4つの新たな実験的製品

By Scott Bennett

以下の製品は国内発売は未定であることを予めご了承願います

画家なら誰でもすぐに気づくことですが、黒は黒ではありません。あらゆる色と同様に、黒というのはさまざまな色を説明するために使う一般用語です。当社のヘビーボディアクリリックス、フルイドアクリリックス、オープンアクリリックスには、カーボンブラック、マースブラック、ボーンブラックという3種類の黒があります。この3色にはすべてブラックという名前がついていますが、異なる方法で製造され、化学的性質も異なり、アンダートーンもまったく異なります。カーボンブラックの顔料は通常、天然ガスの部分的燃焼から形成され、ほぼ純粋な炭素の形をしています。当社の黒の中で最も強く、やや冷たいアンダートーンです。他方、ボーンブラックは動物の骨の燃焼から形成され、不純物の影響でやや暖かみのあるアンダートーンで、黒としては最も半透明です。マースブラックは合成酸化鉄で、最も温かく、アンダートーンは茶色がかっています。

描画中に濃い色が必要になることや、表面や空間を脳が「黒」だと認識することはよくあります。もちろん、上記の3種類の黒のどれかを選ぶこともできますし、キナクリドンマゼンタやフタログリーン(ブルーシェード)などの補色を混ぜることもでき、それによりある種の有色系の黒(クロマチックブラック)ができるため、マゼンタやグリーンの傾向を出すために調整することもできます。新たな4種類の「実験的」クロマチックブラックを作ったのはそうした調整を行うためでした。これらの実験的絵具の出発点はすべてカーボンブラックで、そこに半透明の有機顔料を少し加えることで、微妙にある色相への傾向を出すことができます。多くの定番色と同様、増量剤もツヤ消し剤も加えていないため、乾燥した表面は顔料分によって光沢に自然な差が生じます。クロマチックブラックブルーとクロマチックブラックグリーンはいずれも、他の3種類のブラックより少しツヤがあります。後者はよりサテンやセミグロスの面を持つ傾向にあります。
 

  4種類のクロマチックブラック:下から上へ、薄塗り、ウォッシュ、グレーズにしたときのアンダートーン


クロマチックブラックレッド(CBR)とクロマチックブラックイエロー(CBY)

この2色は温かみのあるクロマチックブラックであり、比較基準として使用しているカーボンブラックより明度が若干高く見えます。しかし、並べたときに目に見える違いのすべてとは言わないまでも大部分を作っているのは色や色相の違いです。CBRとCBYはどちらもマストーンはよく似ていて、微かに暖かみがあり、茶色っぽいと言ってもいいほどです。絵具を薄く広げ、水を加えてウォッシュにするか、メディウムを加えてグレーズにしたときにのみ、暗闇に潜むはっきりした色が見えます。CBRはアンダートーンが最も暖かく見える色ですが、CBYはややサップグリーンを帯びており、冷たく感じられます。CBRはナフソルレッドライトを使用しており、CBYはニッケルアゾイエローを含んでいます。

クロマチックブラックブルー(CBB)とクロマチックブラックグリーン(CBG)

CBBとCBGはどちらも、レッドブラックとイエローブラックより明度が低く、CBBはすべての中で最も明度が低い色で、実際にカーボンブラックより明度が低いです。どちらも寒色ですが、ブルーは最も冷たい色です。ペイニーズグレーはカーボンブラックとウルトラマリンブルーでできているため、一種のクロマチックブラックと考えられますが、顔料の比率は青の要素に大きく傾いているためアンダートーンは特徴的な青になっており、マストーンははっきり青だとわかります。CBBもカーボンブラックに青の顔料を混ぜた色で、アンダートーンの青はあまりめだたず、中立的な色で、マストーンは濃いため、非常に冷たく、濃く、豊かな黒に見えます。使用した青色顔料はアンスラキノンブルーで、これは非常に濃く赤みがかった青です。クロマチックブラックグリーンはこのラインではCBBに次いで2番目に明度が低く、マストーンはやや暖かく見えます。フタログリーン(イエローシェード)を加えて緑に着色しているため、とても冷たいカーボンブラックから少しクールダウンしています。

これらのクロマチックブラックは、暗くても冷たい黒よりは色を感じさせる背景色を塗りたいと思う時にとても有効かもしれません。もちろん、白と混ぜてクロマチックグレーを無限に作ることもできますし、メディウムに混ぜて半透明なクロマチックグレーのグレーズを作ることもできます。そのグレーズにイリデッセントカラーをほんの少し加えるとどうなるか確かめてみてください。確かに、マネなら濃いボーンブラックの作品を色として制作することができましたが、ほとんどの場合、特定のクロマチックブラックが必要です。それがここにあり、あなたを待っています。暗闇を恐れないでください。

クリアポアリングメディウム(シン)
クリアポアリングメディウム(シック)

ここ10年ほど、テクニカルサポートサービス部では、大雑把にいうとアクリル絵画表面に「樹脂のような外観」を作る方法に関するお決まりの質問に対応してきました。きっかけは、画家が絵画に工業グレードの2液性エポキシ樹脂を使ったことでした。この種のエポキシ樹脂は通常、非常に硬く、柔軟性に欠けるため、硬質のパネルに使用するのが一般的でした。試験では、紫外線にさらされると黄ばむことがわかりましたし、化合物は毒性が高いことで知られています。新たなクリアポアリングメディウムはエポキシ樹脂の硬直性と毒性や、過去のアクリル製ポアリングメディウムすべての常識を覆しました。これらは液状でも実にクリアです。

現在提供できるのは、シン(低粘度)とシック(高粘度)の2種類です。どちらも粘性があり、レベリングがうまくできます。つまり、糖蜜やハチミツのようにシロップのような粘度があるため、手を離れると道具でつけた跡形が徐々に消える傾向にあります。一見すると、どちらも同じような粘度に見えるかもしれませんが、それぞれをチューブから水たまり状に絞り出し、パネルを傾けると、シンはシックの2倍の速さで流れ落ちるでしょう。シックを使うといわゆる「パンケーキ」状に絞り出すことができますが、シンは流れ出て薄い膜を作る傾向があるため、作品の面全体に比較的薄く、透明で滑らかなツヤのあるコーティングが必要な場合に塗るのが適していると思われます。どちらも泡を消す性質があるため、シンは操作を最小限にとどめて容器から直接出せば、ほとんど泡は出ません。今回、これらのメディウムはツヤのある状態で提供されます。
 

上左:クリアポアリングメディウム(シック)、 上右:クリアポアリングメディウム(シン)
下左:パネルを傾けたときのメディウムの流れ落ちる様子で粘度の違いがわかる。 
下右:クリアポアリングメディウムの上にフルイドアクリリックスを落とすと材料の透明度がわかる。

これらのクリアポアリングメディウムは水性アクリルウレタンで、湿った状態では半透明ですが、乾燥すると透明で柔軟な膜になります。これは、化学反応により硬化させる2液性エポキシの触媒硬化プロセスとは全く異なり、水の蒸発によるため、当社のあらゆる水性アクリル絵具やメディウムと融和します。

これらのメディウムに関し、全製品と同じレベルの紫外線テストを行ったところ、上々の結果が得られました。当社のほとんどのメディウムやゲルメディウムと比べてほとんど変化はなく、透明度もかなり保ちました。乾燥した膜は当社の標準的な絵具やメディウムとほぼ同レベルの柔軟性がありますが、テストではさらに高いブロック耐性(耐粘着性)を示しました。他の面に押し付けるとツヤ出し写真のように跡形が残りますが、標準的なアクリル製品ほどではありません。このような属性は作品のトップコートとして有益です。考えられる楽しみな用途の一つは、物理的耐性と柔軟性を兼ね備えることが重要なフロアクロス用です。ただしポリウレタンのような物理的硬度はないため機能性の必要なオブジェクトのトップコートには使用すべきでないことにご注意ください。

芸術品に使えるグレードで、透明でツヤがあり、粘着性がなく、滑らかなコーティングがアクリル絵画に望まれる場合、これらのクリアポアリングメディウムが有益です。フルイドやヘビーボディと混ぜて絵具として使うこともできますし、液状でも半透明性が高いため、標準的なアクリルメディウムでは使えない技法も可能になります。これで作業をすると何層もの絵具が液体のメディウムに入り込むのがわかるでしょう。多くの画家にとって、これが最も楽しみな属性かもしれません。6月以降、専門店でこれらの製品を探してみてください(国内発売は未定)。

アクリル絵画の梱包、保管、出荷の際には、表面に何も接触させないことを推奨します。アクリル絵画の適切な取り扱いに関する詳細については、Just Paintの過去の号とカナダ修復協会の下記サイトをご参照ください。

アクリル絵画の安全な取り扱いと輸送
? カナダ修復協会-絵画を出荷する際の包装方法
http://www.cci-icc.gc.ca/publications/notes/10-16-eng.aspx

通常のアクリルメディウムの経年変化に関する詳細については、Just Paintの下記の記事をご参照ください。

アクリル・パティナ(古色)の定義
? 透明か薄色のテクスチャー、絵具層、グレーズに関するガイドライン(英文)
http://www.goldenpaints.com/technicaldata/clear_layers.php



シックセルフレベリングゲルをパレットナイフでかき回すと、数分後には緩んで道具の跡形がすべて消える。

シックセルフレベリングゲル(TSLG)
 
シックセルフレベルングゲルを使うとドライブラシ技法もスグラッフィート技法も可能になる。
このゲルメディウムには「驚異の溶けるゲル」という別名をつけてもよかったくらいです。その粘度と作業特性を説明する最も簡単な方法は、コーンスターチと水を混ぜた時の反応や、Silly PuttyRの静止時の流れ方や、突然衝撃を受けたり、引き離されたりしたときの壊れ方と比べることです。このように反応する材料を応力増粘性流体(シアシッキングフルーイド)と呼びます。静止時には滑らかな表面を持つ流動性の高い材料のように思えますが、容器を完全にひっくり返してもゲルはほとんど動きません。容器を少し動かすとゲルを注ぎ出すことができますが、ドロリと長く、糸を引くような塊で出てきます。このような特徴があるため、最初は少し使いにくいと思いますが、同時に可能性の世界も広がります。

パレットナイフや他のツールを滑らかな面に浸してかき回すと、すぐに硬くなり、突然の粘度の変化によってきめの粗い「カテッジチーズ」のようなテクスチャーに変わります。道具の跡形が残るのは最初のごく短時間ですが、ゲルが平らになり始めるとすぐに消滅し始めます。数分後、ほとんどのテクスチャーや道具の跡形は完全に消えてしまうでしょう。

興味深い技法として、TSLGと少量のフルイドアクリリックスまたはヘビーボディの混合物を塗り広げる技法があります。混合物を画面上で動かすと、べたつくため、粒状に見えるドライブラシの効果とスグラフィート(引っかき技法)の痕を簡単に作ることができます。動きを止めて、混合物を緩めると、ドロッとした部分が落ち着き、滑らかで丸みを帯びたテクスチャーが生まれますが、ドライブラシとスグラフィートの痕は残ります。他のメディウムや絵具では得難い効果です。

このゲルは、クリアポアリングメディウムと異なり、他のほとんどの水性アクリルメディウムと同様に液状では真っ白で不透明ですが、乾燥すると、ツヤが出て半透明になります。上記の「アクリル・パティナ」の記事に記載されるように、標準的なすべてのゲルやメディウムと同じく経年により変色する可能性があります。

開発したすべての実験的製品に関するご意見をお待ちしております。テクニカルサポートサービス607-847-6154にお電話をください。

Golden Artist Colors社


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