蛍光色 - 流れ星の瓶詰め

Amy McKinnon

静けさの中に響くチェロの安定した低音と、それに続く同様に繊細でデリケートなバイオリンの音色。楽器はゆったり流れる川の繊細な波にやさしく乗り、穏やかで洗練された場所へと催眠術のように聴衆を導きます。そこへ、ヨチヨチ歩きの裸の幼児が突然現れ、時には駆け、時には1歩1歩踏みしめながら部屋を横切ります。状況を理解した母親が紅潮した顔で慌てて幼児を追いかけ、幼児は悲鳴を上げます。顔料の世界には歴史と一貫性と洗練があり、この世界で蛍光色はヨチヨチ歩きの幼児です。紛れもなく存在し、常に計画に含まれるとは限りませんが、いったん現れると、波を作り、自らの存在を知らしめます。何かにぶつかり、動揺させることもありますが、皆その脱線を楽しむのです。

蛍光色は標準的な顔料にはない鮮やかさゆえにその価値があります。その名が示すように、ブラックライト(紫外線ランプ)のもとで蛍光を発しますが、特殊な照明を使わずともその彩度は高いが故に、画家は多くの場合、作品中の他の要素を強調し、否定し、比較するツールとして蛍光色を利用したい思うのです。こうした彩度の高い色はネオンとかでイグロー(昼光)と呼ばれることもあり、よく駆動装置や安全装置に塗られています。思わず振り向くような、注意を引く色であり、安全と興奮を同時に暗示しています。

興奮(励起)を示すのは実現象であり、紫外線が蛍光色に及ぼす影響です。紫外線が色にあたると、分子の電子エネルギーが生じ、励起状態と呼ばれる状態が発生します。この励起状態で発生したエネルギーの一部は振動により失われますが、残りのエネルギーは可視長波長の輝く光として排出されます。吸収された光が排出される光より高いエネルギーを持つ限り、これらの顔料が紫外線以外の光の下で光り輝くことが可能です。ブラックライトのもとで蛍光を発する能力は、ブラックライト下でなければ人の目には見えないという機能性ともなり得るので、隠された秘密という働きをもたせることも可能です。

ASTMは顔料を耐光性で評価しているため、顔料の化学組成に基づく基準が存在します。当社はそのテストに適合し、かつASTMによる顔料評価の有無を問わず手持ちの全顔料に関する独自で広範囲の研究とテストを行っています。そのテストによると、すべての顔料がASTMを通じて行われた耐光性テストに耐えることができ、耐光性I(優れている)か耐光性II(とても良い)のいずれかに該当することが分かっています。

一方で、蛍光色は一般的に耐光性があまり高くありません。第一に蛍光色は顔料ではありません。当社が製造する蛍光色は、透明な固形のポリマー担体に溶解している有機染料を主成分とする蛍光色を原料としています。一般的に顔料は固形粒子であり、染料は流体です。従って一般的に物理的組成により固体顔料の方が高い耐久性を持ち、光に曝される表面積が小さいため、耐光性が高くなります。

そのため、なぜ高水準の耐久性に該当しない色を作るのかと尋ねられることがあります。簡単に言うと、アーティストが望むからです。お客様を喜ばせることも当社の理念の1つです。当社はアーティストが必要とするものを作ることで信頼をしてきましたが、その基礎になるのは実際の要望です。耐光性が低いとはいえ、提供するものはその等級で最も良い製品です。ある材料がニーズに合うかどうかについてアーティストが選択できるよう、正確な性能評価も提供しています。

絵具にする色を選ぶとき、可能なオプションをすべて調べ、マストーン(原色)、チント(薄め色)、不透明性、耐久性、感度、耐光性、そして蛍光色については蛍光を発する能力という点を検討します。その結果、候補の中から最適なものを選ぶ知識が得られますし、他の顔料と比べて大きな持続性を持たないとしても、それが候補の中の最良のものだと言えます。

蛍光色が褪せると、蛍光を発する能力が失われるだけでなく、彩度の高さも失われます。退色の様子や程度はすべて同じではありません。紫外線にさらされると黄色は緑に、オレンジはくすんだ黄色に、ピンクは薄いアース系オレンジに、緑はくすんだ青に、青は黒っぽくなります。すべて、くすみや色褪せや色ずれが起こります。

蛍光色は、耐光性が容認レベルに満たないだけでなく、その特性上、望むとおりに仕上げるにはある程度の慣れと工夫が必要です。蛍光色は他の多くの絵具よりも透明度が高い傾向にあります。不透明な仕上がりを望む場合は厄介かもしれませんが、蛍光特性を活かして使用するなら逆にメリットになるかもしれません。蛍光色で制作する場合に活用できる実践的対策があります。

蛍光特性を活かして蛍光色を使用する場合、絵具の塗り厚さとその下の層をなす素材によって大きく違ってきます。蛍光色は下地の色によって異なる挙動をします。マットの黒(ブラックジェッソ)の上では、1度塗っただけでは透明なためにほとんど感知できませんが、塗る量を増やすと色が現れます。ブラックライトの下に置くと、背景が完全に消え、蛍光色のみが見えるようになります。白の上に蛍光色を塗ると、最初は透明色の背後が白いことで多くの光が表面から反射するため、非常に明るくなります。しかし、塗付回数が増え、不透明度が増すと、白の上に1回塗った場合と比べて白があまり現れなくなり、輝きが減ることになります。マットな黒の表面の上に非常に明るい蛍光色が望まれる場合、最初にマットな黒で背景を塗り、蛍光にしたい部分を白く塗った後、蛍光色を塗るとうまく仕上がるでしょう。

不透明な表現を望む場合、蛍光色の透明性を手際よく処理する必要があるでしょう。似た不透明な色を選び、蛍光色の下に塗ることで、彩度も明度も失うことなく、高い不透明さが得られることが多いです。混ぜ合わせることもできますが、顔料系絵具の強さの中で蛍光色が失われる可能性があります。装飾画家が使用する点描法も刷毛目を細かくするので、均一な塗付を達成するのに役立つかもしれません。

非常に彩度の高い色の場合、ワニスを塗ることで、元の色が認識できないほどに褪せてくすむことを防げるかもしれません。蛍光絵具にMSAワニスやポリマーワニスを1回、2回、3回塗ると、光に曝されてもあまり変化は見られませんが、蛍光ではなくなります。ワニスを1回塗っただけの場合やグロスワニスを2回塗っただけの場合は若干蛍光を発します。MSAワニスを2回塗ると完全に蛍光ではなくなります。ワニスが蛍光色を守るだけでなく邪魔するように機能する理由は、ワニスにUVLS(紫外線安定剤) が含まれており、塗膜に紫外線が入るのを防いでいるからです。ワニスは絵画の色褪せを防ぎますが絵画から光が反射するのも妨げます。

ヨチヨチ歩きの幼児が沈黙を破るように、蛍光も常に注意を喚起しますが、耳障りな音と思われるものも取り入れてしまう方法があります。最も楽しいのは、制御不能なもののエネルギーやきらめきやワクワク感を制御せず、理解し、操作し、まさにその特性を活用してまず自分で見て楽しむことでしょう。
 
 ブラックライト下の蛍光色 昼光色下の蛍光色  
 
左右画像とも:

上から、蛍光オレンジ、蛍光マゼンタ、蛍光ブルー、蛍光グリーン、蛍光黄緑
左端からMSAワニス(UVLS入り) 3回/2回/1回塗り、無塗付、ポリマーワニス  1回/2回/3回塗り

Golden Artist Colors社


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