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ワニスの基礎知識
 
ワニスの塗布は議論百出のテーマです。これは複雑な問題で、どんな状況にも適したワニスや技法というものはありませんので、必ずしも簡単に解決できるとは限りません。ワニスの選択に影響する一般的な要因には、外観、下地となる絵具の塗布方法と厚み、表面のテクスチャーと吸湿性、室内と戸外の暴露条件の違いなどがあります。ワニスにできることとできないことを理解すれば、有効に使いこなせる可能性はぐんと高まるでしょう。
なお、以下にポリマー・ワニスと記載されているのはゴールデン・グロスワニスまたはマットワニスに該当する製品です。またMSAワニスは国内販売はされていませんのでご了承ください。

ワニスの機能
ワニスはいろいろな形で芸術作品を支援する存在です。表面をよりマットに仕上げる、あるいはもっと光沢を出すなど、表面のつやを変えたり、絵画のさまざまな部分に統一感を与えたりするためにも使われますし、彩度を増すためにも使われます。ワニスは下地の表面を保護し、絵画や造形作品をクリーニングしやすくします。木炭やパステル用のフキサチーフと同じように、芸術作品を均一にするために使用されることも多いのです。
 
紫外線安定剤UVLS)の形で高い保護効果を発揮するワニスもあります。紫外線が作品に当たる前に反射することで芸術作品に起こり得るダメージを防ぐのです。こうしたワニスは染料などの退色しやすい材料には特に有効ですが、全く色褪せないようにすることはできません。UVLSの性質を持つワニスの被膜が厚いほど、保護力は強くなります。ゴールデン社のポリマー・ワニスにもMSAワニスにもUVLSが含まれています。
 
ワニスの条件
下地の絵具表面にダメージを与えることなくクリーニングできるよう、ワニスは除去可能でなければなりません。将来絵画の修復やクリーニングが必要になる可能性がある場合は、除去可能なワニスを使うことが有効な手段となります。ワニスを溶かし、除去するときに表面の塵や埃が一緒に取り除かれるからです。ワニスには、絵画面の伸び縮みに追随する程度の柔軟性は必要ですが、表面をべとつかせず塵や埃を付着させない程度の硬質性も必要です。下地材と環境条件に応じて、湿気を通過させたり、湿気に対する保護膜を作ったりできるよう、適切な多孔性で配合しなければなりません。化学物質や水への耐性も必要です。時が経過しても、湿度、熱、可視光線、紫外線などの要因によって引き起こされる退色に耐えなければなりません。つまり、ワニスは退色や曇りが生じない優れた透明度を有する必要があるのです。
 
ワニスの審美性
あらゆる場合において、ワニスは、ワニスと下地絵具との光屈折率の違いによって、好むと好まざるとに関わらず、審美的機能を発揮します。絵画の外観を変えない「完璧なワニス」がしばしば求められますが、未だに実現していません。したがって、ワニスが最も効果的に使われているのは、絵画を引き立てているときと言えるでしょう。ワニスが絵画の外観にどのように影響するかを理解するには、実際に使って経験することが一番です。
 
画家がつやを制御することができるよう、グロスタイプからマットタイプまで、仕上げのレベルに応じたワニスがあります。自分が望むレベルのつやに仕上げるために、製品の種類ごとに同じブランドで仕上がりの異なるワニスを混ぜたり、連続して使用したりすることも通常は可能です。
 
ワニスの種類
最近開催されたCanadian Conservation Institute(カナダ修復保存学会)での会議1において、絵画修復家を対象としたワニスの最新技術と科学に関する話し合いが行われました。このシンポジウムでは、ダンマル、コーパル、マスチックなどの伝統的な天然ワニスとLarapal k80PVAA AYABPVA AWABMowilith 20PVAKetone MArkon P90Regal Res、ポリブチル・メタクリレートといった名称の新しい合成ワニスが話題にのぼり、こうした材料が近代とそれ以前の芸術作品用のワニスとして適切かどうかを画材研究家と修復家が再検討しました。これらのワニスに関する議論の大部分は、紙面の都合上書ききれませんが、その一部を紹介するだけでも、ワニスのことがよりわかりやすくなると思います。伝統的なワニスのなかで最も重要なのはダンマルで、芸術作品に適しているとして今でも推奨されている唯一の伝統的なコーティングシステムです。コーパルやマスチックなどの他の樹脂は、残念ながら今なお使用されてはいるものの、ひび、広範囲の黄変などが起こり、時がたつにつれ次第に絵画から除去しにくくなります。ダンマルも通常の暴露状況では約50年で黄色から褐色に変色しますが、下地の絵具層に大きな影響を与えることなく油絵の表面から除去することが可能です
 
よりすぐれた代替品を模索するうちに新たな合成ワニスシステムが生まれました。近年議論の中心になっているのは、Gamblin社による新たなワニスGamvarなど低分子量のワニスと、ゴールデン社のMSAワニスなど高分子量(HMW)のワニスです。低分子量のワニスは分子が小さいため、高分子量のワニスよりつやがあり、光の屈折率が高く、下地への浸透度も高い傾向にあります。他方、高分子量(HMW)のワニスは、表面の保護性が高く、伸縮性が大きく、乳白化しにくい傾向にあります。National Gallery of Art(ワシントン・ナショナルギャラリー)の科学研究部長Rene de la Rieの新たな研究によりさまざまな代替品が提案されましたが、私たちはやはりゴールデンMSAワニスなど、ポリブチルアクリレート・システムの方がよいと考えています。これは耐久性と耐光性が最もすぐれていると証明されたシステムであり、除去しやすさも備えています。ゴールデン社の他の製品であるゴールデン・ポリマー・ワニスは、除去可能ですぐれた視覚的特性を持つという基準を満たす水溶性ワニスである点が特徴であり、使用者が危険な溶剤に曝されることもありません。このワニスは被膜の強さと浸透性という点ではMSAワニスと比べると機能は中程度です。硬質の下地材には、これよりずっと硬質のワニスを使用することができます。家具や床のデザインなど、機能的に使用される作品にワニスが使われる場合、この点は特に重要です。このような用途にはポリウレタンワニスがよく選択されます。それは最も孔の少ない丈夫な皮膜が得られるからです。基本的に除去可能なコーティングという原則に沿わないのですが、用途によっては使用せざるを得ないこともあります。最も長い間使用されてきたポリウレタンは芳香族系で、黄変しやすい性質を持っていますが、近年の技術革新により、黄変しないポリウレタンが誕生しました。これらは脂肪族系で、一液または二液系の水性製品または溶剤系製品として購入可能です。
 
アクリル絵画のワニス塗布
修復家や美術教師のなかには、絵具の被膜に影響することなくワニスを除去するのは難しいと考えられることから、アクリルエマルジョン絵具で描いた絵にはワニスをかけない方がよいと言う人もいます。私たちの研究と経験によれば、適切なワニスと技法を用いれば、アクリル絵画にワニスをかけることは有益であり、リスクも最小限に抑えられることがわかっています。
 
熱可塑性ポリマーであるアクリル絵具は高温多湿状態で軟化する傾向があり、そのため塵埃が付着しやすくなります。絵具より硬質のワニスを使えば、この現象を緩和し、クリーニング時に犠牲層にもなってくれます。ただし、キャンバスや紙など、絵画の下地材が柔軟な場合、ワニスにも相応の柔軟性が必要です。
修復のためにワニスの除去が必要な場合、遮断コートの中間層を作ることをお勧めします。遮断層は、下に塗られている絵具や他の画材の層を、塗布しようとするワニスから物理的に分離する透明の膜です。ワニスを溶かすために溶剤を使う場合、溶剤が絵具層に到達し色が動いてしまう(color pick up、溶解)というようなダメージを遮断層が防止します。
吸収性の高い表面(ステイン技法で描かれた表面など)にマットワニスを塗布する場合にも、外観が曇ったり「霜降り」状になったりするのを防ぐために、遮断層はきわめて重要な役割を果たします。霜降り状に見える原因は、ワニスや溶剤が下地材に吸収され、つや消し剤が表面に残って曝され白い固形物として浮き上がるためです。ゴールデン・ソフト・ゲル(グロス)を水と21の割合で薄めたものは遮断コートに適し、レベリングがよく泡も抜けやすくなっています。
 
ワニスの塗布
ワニスを効果的に使いこなすために最も重要な要素は塗布方法です。残念なことに、ワニスは一般的に後で考えればいいことと思われていたり、作品を仕上げてから出荷するまでの間に短時間で処理されたりしています。効果的に塗布するために、ユーザーはワニス固有の特性はもとより適切な技法を熟知していなければなりません。製品を良く知るために、少し時間をかけてテストピース上でワニスを実際に試してみることが非常に重要です。
美術絵画の修復家であるJames Bernsteinは、次のようなワニスの塗布方法を提案しています。

私が筆を使ってワニスを塗布するときに用いる手法は次の通りです。適切な粘度にワニス溶液を調整し、浅目で広口の重い(軽くあたっても大丈夫な)器に移します。ワニスは、筆の先(毛先四分の一か三分の一くらい)だけが濡れる程度に器の底に浅く入っている状態です。
 
作業を進める前に、ワニスを塗布する段取りを考えなければなりません。そのためには、筆をワニスに一度浸すごとに塗ることのできる範囲を想定する必要があります。ます目状に少しずつ重ね合わせながら正方形や長方形の形に塗ることもあれば、絵の構図や輪郭に合わせて自由な形に塗ることもあります。
筆を浸して塗る前に、一度浸すごとに均一に塗ることのできる範囲を予測します。作業するときは必ず塗ろうとする部分の中央にワニスを含んだ筆を置いてください。そしてその部分全体に均等に浸透するよう、液を広げていきます。新たに筆を液に浸し、さっきワニスを塗布した部分に直接隣接した箇所ではなく、これから塗ろうとする範囲の中央におきます。この範囲を塗布した後、さっき塗布して定着しかけているワニス部分との接線を越えるくらいまで、湿り気の残るワニスを軽く重ねながら、ローアングルの筆運びですばやく筆を走らせ仕上げます。この要領で部分ごとに塗布しながら絵画全体にワニスを塗っていくのです。
 
一般的に最良の方法だと思われるスプレーでのワニス塗布について、Bernsteinは次の方法を勧めています。
作品にスプレーをかけようとする前にワニスの取り扱いと被膜形成状態をみるために、必ずスプレーの設定と溶液を予めテストしてください。調整が済んだら、絵画の一番端からスタートして、途中で止めることなく一直線に絵画表面を横切ってスプレーをかけます。一定の距離(2530センチ)を保ち、絵画の外縁を通り過ぎるまでスプレーすると、そこで方向転換し、さっきスプレーした跡と平行に、若干重なる程度にスプレーしていきます。この要領でスプレーを続け、絵画全体に塗布します。その後のワニス塗布については、均等に仕上げるために、90度回転させた向きでスプレーをかけはじめてください(1回目に水平にスプレーした場合、2回目は垂直にするなど)。2
 
上記のアドバイスは絵具に対する豊富な経験、訓練、知識の賜物です。プロの修復家は大体においてワニス塗布の分野においても専門家であり、適切に作業するための道具を持っています。絵画にワニスを塗ることを修復家に依頼するのも、代替案として一考の価値があります。特に重要な作品の場合はなおさらでしょう。
 
1 「ワニスの信頼性と耐久性に関する会議」 Varnishes, Authenticity and Permanence Colloquium, September 19-20, 1994
2 「ワニス塗布基礎概論」1992年米国修復学会(AIC)絵画専門家グループ報告文A Review of Varnish Application Fundamentals, 1992 AIC Paintings Specialty Group Postprints, American Institute for Conservation of Historical and Artistic Works, 1400 16th Street N.W., Suite 340, Washington, DC 20036
 
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