Golden History

アクリル絵具の泡怪獣を飼いならそう

アクリル絵具の製造と使用における厄介な問題の最たるものが泡の発生です。泡のせいで乾燥後の塗膜が弱くなり、構造上の問題が生じることもありますし、塗膜の浸透性が高まって埃や変色の原因となる汚れを吸収しやすくなることもあります。しかし、最大の問題は、本来透明であるはずのアクリル画面に不透明感や曇りが生じることです。

泡の対処方法やできるだけ泡を発生させない方法を理解するには、泡の発生過程を知ることが肝要です。まず第一に泡を発生させないでくださいと申し上げることは簡単ですが、水性アクリル絵具では難しいこともあります。いかに慎重に制作にあたったとしても、絵具を含んだ筆を作品の盛り上げた山の上から谷に下ろすという単純な動きでさえ、乾燥後、泡の曇りを生じさせることがあります。これは通常、透明な層で描画したり、透明なワニスを塗ったりするときにのみ生じる問題です。

拡大部分

アクリルメディウムを上塗りとして適切に使用しなかったために発生した泡の拡大写真

泡の発生原因
水性アクリル絵具やメディウムに泡が生じるのにはいくつかの原因があります。しかし、どの場合も、界面活性剤と呼ばれる化学的湿潤剤を使用していることが主な原因です。界面活性剤は合成洗剤と同族の化学物質ですので、きわめて泡が発生しやすいからです。しかし、界面活性剤は不可欠な成分です。水の表面張力を減少させることによって、アクリルポリマーを安定させる効果も発揮しますし、顔料をアクリルに分散させるためにも必要です。

絵具の配合において界面活性剤を最適な状態で使用することは最も複雑で重要な部分です。発泡性が高いため、厳しい管理が必要ですし、安定した絵具を作るには、顔料、システム、原料ごとに界面活性剤のレベルとタイプを使い分けたり、組み合わせたりすることが必要です。発泡しにくい製品で代用できる場合もありますが、絵具の総合的な性能を損なわないことが大切です。

泡の発生は、一般的に、顔料を分散させて絵具を作るために必要な高速攪拌と分散工程の結果によるもので、避けることができません。化学的な消泡剤は泡の発生を抑制するだけでなく、発生した泡の構造を壊す働きがあるため、水性塗料には必ず含まれています。絵具の粘度が高ければ、強力な消泡剤を配合することができますが、粘度が高いほど泡も消えにくくなります。高粘稠度のアクリル絵具の場合、攪拌によって生じた泡が消滅するのに数週間から数ヶ月かかることもあります。GOLDENフルーイドアクリリクス(国内未発売)のような低粘稠度の絵具の場合、消泡剤が多すぎたり強すぎたりすると塗膜を損なうことがありますので、そうならないよう、かなり弱性の消泡剤を使う必要があります。混ぜるときに絵具を振ったり激しく攪拌したりするとビールのように泡立つことがあります。

ワニスの泡

画家や絵具会社の通説として、アクリル絵具用のワニスにはポリマーメディウム(グロス、マットメディウムなど)を使うのがよいとされてきましたが、当社は、この方法で泡による修復不能な損傷が絵画面に生じたケースを数多く目にしてきました。泡を生じさせることなくポリマーメディウムを塗ることは至難の業であり、発生した泡は消散せず、除去することもできません。したがって、遮断コートが必要なときや強力な消泡が必要なときにはGOLDENソフトゲル(グロス)をお勧めします。この製品には強力な消泡剤が含まれていますので、若干色調が薄れますが、乾燥後はほぼ完全に泡が消えます。ソフトゲルをこの用途でお使いになる場合、20%から40%の水で薄めてください。

GOLDEN社のワニスは、アクリルエマルション製品に起こりがちな泡の問題を防ぐことができるように配合しています。MSAワニス(国内未発売)は液体ポリマーであり、ポリマーワニス(グロス、マットワニス)はコロイドポリマーですが、どちらも強い消泡力があります。それでも泡が生じたときは、アクリルの塗付面を傷つけることなくワニスを除去できます(JUST PAINT 3「ワニスに関する考察」をご参照ください)。

混合による泡の発生
ワニスや絵具を混ぜるときは、泡の発生を抑制する技法を使うことが重要です。動力機器を使う場合、高速で攪拌すると漏斗状の竜巻のような渦が生じますので、そうならないように気をつけてください。必ず器の側面に沿って混ぜ、中央を攪拌しないでください。手で混ぜる場合、絵具を泡立てるような混ぜ方をしないでください。パレットの上でパレットナイフを使って絵具同士を一緒に広げながら混ぜるとうまくいきます。こうすると空気に触れる面が大きくなりますので消泡剤が効果を発揮するのです。製品を振らないでください。振るとすぐに混ざりますが、穏やかに攪拌すれば泡が生じにくくなります。できれば時間的余裕をもって混ぜるとよいでしょう。そうすることで、特に高粘稠度の絵具の場合、泡が表面に浮き上がり、消泡剤の効果で弾ける時間が与えられます。

塗付方法が泡に与える影響
絵具を塗るときの画具と技法も泡の発生量に影響を及ぼします。一般的に、筆致が強いと泡が発生しやすくなります。絵筆の動きが速い、加える力が強い、絵筆が相対的に硬いという状態は全て、泡立ちの要因になります。ワニスを塗るときはよく洗った柔らかい絵筆を使用してください。フォームブラシ(スポンジ刷毛)を使うとよいと言う画家は多いですが、テストの結果、フォームブラシはその名の通り表面に過剰な泡を発生させるようです。ローラーをかけるときにも多量の泡が発生しがちです。重厚なテクスチャー感の作品の場合には、スプレーを使わなければ、泡をたてずに絵具やワニスを塗ることは不可能だと思われます。絵具やワニスの層が薄く、未乾燥の場合は、気泡を刺して潰したり、表面の気泡を吹き消したりすることもできます。

新しい素材、絵筆、下地表面、技法を使用する場合は、実際に使う前に試してみるとよいでしょう。そうすることで泡の問題を予測し、対処方法を考えることができます。

注意事項を全て守っても泡が発生する場合、当社には消泡剤も数種類ありますので、ご利用いただけるものがあるかもしれません。つきましては、作品に泡が発生した場合は当社にご連絡ください。お役に立てるかもしれませんし、もし無理でも何かお手伝いできるかもしれません。

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