色の耐光性
この性質は高品質な専門家用画材としては欠かせない重要なものです。ありがたいことに、ASTM D01.57の画材委員会が多大な功績をあげています。画材の耐光性試験規格(D4303)とそれに続く各種画材規格に含まれる顔料耐光性リストはほとんどの絵具メーカーが利用しています。残念ながら自社絵具の試験を実際に行っているメーカーはほとんどありません。そのためには余分な仕事が必要になりますが、それは作品の寿命にとって大切な問題であり、このリストを頼りにしたからといって絵具の耐光性が保証されるとは限りません。ですから、メーカーは自社の絵具の耐光性をそのバインダーも含めた最終製品を使ってASTM規格に従い試験する必要があります。

注1】耐光性:光(主に紫外線)により色褪せが起こるかどうかの性質、またはその色の光に対する強さ
注2】ASTM:アメリカ試験・材料協会 日本のJISに相当する規格作成団体で世界で最大規模
注3】耐光性リスト:ゴールデンの絵具にある耐光性マーク I、IIなどを顔料ごとに列記した一覧表

絵具の粘度
絵具を作り始めてほどなく、デイビッド・へドリーという画家に、フタロブルーは他のバーントシェナのような天然無機顔料と同じように製造上の難しさのあることを説明したことがあります。彼は、何故すべての絵具が全く同じような感触でなければならないのか、といいました。私たちが納屋の中でゴールデン社を始めたとき、つや消し剤やその他の固形分を加えてすべての色を同じ質感に調整するというようなことはせず、それぞれの色がそれ自身の質感そのままに現れるように作ろうと決めました。しかし粘度のこととなると、各色がまさしく同じような品質で同じような作業性でなければならないと考えていました。デイビッドは、色が違えば一定範囲内でその挙動が違うのはかまわないだろう、しかしアーティストとして重視するのは材料相互の違いであり、色の選択とは単純な色相、明度、彩度というだけはなく、流動性やテクスチャーあるいはその色の持つフィーリングであるといいました。絵具メーカーとしての私は、これら材料を同じ状態に作るべきだという衝動と戦わなければならないと認めざるを得ません。しかしこうした洞察は、絵具の品質というものを絶対的なものと対話的なものの対照である、としたのです。私は「答え」は「選択」であると考えるようになりました。高品質な絵具製品とは、アーティストが自らの意思で使えるか否かという有益な情報と選択肢を提供するのです。この品質価値というものが私を刺激し続けているのです。
オリジナルページに書き込まれた
ASTM画材部会の議長であるMark Gottsegenノースカロライナ大学助教授から
まずゴールデン社が率先して自主的にその人的資源や専門性、配合知識、時間、材料あるいはその精神をASTM D01.57に対し貢献していることを賞賛します。 次に、油絵具の素晴らしい属性の一つとして挙げられるのは、それぞれの色が微妙に違うことです。乾燥時間、テクスチャー、透明-不透明性などです。いわゆる天然土の色は、油絵具の他の色と比べ際立っています。あなたがデイビッドの指摘から、油絵具と同じようにアクリル絵具でもそうした違いが許されることを認識されたのは素晴らしいことです。問題は、最近のアーティストはそれぞれの色に均一性を期待する傾向にあることです。それは、学校において教師が学生グレードの絵具を勧めることに起因しています。とても残念なことです。私は「学生グレードの絵具は買うな」といっています。
注】天然土:バーントシェナやローアンバーなどの天然の土から作った色

アーティストとMark Gottsegenノースカロライナ大学助教授のやりとり
アーティスト
材料という場合、その品質は作者の意図とコミュニケーションの問題だ。もしパンとピーナツバターとチェリーで美術品を作るとしたらブランドと成分は作品に影響するかもしれないが、作品が成功するかどうかということとは関係がない。アーティストとして作品の成功とは私の意図とそれが人々とコミュニケーションできるかどうかということによる。ゴールデン社はアーティストとの会話を通じて、様々な要求に応えてくれている。

Mark Gottsegen氏
成分の品質は作品に影響するかもしれないが、成功するかどうかということとは関係がない、という言葉は今日は正しいかもしれないが、明日には必ずしもそうではありません。
自分が使う画材にはそれ相応の対価を払います。お客が支払ってくれる金額に見合う価値があるか疑問な場合は作品を売るわけにはいきません。チェリーやピーナツバターならあっという間に悪くなるので、お客は金を返せというでしょう。
25年くらい前のこと、曲がってしまったキャンバス枠を交換するためにお客の家まで10時間も車を運転したことがあります。枠のメーカーは車代どころか謝罪もなく門前払いでした。
アート関連の無料相談弁護士のおかげで車代は取り返しましたし、お客は許してくれましたが、それ以来自分の作品に使う材料を出来る限り知り、技術を磨いて問題がないように心がけています。
私がコントロールできないものの一つは絵具の成分です。自分で絵具を作ったり研究する時間はないので、出来る限りシンプルな絵具を使うか、十分に信頼できるメーカーの絵具を使うようにしています。
信頼できるメーカーがたくさんあるのは確かですが、単に材料を作って売るだけのメーカーもたくさんあるのも確かです。 「お金の話をするな、真実と美、そして芸術の話だ」というかもしれませんが、1981年にロバートヒューズは「アートとお金はサラダ油と酢のようなものだ、結局はそれでドレッシングを作らなければならない」といっています。いかなる哲学があろうとも、アートは商品であり、それは歴史上で僧侶が教会の壁の装飾を初めて依頼したときからそうなのです。
ですから、我々アーティストは材料の品質に責任を持たねばならず、また最良の材料を提供してくれるメーカーを支援しなければならないのです。