バーチャルペイントミキサー:試行錯誤の長旅

By Christopher Farrell

記憶力のよい読者諸氏なら、この記事がJust Paint第21号のサラ・サンズによる「色の機微」、第26号の「色の範囲」に次ぐシリーズ3作目だと思われるかもしれません。バーチャルペイントミキサーの背景を理解するためにそのいずれも読む必要はありませんが、これらの記事と研究に触れれば、現在認識されていることの基礎を容易に理解することができるでしょう。

とは言え、バーチャルペイントミキサー[MXR]を体験することはこの記事を読むにあたり非常に有益だと思います。そこで是非、www.goldenMXR.comにアクセスし、この新ツールをお試しください。当社のウェブサイトにおける非常に有益なリソースになると思います。

MXR開発の関係者にとって、「長旅」という言葉は大げさではなくむしろ控えめな表現に思えるでしょう。ウェブコンテンツは無形である、これは現実です。したがって、人目を引くものが次々と瞬時に現れては、この普遍的意識に組み込まれるや否や、過去の技術やニュースや流行の闇へと雲散霧消していきます。持続するものは、構想、開発、実行、分析というサイクルを通じて走り続けることにより持続します。洗い、すすぎ、繰り返し。際限なく続くサイクルです。

これを読まれた方は、現段階におけるMXRそのものの欠点や不備に対し予防線を張っている、あるいは言い訳をしていると思われるかもしれません。しかし、このツールは未完成品である限りにおいてのみアーティストの役に立つものだと思います。この記事から他に何も得られなければ、まだ序章にすぎないということでしょう。

しかし、序章に関するこの疑問には個別の答えもあります:2010年11月

約2年前、社内のチームで会社のウェブサイトの現状について、またアーティストに最新情報を伝え、(最重要事項として)アーティストと真に連帯したいという希望について話し合いを始めました。

当社のサイトで最も閲覧されているページと検索されている用語を分析した結果、混色は強力なコンセプトであることがわかりました。その後、すぐに生じた議論は、なぜ混色がそれほど注目されたのか、どうすればアーティストが絵画に関する難易度の高い技術の一つである混色をマスターできるようお手伝いできるか、あるいは単にお客様が購入した絵具を活用できるようお手伝いできるかということでした。

絵画の初心者にとって、また経験者にとってさえ、混色力学は、黄色と青を混ぜると緑になるというような簡単なものとはいえません。その組み合わせが完璧に機能する時でさえ、比率の感覚に驚かされることがあります。大量の黄色にごくわずかなフタロブルーを加えるだけで濃緑色になるような場合です。

無機顔料と有機顔料に関する議論に対応できるのはきわめて忍耐強く意志の固い生徒だけでしょう。そうした用語の紛らわしい響きや、絵具の構成要素としての顔料の透明性、不透明性、着色力などの技術的性質がすべて、パレット上の現象に大きな影響を及ぼし、謎に包まれた混色の概念を包み込んでいます。しかし、手に入る色をすべて買う贅沢が許されたアーティストはほとんどいませんし、仮にすべての色を好きなように使えたとしても混色は発生します。

そこで必要になったのが絵具の混合をわかりやすく説明するツールでした。学習曲線を平坦化し、使用者にもっと自信を持って新色にチャレンジしてほしかったのです。必要であったもの、あるいは必要であると考えたものは、大量の絵具を浪費することなく多くの絵具を混ぜる方法でした。バーチャルペイントミキサーは明らかにそういうものだと思われ、インターネット上でこのコンセプトを試すことができるようにしようと考えました。

バーチャルペイントミキサーに関する重要な課題は、実際の絵具の力学を理解することです。絵具の色をウェブ上で効果的に表現することはかねてより難題でしたが(前回の私の記事をご参照ください)、このコンセプトでは、色そのものの見え方だけでなく、混ぜ合わせた時にその色が他の色に及ぼす影響を理解するという課題も加わります。これこそ、当社自慢の豊富なデータリソースの出る幕です。我々は自社の絵具を知り尽くしています。絵具に着色し、引き伸ばして、その透明度と不透明度、着色力、そして表面の反射性も測定しました。

この新たなツールは、青と黄色を混ぜると緑になることを説明するだけでなく、望む緑を出すためにはそれぞれどのくらい量が必要になるのかを説明する必要がありました。混色力学を構成する属性セットとして各色の位置づけを行い、比率を計算し、報告する必要があるでしょう。スタッフ一同頭を突き合わせてこの難題に取り組みつつ、長年考えてきたカラーマッチングのコンセプトを再検討しました。すなわち、RGBスペクトルのある点またはイメージの中のある点に一致する絵具の混合内容をリバースエンジニアリングするために、絵具の混色力学をコンピューター上での色表現に調整する必要がありました。

明確を期すると、平均的な読者にとってこれがプログラミングの大きな問題のように聞こえるか、ささいな問題のように聞こえるかはわかりませんが、これまでにない大きな計画のほんの一部であることに違いありません。

2009年に当社がヘビーボディ全色におけるティント5色とグレーズ4色の精査という組織的課題を経験したことを思い出してください。そのときの全データがバーチャルペイントミキサーの論理的出発点であるように思われます。そのデータを自分の研究に使ってもよいかと尋ねる社外の学者もいました。簡単であるとは決して思えませんでしたが、可能性は高いと思われました。ミキサーへの第一歩は、ティント・アンド・グレーズ・ポスターの各色を相互作用させた結果のナビゲーションにすぎませんでした。これは明らかにミキサーではありませんが、ウェブ上でより生産的に色の相互作用を実現する方法を考察することにつながりました。

ナビゲーションは構築し、通過すべき第一関門でした。インターネットで数々のカラーナビゲーションシステムを見て、いいと思いました。興味深く、魅力的で、とにかく素晴らしいものがたくさんありました。しかし、どれも限界があり、ほとんどの場合その理由は理論上のシステムであったということです。三次元のスペース(NASAのような品質を持つシステムも多かったため、スペースという言葉を使います)で色をナビゲートすることは直観的であるように思われますが、これは色や光の認知に有効であるに過ぎず、絵具という有形の世界や物理的特性が全く考慮されていません。こうした理論で減法混色力学を再現しても、着色力や不透明度や明度といった絵具の他の特性をすべて説明できるものを見つけることはできませんでした。

皮肉なことに、解決方法は、調査した理論的サンプルよりもはるかに簡単でなければならないでしょう。とても複雑な結果に向かって進んでいましたが、その結果に向かう道筋はずっと単純で直観的である必要があったのです。理論はさて置き、ひたすら塗ることにしました。アーティストがどのように(色ではなく)絵具を見つけ、製品と対話しているかを見てみましょう。カラーチャートと絵具のチューブはアーティストにとって実際にどこにでもあるコンセプトと考えられ、相互作用の基礎になりました。

ミキサーの中にあるのは色の銀河系に浮かぶ天体ではなく、絵具のチューブと大きな色見本です。パレットそのものは調整可能で、混ぜる色は、制作に使う製品ライン、あるいは混色セットのいずれかに含まれる少数の色に限定されています。その後すぐ、独自に作成したパレットの色も指定することができます。

ここでいったんストップしてください。冒頭で、記事の内容を掘り下げる前にwww.goldenMXR.comにアクセスし、MXRをチェックして試してくださいと書きました。実行しませんでしたね?ほんの数分しかかからないのでチェックしてみてください。きっと、そうしてよかったと思うはずです。そうすることで記事の残りの部分も説得力を増すでしょう。記事の残りを読みに戻って来ていただければの話ですが。

色をクリックし、続いてチューブをクリックしてください。(3本のチューブにそれぞれ使いたい色を指定出来ます:訳注)。キャップを左右にスライドさせると、混色時の各色の量を調整することができます。大きな色見本は混ぜた色とその色の5つのティント(ホワイトで薄めた色:チューブと色見本の間にあるTINTとある欄)を示します。“numeric”タブをクリックすると、RGBとL*a*bとCMYKにおける色の変換結果がわかり、あるいはその配合のいずれかから混色をリバースエンジニアリングすることができます。

たとえば出発点が画像、スケッチ、写真、その他の資料であれば、それをミキサーにアップロードし、混色用のサンプルにすることができます。ここでもパレットの色は限られているため、選ぶ色から混色を特定することができます。ベストの2色または単色をマッチさせることができます(少し時間はかかりますが)。

混色コンセプトが完全に形成され、プログラミングが開始されましたが、可能性の範囲は変化し、2011年の秋まで実質的に一定の進展を遂げました。

より基本的な部分では、混色に使える色の数を検討する必要があり、おそらく4~5色、あるいは6色の混色の可能性を考えました。ここでも計算の複雑さと混色の結果がこの機能のメリットを損なうように思われたため、混色の可能性を3色に制限し、その結果生じるティントを主要結果の隣に表示することにしました。このことは画像ツールの移動にも役立ちました。画像で素早く色を一致させたい人のためにいくつかの技術的パラメーターが必要になるからです。ある作品のためにパレットを作る人にとっては、混色を3色に制限する方が実用的です。

このプロジェクトのもう一つの重要な特徴は、その社会的・商業的性質です。美術界の育成は当社ウェブサイトの目的の一つです。我々は、アーティストにツールを通じて協力し、仲間や地元の画材店と混色を共有する機会を提供したいと考えています。ユーザーが混色を共有または印刷する時に得られる“Report”にはすべての色や混色比率だけでなく、当社の3つの主要カラーラインそれぞれにおけるその色に対応する品番が記載されます。”save”機能は混色の主要結果だけでなく、ユーザーがブラウザから戻ることのできるブックマーク付きリンクの下に保存したすべての混色を取り込みます。

バーチャルペイントミキサーを取引先の小売業者に見せる機会があり、各業者のウェブサイトに掲載できるようにしてほしいという要望を数多く受けました。したがって、このツールを相当数の場所でリソースとして見ることができるようになるかもしれません。

これを書いている段階でかなりのユーザーアンケートが回収されており、現在体験できる公開バージョンの改良に役立てることができます。バーチャルペイントミキサーのおかげではっきりわかったことがあります。変化は絶えず発生し、このツールの改善を止めることはおそらくないでしょう。アーティストによる構想の実現をお手伝いする新たなツールの開発を止めることがないのと同様に。

Golden Artist Colors社


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