屋外壁画に最適の顔料の選択

Michael Townsend

 
蛍光マゼンタ厚さ250ミクロン。
上から、上塗りなし、遮断コート、MSAワニス2回塗り。
左は屋内保管、右は屋外で1年暴露。
 
 
カドミウムレッドライト、厚さ250ミクロン。
原色と薄め色(チタニウムホワイト10:1)。
右は屋外に3年間暴露
 
 
ウルトラマリンブルーは弱酸に曝されるとチョークのように白くなることがあるため、屋外に適さない。
 
 
ウルトラマリンブルー厚さ250ミクロン。
原色と薄め色(チタニウムホワイト10:1)。ワニスなし。
左は屋内保管。右は屋外に3年間暴露。
 

屋外の壁画は塗装系の耐光性と耐候性を試す最も極端なテストと言えるでしょう。当社の最も人気のある技術情報シートの1つである「屋外の壁画を描く(英文のみ、類似情報はJust Paint 10にあります)」は数十年に及ぶ経験と研究の結晶です。まだお読みでない方はどうぞお読みください。壁画はその構成素材と同じ耐久性しかなく、長期的に良い状態を保つには準備が不可欠であることがすぐにおわかりいただけるでしょう。成功の鍵は当然、最悪の環境条件に最も耐えられる絵具を選ぶことです。

当社のアクリル絵具製品群は屋外壁画用絵具として使用するのにとても適しており、耐久性で選ばれた、屋外でも優れた性能を発揮する樹脂と顔料を組み合わせています。しかし、屋外の壁画に使う絵具は、専門家仕様であるというだけでは十分ではありません。

「それなら、ASTM耐光性Iと評価された顔料だけを使うことにしよう」と思われるかもしれません。素晴らしい着想ですが、ASTM耐光性I顔料評価システムは直射日光のあたらない室内での使用を対象にしています。屋外の壁画は紫外線、熱、湿気、アルカリ性の表面、酸性雨に耐える必要があります。顔料の中には複数の要因が揃った状態でのみ真の耐久性を発揮するものもあります。油絵具など特定の絵具類は、壁画に特有のレンガやブロックが持つアルカリ性の面では往々にして性能を発揮しません。私たちがASTM LFテストのみを唯一の成功指標とはしないのはそういう理由です。

また、専門家用絵具は家庭用塗料や他の商業コーティングとは異なります。専門家用絵具では、はるかに広範囲の顔料が使用される傾向にあり、通常、顔料の含有量が高く、顔料の粒子も大きいものもあるため、劣化要因に曝される可能性が高くなります。私たちは常に、GAC 200(国内未発売)などのアクリルメディウムを絵具に加えることを提案しています。硬質の樹脂を加えることで物理的堅牢性が高まり、接着も促進されます。また、壁画に使用できる絵具も増量できます。しかし総体的に、最初の問題に対応した後はイーゼル絵画に使用する絵具と同じ絵具を使って壁画を描くこともできます。

変わらないでいいんだよ

日射について考える時、真っ先に思い浮かぶのは退色です。褪せやすい色は文字通り見えなくなることがあり、これは何百年もの間、悩みの種でした。しかし色の消失だけでなく変色も起こる可能性があります。分光光度計と呼ばれる道具でこの変化を測ると、「デルタユニット」で具体的な色変化測定値を得ることができます。出発点からの色ずれの量は、「耐光性」があるか否かを判断する指標です。色褪せや、濃色化や、色相の変化が生じるかもしれません。蛍光顔料(実際にはアクリル樹脂の中でカプセル化された染料)は耐光性に劣ることが知られています。最終的にひどく色褪せするだけでなく、途中で劇的な変化が発生します。かつては鮮やかだった光学的に明るい色がすぐにくすんだ茶色になることもあります。したがって、蛍光色は間違いなく屋外壁画家のパレットから除外されますが、他にも驚かされるものがあります。

ASTM耐光性IIに評価された顔料は専門家用絵具として全く問題ありませんが、屋外での使用は避けるべきでしょう。たとえば、ディオキサジンパープルやニッケルアゾイエロー(キナクリドン/ニッケルアゾゴールドの重要な成分)がそうです。ハンザイエローライトもイエローアリライド顔料の中では比較的耐光性に劣る顔料です。

カドミウムという顔料には、はっきりした意見がつきものです。確かに、重金属顔料であるため取り扱いには注意が必要です。確かに、室内使用には盤石な安定性があるため画家の必需品です-しかし難点もあります。カドミウムイエローは、紫外線と熱と湿気に同時に接すると、光り輝く黄色からパステル色に変わる可能性があります。カドミウムレッドはより耐久性に富んでいますが、同じ条件では変色しやすいため、屋外での使用には避けるべきでしょう。

ウルトラマリン。このリストにウルトラマリンブルーを見たくなかったでしょう。よくわかります。私たちもこの色が大好きです。しかし、ウルトラマリンの顔料は、弱酸に曝されると化学反応が起こり、明るい青の顔料が「チョーク」のように白くなります。酸性雨の模擬実験として食用酢を主成分とする家庭用洗浄液にテストカードを浸したところ、乾燥すると顔料表面が白変しました。

クロスロード・ブルー

 
 ジアリライドイエロー250ミクロン。
原色と薄め色(10:1)、ワニスなし。
左は室内保管、右は屋外に3年間屋外暴露。
 
当社ウェブサイトの「屋外壁画の塗布に関する情報」に「良好な(good)」色のリストを掲載しています。これらの絵具は壁画用には「どっちつかず」と考えるべきでしょう。「最適な顔料」と「使用不可リスト」の間には通常、壁画に使用できる色が含まれますが、それらは描画表面にある顔料が変色する可能性があるため、不透明な使い方しかできません。それは、表面の下に同じ色が多くあれていれば、変化に比較的気づきにくいからです(不透明に塗ると、表面が変色したとしても、その下に同じ色が塗ってあるので、変色がわかりにくい(訳注)。最高の結果を得るためには、どの色であっても濃い不透明な絵具層で壁画を作ることを常にお勧めします。

以下の色を使う場合は厚く塗るようにし、色を明るくする場合は、グレーズやウォッシュの代わりにチタニウムホワイトを加えます。

 ・ジアリライドイエロー
 ・ハンザイエローオパーク
 ・ネイプルズイエローヒュー
 ・ターコイズ(フタロ)
 ・セルリアンブルー
 ・セルリアンブルーディープ
 ・キナクリドンレッド
 
上段: 日光にあたる前  トランスペアレントキナクリドンレッド
左:グレーズ層
右:不透明に塗られ、下地の絵具層と混ざった状態
 
下段:直射日光にあたった後
左:画像が認識不能になる位まで退色している。
右:日光に曝された絵具層が退色しているが、見た目の変化は小さい。

最適な結果を得るために、何色であっても、濃い不透明な絵具層を使用する。

壁画用絵具の最適な推奨

入手可能な最も安定した顔料と言えば、酸化鉄に勝るものはないでしょう。だから壁画に取り入れることは理に適っています。通称が実際の基礎原料を反映しているとは限らないため、この顔料がどれほど広範囲に使われているかを確認することはできません。典型的な立体模型(おそらく壁画家が利用できる最も優れた計画ツール)の助けを得て壁画のコンセプトを構築する際、主にオキサイドから作られた絵具群で制作ができるかどうかを確かめてください。

 

バーントシエナ 厚さ250ミクロン 原色と薄め色10:1。
ワニスなし
左は室内保管、右は3年間屋外暴露
アースカラー 

アース系無機顔料はロマンティックな名前を持つことが多く、そこから喚起されるイメージは、ルネサンス時代のトスカーナ地方のなだらかな丘の中腹で、マンドリンの調べを背景に、職人がヴァザーリのアトリエに持参するための最上のオーカー(黄土)を丁寧に袋に詰めている情景です。地球上のリモナイト鉱脈がある所ならどこででも、その黄土を現在の呼び名であるPY-43イエローオーカーまたはローシエナと命名することができます。その酸化鉄粘土を取って加熱すれば、ヘマタイト、すなわち現在バーントシエナと呼んでいるものが得られます。名前が何であれ、きわめて安定しているため、壁画用に信頼できる顔料です。

 ・イエローオーカー
 ・ ローシエナ
 ・ バーントシエナ
 ・ ローアンバー
 ・ バーントアンバー
 ・ バーントアンバーライト

合成オキサイド

顔料メーカーは、特定のアースカラーの天然鉱脈に頼るのではなく、基本原料を一定の比率で組み合わせ、その合成版を作ります。私たちはそれらを「オキサイド」顔料とか「マース」顔料と呼んでいます。この工程からすばらしい様々な顔料の選択肢が生まれ、それらは天然のインスピレーションと同じくらい信頼できるものです。最近、こうした顔料の新たなバリエーションが画家に与えられました。不透明な顔料から透明な顔料へと姿を変えたのです。透明な顔料はあらゆる点で安定しており、とてもクリーンで鮮やかな色を作ります。

 ・イエローオキサイド
 ・マースイエロー
 ・レッドオキサイド
 ・バイオレットオキサイド
 ・トランスペアレントイエローアイアンオキサイド
 ・トランスペアレントブラウンアイアンオキサイド
 ・トランスペアレントレッドアイアンオキサイド

オキサイドの明るい面

オキサイドと言えばさまざまな茶色と考えがちですが、実際には黄色から緑や青まで、多くの明るく鮮やかな色があります。鉄の代わりにクロムやコバルトを使うと、安定したすばらしい結果が生まれます。

 ・クロミウムオキサイドグリーン
 ・クロミウムオキサイドグリーンダーク
 ・チタネートイエロー
 ・セルリアンブルークロミウム
 ・セルリアンブルーディープ
 ・コバルトグリーン
 ・コバルトターコイズ

わたしだけのビスマス

不透明な緑がかった黄色のビスマスバナデートイエローは最近ラインナップに入った色の一つです。すでに述べたように、カドミウムイエローは屋外の壁画への使用にはお勧めできません。ハンザイエローオペークもまだ透明すぎると言う画家がいるかもしれません。チタネートイエローは淡すぎるため、多くの場合、混色オプションから除外されます。ビスマスバナデートイエローはカドミウムイエローライトとカドミウムイエロープリムローズのちょうど中間色を補う上に、イエローオキサイドの耐久性があります。

 ・ビスマスバナデートイエロー 
 

 

パイロールレッド 厚み250ミクロン
原色と薄め色10:1、ワニスなし
左は室内保管、右は3年間屋外に曝されたもの
ロイヤルファミリー

パイロール顔料は重金属カドミウムの優れた代用品として、1990年代初めに画材市場に登場しました。不透明度が似ているだけでなく、屋外で使用しても安定しているという歴史を持つ鮮やかでクリーンな混色です。他のファミリーの明るいオレンジ赤とは比べ物になりません。

 ・トランスペアレントパイロールオレンジ
 ・パイロールオレンジ
 ・パイロールレッドライト
 ・パイロールレッド
 ・パイロールレッドダーク

黒く塗る?

当社が使用する黒の顔料はすべて屋外での使用に全く問題ありませんが、南向きで大量の光があたるところでは、新人の屋外壁画家は予想外の事態に遭遇するかもしれません。このことは壁画用絵具の選択に関する考察につながります。ローレンス・バークレー国立研究所が行った調査では、ロサンゼルスで13℃の日に黒のアクリル絵具は61℃になったのに対し、白は最高で23℃でした(注1)。確かに、屋根の上で天頂にある太陽に曝されたとはいえ、太陽エネルギーの吸収と熱への転換がどれほど表面温度を上げるかを示す印象的な例でもあります。

それは何を意味するのでしょう。壁画に大量の黒を使うと、壁にホットスポットを作る可能性があります。壁画の耐用年数に対する影響は不明ですが、熱が蓄積すると絵具に対する余分なストレスが高まります。

白色光/白熱

屋外の壁画の場合、大抵、白のベースコート(アクリルメディウムを加えたホワイトジェッソまたは家庭用アクリル屋外塗料)を最初に塗ります。二酸化チタンは何十年もの間、もっともな理由により家庭塗料業界のお気に入りでした。

実際にTiO2顔料にはさまざまな種類がありますが、当社が使う顔料は屋外での使用実績があります。商業グレードの多くのチタニウムダイオキサイド顔料は紫外線に反応しやすく、フリーラジカル(反応性の高い化学構造-一般には活性酸素を指す事が多い:訳注)を作り、塗膜のチョーキング(白化)につながる可能性があります。当社の顔料は特にその保護的被膜で選ばれており、紫外線による劣化を排除しないまでも、軽減します。極端に耐久性の高い顔料であるため、これと暖色系の一族であるチタンバフをご使用ください(無漂白のチタニウムホワイト)。

ジンクホワイトを壁画に使うこともできますが、透明性が高いため、フタロやキナクリドンと併用すると問題が生じる可能性がありますので、使用時にはご注意ください。

 ・チタニウムホワイト
 ・チタンバフ
 ・ジンクホワイト

クレイジーダイアモンド

イリデッセントとインターフェアランス系顔料の耐久性は紛らわしいかもしれません。「耐久性がある」顔料として分類されていますが、ASTM耐光性評価で測定することはできません。なぜでしょう?分光光度計は通常の顔料を読み取る方法では反射性の色を読み取ることができないからです。幸い、色の変化を正確にスキャンできる機器があります。ヒューマンアイ、すなわち人の目です。この作業にとって最適な機器であり、私たちはいつも複数の人の眼で暴露されたテストカードを見て状況を判断しています。促進された耐候性テスト(UVA法およびXenon Arc法)を評価し、南フロリダで複数回にわたり長期間リアルタイムで日光をあてた結果、屋外の壁画に使用しても耐久性があることに自信を持っています。

避けるべき唯一のイリデッセントカラーはイリデッセントブライトゴールドです。これは純粋な雲母顔料ではなく、雲母とLF IIキナクリドン/ニッケルアゾゴールドの混合であるからです。使用できる色は下記の通りです。

インターフェアランスカラー:

 ・ ブルー(ファイン)
 ・ ゴールド(ファイン)
 ・グリーン(ファイン)
 ・オレンジ(ファイン)
 ・レッド(ファイン)
 ・バイオレット(ファイン)

イリデッセントカラー:

 ・ブロンズ(ファイン)
 ・コパー(ファイン)&(コース)
 ・コパーライト(ファイン)&(コース)
 ・ゴールド(ファイン)&(コース)
 ・ゴールドディープ(ファイン)
 ・パール(ファイン)&(コース)
 ・シルバー(ファイン)

真性の金属:

 ・マイケイシャスアイアンオキサイド(雲母状酸化鉄)(国内未発売)
 ・ステンレススティール(ファイン)&(コース)

天然雲母(国内未発売):

 ・ブラックマイカフレーク(小)
 ・ゴールドまいかフレーク(小)&(大)
 ・パールマイカフレーク(小)

この記事に記載した色と適切なプライマーを併用し、その後保護コーティングでシールをすれば、壁画は長期間すばらしい外観を保つはずです。

 
※訳注:各表題は様々な歌をひっかけています。興味のある方はYouTubeで検索してみてください。

変わらないでいいんだよ Don't Go Changing
ビリー・ジョエルの歌Just The Way You Are(邦題「素顔のままで」)の出だしの歌詞

クロスロード・ブルース Cross Roads Blues
伝説的なブルースシンガー、ロバート・ジョンソンの同名曲(Cross Road Blues またはCrossroads)にかけて、この項の色は十字路(Cross Road)にたってどちらに行くべきか迷う色であることを示唆している

オキサイドの明るい面 The Bright Side of Oxides
モンティーパイソンが歌ったAlways look on the bright side of lifeにかけている。現在はサッカー試合などで歌われることがある

わたしだけのビスマス Ain't Nobody's Bismuth
ブルースのスタンダード曲といわれる、Ain't Nobody's Businessにかけた表題。"T ain't nobody's business if I do":誰にも関係ない、自分だけのこと、自分流でやる、というように解釈できる(黒人英語ではしばしば二重否定文が単純否定を意味する)。

ロイヤルファミリー Royhal Family
音楽とは関係ないが、鮮やかで耐久性のあるパイロールレッドの色を英国王室の近衛兵などの服の色にひっかけている

黒く塗る? Paint It Black?
ローリング・ストーンズの曲Paint It Black、邦題「黒くぬれ」

白色光/白熱 White Light/White Heat
アメリカのロックバンド、Velvet Undergrouondの曲で、アルバム・タイトルにもなっている

クレイジーダイアモンド Shine On You, Crazy Dianmond
ピンクフロイドの同名曲にかけて、キラキラ光るマイカの干渉色を表している

参考資料:
 ・1) spinoff.nasa.gov/spinoff2003/er_4.html 
 ・2) pcimag.com/articles/a-comprehensive-understanding-of-tio2-pigment-durability 
 ・注1) lbl.gov/Science-Articles/Archive/heat-islands-and-roof-color.html アクセス日:2014年1月6日


Golden Artist Colors社


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