さまざまなオープンアクリリックスを使ってGelliプレート(写真中央にあるモノプリント専用の透明で柔軟なプレート)に直接描画し、抽象画を制作する。ハイフローターコイズ(フタロ)を使って、最終画像に円と球体を描いた。プレートの見当を合わせてゴーストプリントを作ることもできる。その後刷るたびに、プレートから絵具が次々転写される。いろいろな物体を使ってパターンやさまざまな種類のテクスチャーを作ることができる。オンラインには多くの教材ビデオが存在し、それぞれ独自の工夫が示されている。

オープンアクリリックスを使ったモノプリント‐終わりなき探求!
オープンアクリリックスを主要インクとして使った版画の世界に進出する。そこには限りなき可能性が存在し、さらにハイフローアクリリックスとQoRウォーターカラー(いずれも国内未発売製品)をインクとしていくつかの実験を行う。この進出は決して網羅的ではなく、むしろ可能性と実験の旅である

By Kevin Greenland
GOLDEN認定ワーキングアーティスト

冒険はまず、オープンアクリリックスを「インク」として使うことから始まります。オープンアクリリックスは独自の遅乾性を発揮するように設計されたプロ用アクリル絵具製品です。作業時間が長くなることで技法の範囲が広がり、これまで油絵具でしかできなかった伝統的技法が使えるようになります。水性絵具として作られていますが、皆さんがこれまでに試されたどのアクリル絵具とも違う働きをします。オープンアクリリックスは標準的なアクリル絵具と違って、動き続ける能力があるため、すぐに固まることも筆跡が引きずられることもありません。薄塗りがベストで、グレージング、シェーディング、ウェット状態での混合、減法技法に理想的です。「ウェット状態を保つ」性質のため版画には最適の絵具です。薄い絵具の層でも湿った状態を長く保つことができます。

作業可能な時間が長いため、版画には最適な水性オプションであり、この用途に関しては油絵具に匹敵します。石鹸と水で容易に洗浄できるため、時として版画用油性インクにつきものの健康と安全に関する懸念なども不要になります。80もの色(国内発売は40色)があるオープンアクリリックスは合成繊維の筆でも天然毛の筆でも使用することができ、印刷以外にも多くの選択肢を提供してくれますが、発売以来、モノタイプの版画用インクとして独自のニッチを獲得しました。

モノタイプとは、平滑な非吸湿性の面に描画して制作した版画の一種です。描いた画像に紙に押し付けて、時には印刷プレスの力を借りて転写します。モノタイプの制作に使用される非吸湿性の支持体はたくさんありますが、オープンアクリリックスは間違いなくどれにも使用可能です。ガラスやプラスチックの支持体もありますが、ここで注目したいのはGelliプレートを使ったモノタイプです。このゲル製版画プレートは鉱油を含む独自のプラスチックで作られています。ゲルプレートを吸湿性の面に乗せて放置すると微量の無害の鉱油が浸み出します。またラテックスは含まれていません。詳しくはwww.gelliarts.comをご覧ください。

モノタイプの制作工程で必要なことは、面全体にインクを塗った後、筆や布を使ってインクを除去し、減法画像を作る(すなわち、不透明色のフィールドから光を生み出す)方法で作成できることです。オープンアクリリックスはかなりの時間「ウェットな」状態を保てるため、プレート面やGelliプレートなどの上で容易に作業できることから、減法技法に最適です。

昔は油性インクを使用していましたが、近年では水性インクが開発されるようになりました。油性インクを使う場合、乾燥した紙の場合、画像のコントラストは高まります。紙を湿らせると、画像のトーン範囲は約10パーセント大きくなります。
 

Gelliプレートから転写したモノタイプの細部

オープンアクリリックスを使った場合もやはり同じです。乾式印刷ではコントラストが大きくなります。噴霧器を使って印刷前の紙を水で湿らせると、画像のトーン範囲はやや大きくなり、紙面の水の量によっては幻想的な雰囲気に変わるかもしれません。また、さらに検討するために、オープンシンナーを使って紙面を湿らせる実験もやってみてください。細い線が束ねられる傾向が生まれ、ある種の軽快で幻想的な雰囲気が出ます。水は標準的なアクリル絵具の粘度を下げるための一般的な媒体ですが、オープン絵具には非常に攻撃的に働きかけます。この絵画的手法に、より流動的な粘度が望まれる場合、オープンシンナーを使いとよいでしょう。

上記のように、モノタイプはたった一つの「単刷り版画」を作ります。インクの大部分は最初のプレスで取り除かれるからです。その後の再版が可能なこともありますが、初版とは大きく異なるものになり、一般的には初版より劣ると考えられます。原板から2度目に刷ったものは「ゴーストプリント」とか「同族」と呼ばれています。モノタイプを装飾するためにステンシル、水彩絵具、筆、その他の道具もよく使われます。モノタイプは多くの場合、事前スケッチなく自然発生的に制作されます。


Gelliプレートは透明であるため、色鉛筆のスケッチをプレートの下に敷いてテンプレートにすることもできる。

さらに、モノタイプは版画技法の中で最も「絵画的」な手法であり、本質的には絵を刷って作った独自の版画です。これがGelliプレート版画の真の姿です。この媒体の主な特徴は、自然発生的であることと、版画と絵画とスケッチを組み合わせた媒体であるということです。Gelliプレートが従来の銅板や亜鉛版より有利な点は透明であることです。そのため、プレートの下にスケッチの複製や原本を置いて手本にすることもできます。ただ、左右反対に作業していることを忘れないでください。プレートの右側に描いたものは印刷後左側に現れます。これは、一部のコピー機にある「ミラーイメージ」や、Photoshopで「画像を回転する」を選ぶことで訂正することもできます。抽象的にまたは自由な形態で作業をしている場合は心配無用かもしれません。オープンの使い方は簡単です。Gelliプレートの表面に描き、画像を適切な紙で覆い、均一に適切な圧力をかけて擦り、プレートから紙に絵を転写します。Gelliプレートを使うことで画家にも版画家にも多くの選択肢が生まれます。選択肢の1つはコラージュまたはフェイクのチンコレです。チンコレとは、軽い紙をより重い版画紙に貼り付け、インクを塗ったプレートとともにプレスにかける版画技法です。その結果生まれたのがコラージュの版画です。Gelliプレートを使う場合、ソフトゲルかマットメディウムを使って画像を紙に貼り付け、その後コラージュ画像の上に刷ればこれを達成することができます。ハイフロー(国内未発売)は従来のフルーイドアクリリックスより少し長い時間湿った状態を保つため、Gelliプレートにハイフローを使う実験をする余地もあります。オープンアクリリックスと併用することもできます。GOLDEN製品はすべて、アクリルシステムの一部として併用可能です。
 

ソフトゲルとオープンアクリリックスを使った版画とコラージュの要素を組み合わせたチンコレ。

モノプリントは、木版や石版石や銅板などの版を使い、固有のイメージを複数部作成できる版画技法です。単独の版から刷られた複数の固有のイメージは、可変版(1枚の亜鉛版から10枚刷るなど)と呼ばれることもあります。コログラフ(段ボール版画)や手書きの加筆など、モノプリントに使用する技法はたくさんあり、粘度の高いインク(オープンアクリリックス)をプレートやテーブルの上に塗り、押し延ばすトレース技法もあります。その後、インクの上に紙を置き、紙の裏面を擦り、インクを紙に転写します。リトグラフや木版画や凹版など、伝統的な版画技法を使ってモノプリントを制作することができます。


銅板と亜鉛版にオープンアクリリックスを塗る場合は拭き取る技術をマスターするためにほんの少し練習が必要である。写真の左は、ソフトゲルを使って木製パネルに最終版画を刷り、その後「アクリルのエンコースティック」を何度も薄く塗り重ねたものである。

また、使用するインクのタイプ、色、粘度を変えることにより、多種多様なモノプリント版を制作することもできます。繰り返しますが、オープンシンナーの量を変えてオープンアクリリックスと併用することで「インク」の粘度を変えることができます。一般的に、オープンアクリリックスを使用前にスタジオで丸1日寝かせると、よりインクに近い物質ができるでしょう。インクのような望ましい粘度を得るためにはこの硬化プロセスが有益であることがわかりました。ただし、前節の絵画的技法でモノタイプを行う場合、これは不要です。

プレートにインクを塗る際、ある意味でオープン絵具の場合は従来のインクほどたくさん塗る必要はありません。「少しで十分」という古い諺があてはまります。刷る前にプレートを拭き取るという点では伝統的に凹版の拭き取り工程とよく似ていますが、拭き取り方を適応させる必要があります。オープンアクリリックスは水性ですので、油性インクの拭き取り方法と同じようには反応しません。モノプリントスタイルのプレートとオープン絵具で刷るコツは、凹版の拭き取り方法とモノプリントの手法とを組み合わせることです。伝統的な拭き取りではターラタン地(吸湿性の高い綿の布)を使いますが、オープン絵具にとっては吸湿性がやや高いため、プレートから絵具を拭き取り過ぎる傾向にあります。ターラタン地をチュールで包むことによりこの問題を解決できるかもしれません。チュールはナイロンのネットであるため綿のターラタン地より吸湿性が低いからです。じゃがいもや玉ねぎの入ったプラスチック製ナイロンパッケージも十分に包みとして使えます。このナイロンの包みにBrawny DineのA-Cloth(キッチンタオルのブランド名)を1枚入れるとよいでしょう。さまざまな組み合わせを試してご自分に最適なものを見つけてください。こうした方法を使うことで、プレートからオープン絵具を拭き取り過ぎる問題を軽減できますし、綿棒やBrawny DineのA-Clothで作った小さな塗り道具を使ってプレートに選択的に描くなど、都合よく使うこともできるでしょう。

おわかりのように、モノタイプとモノプリントの制作に際し行うことのできる実験は膨大です。今では、アラビアゴムをベースバインダーに使った水性版画用インクもいくつか販売されています。 Aquazol(樹脂商品名)をバインダーに使ったGOLDEN QoRモダンウォーターカラー(国内未発売)が導入されたことで、QoRを版画用インクとして使う新たな可能性も考え始めたところです。Gelliプレートにオープンだけを使って制作する可能性や、QoRと併用してモノタイプまたはモノプリントの技法を何通りも組み合わせて制作する可能性を考えてみましょう。GOLDENの現代の材料で版画を作る旅の可能性は無限です。第1歩を踏み出し、絵具のキャップを外して冒険をスタートしてください。
 

コラージュのように作られた浅浮き彫りのテクスチャー感のあるプレートから制作したコログラフ版画。プレートにはオープンアクリリックスを塗り、馬連を使って画像を紙に転写している。  

 
Golden Artist Colors社


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