新製品ハイフローアクリリックス

By Sarah Sands

※本製品は国内発売未定です。予めご了承願います。 



    
カナダ人の画家David Doodyはハイフローアクリリックスの多用途性を活かし、さまざまな手法と道具を自在に使ってミクストメディア作品を制作しています。

重要なことは、水への恐れ、浮遊の芸術、サイズが問題であるという事実であり、そこから先は単に文脈の問題です。こちらへ行くと真夏のプールパーティーとマジックショーのお話になり、あちらへ行くと顔料粒子が流体絵具に姿を変える世界に辿りつくでしょう。皆さんをその方向に導こうとしている以上、少し説明しなければなりません。

チャンス

ほとんどの人にとって、流体絵具とエアブラシ絵具と液体インクの世界は連続した世界であり、その境界は曖昧でファジーなものでしかないでしょう。結局のところ、あるグループが終わり、別のグループが始まる地点はどこなのでしょう?同じ色であってもほんの少し調整するだけで、筆から流れ落ちたり、空気中に噴霧されることもあれば、マーカー先端の高密度フェルトから押し出されたり、書道家の筆先のわずかな隙間から滑り出ることもあるでしょう。ある時は大量に注ぎ込まれる絵具も、次にはきわめて繊細で精密なマーキングに使用されるかもしれません。この驚くほど多様な用途に直面すると、その都度異なる製品に手を伸ばす画家が多いのも無理はありません。しかしアクリル絵具は常に、形を変えるもの、必要とされるいかなる特性も呈することのできるほぼ変幻自在な物質というIDを持っていましたので、こうしたさまざまな仕事すべてを完璧に均衡させた魔法のような中立的状態を創造したいという希望は常にありました。

なぜハイフローアクリリックスなのか?

ハイフローアクリリックス(HFA)はエアブラシカラー(国内未発売)の代替品になりつつありますが、単に製品ラインの作り直しや微調整ではありません。HFAは、異なる複数の樹脂(バインダー)とより広範な顔料を使用した全く新しい製法に基づきゼロから作った製品で、はるかに広範な用途に使うことができます。同時に、大半の色に関し、画家がエアブラシカラーの使用時に頼りにしていた優れたエアブラシ性能を維持するために注意を払いました。とは言え、新色のうち、本物の酸化鉄や雲母を主成分とするパール色など、かなり大きな顔料粒子を使う色を開拓しようとするときは、サイズや技法に合わせて一定の調整が必要になるかもしれません。詳しい情報については、本号のハイフローの塗付に関する記事とホームページのTech Sheetをご参照ください。

課題

ハイフローアクリリックスを作る際の最大の課題は、このような流体システムにおいて分散を最大化し、顔料を安定化させることでした。顔料ごとに独自の難題が生まれ、配合時に独自にバランスを取る必要がありました。しかし、基本配合を決定した後も、可能な限り最高水準で性能を発揮できるようにするために、一連の品質管理と塗付試験に合格する必要がありました。10~15回も試験を繰り返した結果、やっと要件を満たすことができたという例も珍しくはありませんでした。

  典型的顔料 比重  
 キナクリドン/フタロシアニン   ~1.5
 ウルトラマリンブルー  2.3
 ローシエナ  3.0
 チタニウムホワイト  4.0
 レッドアイアンオキサイド   5.0
湿潤

多くの人にとって最初のハードルは驚きとして生じることが多いかもしれません。水性システムで作業をすると、ある時点で顔料を湿らせる必要が生じます。当然なことだと思われます。驚くべきことは、こうした顔料のどれほど多くが疎水性であるか、すなわち文字通り水を嫌い、恐れているかということです。悪夢リストの一番が溺死であると言ってもよいほどです。これを克服するために、湿潤剤と界面活性剤を使用して水の表面張力を下げ、一種の仲介者の役目を果たさせます。分子の一端は顔料の表面に引っ張られ、もう一端は顔料を取り巻く水世界に向かって外側に引っ張られます。その結果、水性樹脂溶液は顔料表面を流れやすくなり、(顔料周囲の)空気を追い出します。これが「湿潤」と呼ばれる過程です。

分裂は困難

最初の湿潤の後、顔料は樹脂溶液の中で十分に分散する必要があります。顔料が最も小さい一次粒子の大きさで存在することは実際には滅多にありません。なぜなら分子間の極端に強い力により顔料はさまざまな方法で互いに密着し、まず凝集と呼ばれる強固に結合された粒子の塊を形成し、次に団粒と呼ばれるより大きく目の粗い塊の構成要素を形成するからです。こうした集団化をバラバラにするには、ペイントミキサーやペイントミルの強力なせん断力が必要です。こうすると顔料は樹脂溶液の中で均等に分散し、着色力は高まります。しかし、顔料の再凝集や、さらには互いに衝突して底に硬い層を形成することを避ける方法を見つける必要があります。

安定化

上図:静電的安定化
下図:立体安定化



常に水より重い粒子を、浮遊した状態で絶対に容器の底に衝突しない状態にするのは、奇跡のようなものです。使用する顔料の重量が同容量の水の1.5~5倍である場合はまさにその通りで、これは密度が1.5~5倍ということと同じです。この数字は物質の比重といわれる比率です。

まだ不十分だと言わんばかりに顔料は互いに衝突し続け、軟凝集と呼ばれるプロセスで結合する傾向が強くあります。その後こうしたグループは重量を増し、やがて浮遊することも下方へ流れることもできなくなります。その発生過程をコントロールすれば、絵具が遊離した結合の弱い塊を確実に形成することができます。その塊は、分離して滑らかで均質の溶液に戻りやすくなります。使う前に都度「絵具をよく振ってください」とお願いするのは基本的にこの理由によるものです。

顔料を分離させて安定化する方法は一般的に2つの方法に基づきます。1つは静電的方法であり、粒子は同じ電荷(正または負)に帯電した層に取り囲まれているため、磁石のように反発し合います。もう1つは立体的方法と呼ばれており、ポリマーを加える方法で、一端が粒子の表面に引き付けられ、もう一端が周辺の樹脂溶液中に枝分かれします。ポリマーの構造は、同様に処理された粒子と近づくとクッションやバリアとなるように構成されます。フープスカート(中世の大きく膨らんだスカート)をはいた女性のグループがエレベーターに押し込まれているところを想像してください。たとえ親友でもそれ以上近づくことは難しいでしょうし、抱擁はなおさらです。水性システムでは、同時に両方の手法を使って、電子的方法と立体的方法を組み合わせることが一般的で、私達も同様にしています。

 
ハイフローアクリリックスは、替え芯型マーカーで描いた絵も含め、広範な用途に使える配合になっています。マーカーの空容器は大きさも先端も多様ですが、ハイフローアクリリックスを入れることができます。マーカー容器には鉄球またはバランダム(セラミック製の混合ボウル)を必ず入れてください。絵具を振って撹拌するのに役立つでしょう。

小の意味する大きさ

重量と引力が大きな課題となる一方で、粒子のサイズそのものも性能と製法に影響を及ぼす有力な物理的特徴の一つといえるでしょう。使用した顔料は、一次粒子の大きさが0.1ミクロン以下で凝集粒子が最大12.5ミクロンのカーボンブラックや有機顔料(フタロシアニンやキナクリドンなど)から、一次粒子の大きさが1~5ミクロンで凝集粒子が最大25ミクロンの天然酸化鉄や合成酸化鉄、最終的には最大で60ミクロンもある雲母を主成分とするパール色まで、さまざまです。その数値をあてはめると、人間に見える最も小さい粒子は40ミクロンです。ちなみに人間の髪は幅50~100ミクロンです。

顔料が小さくなればなるほど、体積と質量に対する表面積の比率は劇的に増加します。たとえば、1立方フィートの大理石の表面積は6平方フィートです。それを4等分すると(すなわち3立方インチ)、表面積は24平方フィート、すなわち総体積は変わらないのに表面積は4倍になります。粉末になるまでこの工程を繰り返し、処理すべき表面積が数百万平方フィートになった時点で文字通り終了します。それらの表面すべてを湿らせるために必要な樹脂の量が増えるにつれ、上に述べた界面活性剤など、これらの粒子の表面と相互作用、あるいは吸着するさまざまな材料を選択しバランスを取ることは、これまで以上に重要な部分になります。

 左図:1立方フィートの表面積は6平方フィートである。
 中央図:4等分すると、表面積は12平方フィート、すなわち2倍になる。
 右図:更に4等分すると、表面積は24平方フィートになるが、総体積は同じである。

フローとともに歩む

舞台裏でのすべての作業や、すべての試みと微調整が真に目指したことはただ一つ、すなわち、単にさまざまな道具や塗り方によるのではなく、描画やドローイングやスプレーの境界を超え、苦もなく流れ、性能を発揮する一連の色を作ることでした。それにより、製品の利点や当社の他の製品との互換性はもとより、インクとエアブラシカラーの世界にアクリルシステムの耐久性がもたらされます。上記の利点すべてを考慮すると、ハイフローアクリリックスは、間違いなく新たな表現の可能性を作り出す新製品と言えるでしょう。

詳しい情報を知りたい方や新製品ハイフローアクリリックスの映像を見たい方は下記URL(英文)をご参照ください。www.goldenpaints.com/highflow.




 
Golden Artist Colors社


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