その色に何が起こったか?!

By Dana Rice

色の墓地

墓地は、歴史と想像力と物語に満ちた魅力的な場所なのかもしれません。ブードゥークイーン、マリー・ラヴューの墓があるニューオーリンズのセントルイス墓地や、複製の美術品と有名な建物が並ぶロサンゼルスのフォレストローン墓地のように。

ゴールデン社にもカラーグレイブヤードと呼ぶ一種の墓地があります。ここは、何らかの理由で別れを告げなければならなかった色やゲルやテクスチャーの行き場であると同時に、折に触れて皆が集まり、失った色の思い出にふけり、歴史を口頭で伝承する隠喩的な場所でもあります。

カラーグレイブヤードに最近仲間入りしたのは愛しのコバルトティールでした。ゴールデン社認定ワーキングアーティストプログラムのディレクターであるパティ・ブレイディのおかげで有名になった単一顔料による色でしたが、サプライヤが顔料の生産を中止したのです。コバルトティールの顔料を提供するサプライヤは他にもありますが、試したサンプルはどれも、失いつつあった明るいくっきりした色とは一致しませんでした。

そこで選択の必要に迫られました。愛する色を失いつつあることが分かった時、オリジナルに及ばないが、他の単一顔料によるコバルトティールでいくのか?それとも、この美しい色を手放し、代わりにブレンドを作り、直接の代替品にならないことを承知のうえでコバルトティールの色空間をできる限り近い色で達成しようとするのか?

この時はブレンドの線で行くことを選択しました。しかし、将来、当社の基準を満たし、かつこの色を切望するすべてのアーティストの基準を満たす真のコバルトティールを見つけることができるという希望は持っています。

手放しがたかった色といえば、オリジナルのキナクリドンゴールドです。この色には熱心なファンがいたのですが、メーカーの製造中止により変更せざるをえなかったのです。キナクリドンゴールドを最初に市販したのは当社であり、この色はすぐに当社の特徴的な色になりました。このときも、色空間を完全に放棄する気になれなかったため、キナクリドンゴールドの引退と同時にキナクリドン/ニッケルアゾゴールドというブレンドを開発しました。この場合、オリジナルと比較すると、新色の方が少し赤みの強い色調で、半透明のツヤは全く同じレベルではありませんでした。この色変更が起こったのは2004年のことで、多くのアーティストが折に触れてカラーグレイブヤードを訪れてはオリジナルのキナクリドンゴールドを我々とともに恋しがる一方、全く予想外のアーティスト達が当社の製品を手に取り、キナクリドン/ニッケルアゾゴールドの美しさに心を奪われ、このままの色を評価しています。下塗りに使うとツヤと温かみが増す素晴らしい色です。

さらに記憶をたどると、特徴的な色であるキナクリドンゴールドとまるで薄幸の恋人同士のような関係にある色がありました。ナフサマイドマルーンという色で、この深い透明感のある栗色はキナクリドンゴールドと組み合わせたときに素晴らしい効果を発揮しました。製造中止になったのは1997年で、そのときに顔料も入手不能になりましたので、この単一顔料の色を覚えているのは長年のユーザーだけでしょう。この色空間は何年も姿をくらましていましたが、2008年にパーマネントマルーンというブレンドが開発されました。スモーキーで赤みがかったバイオレットは、光沢が出ると濃いくすんだバラ色になり、乾燥すると光沢と半光沢の間くらいのツヤが出ます。

色に関して懐かしい思い出ばかりだと思われるかもしれませんが、時には別れを告げざるをえなかった製品もありました。その一つがガーネットゲルで、以前はファイン、コース、エクストラコースという3種類のキメがありました。ガーネットゲルはさまざまなグレードのガーネットサンドで作られており、これはサンドブラストの業界で最も一般的に使用される硬質の研磨材です。ガーネットサンドは今でも市場で入手できますが、2006年にサプライヤから一定品質の原材料を入手することが困難になり始めました。製造バッチごとに色や組成のばらつきが著しく大きくなってきたため、2008年にガーネットゲルを3種類とも製造中止にするというつらい決断をくだしました。

ガーネットゲルが製造中止になった時点でこの製品の代替品はありませんが、テクニカルサポートサービスチームはテクスチャーの質を達成する代替手段を考え、提案しました。クリアーグラニュアーゲルを使用してガーネットゲル(コース)のテクスチャーを出すとか、コースアルミナとレギュラーゲル(グロス)を1対1でブレンドし、ガーネットゲル(ファイン)でかつて得られていた種類のキメを出すなどです。

カスタムラボ・ブリッジ

外からはそう見えないかもしれませんが、プロレベルの顔料の世界は変動の激しい世界であり、これまで数々の色に別れを告げなければならなかったことからもわかるように、絶え間なく変化が生じています。原材料の変更や廃止に関する悪い情報を真っ先に入手するのはいつもラボの人間ですが、新製品の構想をいち早くもたらしてくれるのもいつも彼らです。顔料や材料で新しいものや珍しいものはないかと常にアンテナを張り、定期的に試用品としてサンプルを持ってきてくれます。既存顔料のバージョンアップであることもあれば、まったく新しい別物であることもよくあります。長年の間にどれほど多くのゲルやペーストが開発されたことでしょう。独自カラーの中にもそういうものがあります。

そのプロセスを少し説明すると、毎年夏になると、ラボが前年に見つけた材料に基づき、ごく少量の新製品やユニークな製品を作ります。マーケティングとテクニカルサポートのメンバーが集まり、パレットナイフと筆を取り出し、実際に使いながら話し合います。すぐにワーッと歓声があがる製品もありますし、これはダメだとなる製品もありますが、それでも「面白いね。濃くしたり、薄くしたり、もっと透明度を下げたりできるかな」という意見が出たり、材料に対する関心を潜在的に高めるような方向性がいくつか提案されるものもあります。この最初のレビューに合格した製品のうちどれを、2月の大学との年次会議で検討するかを決定します。この会議はかねてより当社の実験的製品のいくつかをサンプルとして選ぶ場なのです。こうした製品に関する詳しい記事はいつも、Just Paintの冬号に掲載されています。

しかし、製品が実際に工場の外で日の目を見る前に、安定性があり、当社の標準製品と併用可能であることを保証するために厳しい一連のテスト基準に合格し、かつ健康安全要件を満たさなければなりません。数年前、誰もが好む美しい玉虫色があったのですが、製造後、保管安定性試験を行ったところ、時間が経つと文字通り破裂するだろうということがわかりました。興味深い効果だと思われますが、不合格でした。

実験的製品に関して受け取ったフィードバックに基づき、新製品開発工程に進めることも進めないこともあります。最近発売したゲルとペーストのうち実験的製品としてスタートしたものには、クラックルペースト、コースモデリングペースト、ファイバーペースト、グラスビーズゲルなどがあります。

アーティストの創造力

ラボは新製品が生まれる場所であるだけでなく、当社が採用する色の多くとテクスチャーの一部は、もとはと言えばアーティストの提案です。たとえば、オープンラインに新たに加わったオープンチタングリーンペールは、暖色であるチタンバフとバランスを取るための寒色を求める一部のアーティストの要望に基づいて作られたものでした。2~3年前、戸外の壁画に使用する条件にも耐える強い不透明な黄色が必要であるという話をアーティストから聞いた結果、ビスマスバナジウムイエローを採用したことがあります。

中央ニューヨークの冬の厳しい寒さは、少人数の仲間が時折集まり、かつて存在した色に関する話を一つ、二つ思い出し、語り合う機会が生まれる理由の一つでもあります。ある色やテクスチャーをカラーグレイブヤードに加えるという決断は決して軽々しくくだされるのではなく、どうしようもない状況による場合が多いのですが、そうした話を共有して回想し、アーティストの要望やラボでの発見から生まれる運命にある新たな可能性に期待することの大切さを噛み締めています。

※本記事にある製品には日本国内では販売されていない製品があることをと了承願います。



Golden Artist Colors社

戻る