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乾性油の軽重を問う

 

サラ・サンズ


ここ数日、絵画が燃えています。文字通りの意味ではありません-炎や煙が空中に漂っているわけではないし、誰かが消火器をさがして走り回っているわけでもありません。むしろ、ゆっくり、画面の中でほとんど分からなくらいに煮えています。「炎のない燃焼」とよくいわれる、あるいはより専門的にいえば「自動酸化」という形のプロセスで不飽和脂肪酸が酸素と反応しているのです。この酸素が吸収されると、反応性の高いフリーラジカルが、不安定ですぐに分解して大抵は一連の揮発成分となる過酸化水素化合物とともに生成します。このプロセスから、高分子鎖間に架橋が起こって結合し、絡み合った長い紐のような密度のあるネットワークが形成されていきます。その結果、顔料の間を流れていた油はまず粘度が上昇し、続いてゲル化し、最後は触っても乾いていると感じられるようになります。しかし、その過程で大量の酸素を吸収しているため油の体積は増加しますが、副産物の揮発成分が徐々に放散されて、やがて見かけ上の平衡状態に到達します。最終的には炎は鎮火し、もっとゆっくりと何世紀もかけて変形し変化していく過程に取って代わられ、当初は柔軟だった塗膜は、やがて硬くて脆くなっていきます。

このプロセスの詳細は多くの出版物で述べられているので、本稿の目的としては、油絵具は蒸発によって「乾燥」するのではなく、酸化と一連の化学反応を経ることで硬い塗膜ができることを知るだけで十分です。このプロセスを確認するには、単に油絵具のサンプルを時間に沿って計量していくことで、吸収された酸素の量を判断することができます。(Sabin, 1910; Tumosa, Mecklenburg, 2003) 酸素が多いほど架橋が進んでいます。以下のページでは、当社で昨年、実施した長時間試験による結果の一部を示しています。これから分かったのは重量増加はかなり大きく、亜麻仁油は徐々に穏やかなレベルに治まるまでに15-20%の重量増があります。詳細を調べていくと、乾燥速度全体に様々な要因が影響することが分かってきます。しかしその道に進む前に、図表などを含む基礎知識に触れることも大切でしょう。

 
酸素にさらされると塗膜となる様々な植物油は、大抵はオレイン酸、リノール酸、リノレン酸という3種類の不飽和脂肪酸のパーセントが高くなっています。それぞれがどのくらい不飽和かということは、架橋性がある二重結合と呼ばれる反応性の部分の数で判断します。オレイン酸は二重結合が一つで反応性が一番低く、リノール酸は二個、リノレン酸は三個持っています。反応部分が多いほど反応性が高く、結果として耐久性があり乾燥が速い架橋した塗膜になります。歴史的に、亜麻仁油、クルミ油、ポピー油が時代によって使い分けられましたが、この中でもリノレン酸の量が最も多く強くて乾燥の速い塗膜を作る亜麻仁油が最も広く使われてきたのは明らかです。より最近では、色が薄く黄変しにくいサフラワー油が、特に白色系において使われるようになってきました。しかしこうした性能は、リノレン酸を全く含まないため、より弱くて乾燥が遅い塗膜という犠牲を伴います。


こうした基本的な違いの他に、油がどのように加工されたかの違いもあるでしょう。最もよく見かけるのは、アルカリ精製亜麻仁油、冷圧亜麻仁油、スタンド油の3種類でしょう。アルカリ精製は、熱と溶剤を使って抽出し、さらにアルカリ薬剤を使って不純物を取り除きます。冷圧はその名が示すように、圧力だけで抽出し、機械的ろ過と常温加工法で不純物を除去します。スタンド油はより正確にいえば、熱重合あるいは加熱処理であり、亜麻仁油を酸素のない状態で非常に高い温度(~300C/~570F)にすることで作ります。これにより酸化することなく重合が起こり、特徴である粘性と流動性が得られます。スタンド油は、反応性の部分がずっと少ないので、通常の亜麻仁油より乾燥は遅く、経時による黄変も少なくなります。


顔料 

 
乾性油に対する顔料の影響は非常に幅広く複雑で、ここで詳細を述べることはできませんが、いくつかを挙げましょう。第一は不純物で、これは乾燥を促進する触媒として働き、バーントアンバーやローアンバーなどの多くの天然顔料や、コバルトや鉛などの反応性金属から作られた顔料に見られます。一方で遅延効果のある顔料もあり、フェノール化合物など酸化抑制機能を含むものに見られ、カーボンブラックや真正のファンダイクブラウンなどがあります。それぞれの顔料は吸油量という指標を持ちます。これは一定量の顔料を絵具として使えるペースト状にするために必要な油の量です。他の条件が同じ場合、油がたくさん必要であるほど乾燥は遅くなります。しかし顔料分が高いほど乾燥は速くなると、単純に考えてはいけません。総体的な性質はとても複雑で、予想に反することもよくあることです。例えばある出版された研究では、1ガロンの亜麻仁油に酸化チタン(チタニウムホワイト)を多く入れるほど乾燥が遅くなるということです。(Nicholson, 1939) 事実、最も乾燥が速かったのは、顔料を全く加えない油そのものでした。直感と相反するこのことをどう説明したらよいでしょう。確かに、酸化チタンのように不透明な顔料は、塗膜に浸透する光を遮り、硬化過程における光酸化を妨げます。加えて、固形分があると、塗膜全体に酸素が広がることを妨げます。これだけでは十分ではないとでもいうように、研究は、粒子形状、粒度分布、あるいは油と顔料が混合されてからの時間なども影響すると指摘しています。(Simunkova, et al, 1985; Rasti, Scott, 1980)

基底材と下地 

 
基底材はこの研究の中心ではありませんし、試験では不活性なポリエステルシートやコート紙を使っているのですが、乾燥工程への影響は確かにあります。吸収性のある表面や下塗り材は油を引き込み、絵具の油分を減らし乾燥を速めますし、金属基底材や鉛下地では金属イオンが塗られた絵具に溶け込んで触媒として酸化を速めます。そして、薄くて透明性の塗膜では、下地面の色さえも入射光を吸収したり塗膜内へ散乱したりして、十分に分かるほどの影響を与えることがあります。とにかく、これらの見過ごされた要因は今後の試験が望まれます。

ドライヤー(乾燥剤)


油絵具では、ドライヤーは重金属塩が普通で、乾燥工程の触媒として働き、基本的な化学反応を促進したり最適化します。例えばコバルトなどは、塗膜と空気の界面での酸化を促進するので、表面ドライヤーとされ、他のマンガンなどは中庸なもので表面酸化とともに内部にも働き、全体の重合を助けます。ジルコンやカルシウムなどの補助ドライヤーは、先に述べたドライヤーと組み合わせて総合的な性能を改善しますが、単体ではほとんどあるいはまったく効果がありません。多くのアーティストは、ゆっくりした硬化プロセスを速めるために、ドライヤーを自由に使いたがりますが、使いすぎは、塗膜が脆くなったりシワなどの欠陥を招きかねません。

現在の試験


油絵具の塗膜の乾燥過程の研究のため、最初は顔料はルチル型酸化チタンのみとし、成分を基本的な1つか2つのものから様々な成分のより複雑なものまでの一連の配合としました。テストサンプルは透明なポリエステルフィルムに、75ミクロンと250ミクロンの厚みにフィルムアプリケーターで塗付したものと、厚さ1.5mm、直径5cmの円形に塗付したものとしました。参考までにいいますと、標準的なコピー用紙は厚さ95ミクロンです。重量測定は、最初の週は毎日、その後の一カ月は週に5日、その後は週一回としました。温度、湿度の調整はしませんでしたが、湿度40-55%、温度21-24度の通常範囲でした。酸化チタンとの組合せによるサンプルセットの一つは、異なる油種との配合、サフラワー油、アルカリ精製亜麻仁油、冷圧亜麻仁油、低粘度スタンド油です。二番目のセットは、アルカリ精製亜麻仁油と酸化チタンの組合せに、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、蜜蝋、酸化亜鉛を別々に加えたものです。三番目のセットは、当社のウィリアムズバーグチタニウムホワイトをベースとし、ドライヤーを含まないもの、異なる二つの濃度のコバルト・マンガンドライヤーを含むものとしました。同時に、一年以上前に、100ミクロン、250ミクロン、1.5mmの厚さに塗付したものの初期の結果も比較しました。

試験結果


以下は、これまで述べた広範囲の試験のハイライトで、これらの試験は10年とまではいわなくとも今後数年以上は続けられるものです。データを理解するため、まず図表の説明から始めましょう。図1はアルカリ精製亜麻仁油と酸化チタンを練って250ミクロンに塗付したサンプルの経過日数による重量変化のパーセントです。このデータでは、全重量から、重量変化のない酸化チタンと下地のポリエステルフィルムの重量を差し引いています。

見て分かるように、最初の数日で大きな変化があり、この間に油はほぼ16%の重量増加があります。この点に到達するまでに絵具は指触乾燥(軽く触って乾いていると感じられる状態)まで表面が乾き始め、4-6日で最高点に達します。この重量変化と乾燥過程の関係は他の研究者からも報告されており、大雑把には油絵具が指触乾燥するとき重量も最大になるといえるでしょう。別の面からみると、これは酸素吸収が最大、すなわち架橋反応も最大である期間といえます。しかしながらこのような短期間のデータだけをみると、全体の機構については誤った考え方をする可能性もあります。最初の2カ月程度は13%で一定レベルにあり、絵具塗膜は安定しているように見えますが、1年以上のもっと長期間についてみていくとかなり異なってきます。

 


図1:アルカリ精製亜麻仁油で練ったチタニウムホワイト
厚さ250ミクロンでの重量変化(60日余り)


 

図2:ウィリアムスバーグ油絵具チタニウムホワイト
厚さ250ミクロンでの一年余りの重量変化


図2から分かるように、最初の数週間の劇的な上昇の後、重量は20%よりわずかに少ないレベルでしばらく安定するように見えますが、その後、継続している化学反応で生じる揮発性副産物が出ていくために、かなり一定割合で減少します。TumosaとMecklenburg (Tumosa, Mecklenburg, 2003)が示したように、油絵具塗膜は年月とともにこの減少は最終的にはかなりのレベルまでいきますが、完全に終了することはなく、数世紀後でさえも油塗膜はかなりダイナミックな素材なのです。グラフはまた、よく繰り返される「薄い膜であっても油絵はワニスがけするまえに6-12ヶ月は硬化期間を持つべきだ」というアドバイスを指示しています。その点に至る前にもちろん、塗膜は寸法変化だけでなく化学変化も起こし、どちらも結果的により長い鎖状高分子と揮発性生成物を生じさせます。

乾燥時間と油の種類


このプロセスを、異なる油と練った酸化チタンの絵具塗膜について拡張すると、明らかな相違を見出します。(図3)



図3:乾性油の種類別によるチタニウムホワイトの重量変化
:冷圧亜麻仁油
:アルカリ精製亜麻仁油
:スタンド油
:サフラワー油


アルカリ精製亜麻仁油と冷圧亜麻仁油はどちらも最も反応性があり、初期の数日間で劇的な重量増加を見せ、一定になる前に15-18%のピークを示します。より分かりやすい観点では、最大値になるまでの期間、より厚い表面皮膜を形成していき、グラフが一定になるにつれて指触乾燥状態になっていきます。反対にスタンド油では酸素吸収部がほとんどないために、重量増加は非常にゆるやかで、最大値の~8%に達するまでにほぼ50日を要します。表面皮膜の形成はもっと早いので、2週目の終わりには指触乾燥といえますが、塗膜はまだとても柔らかく、2か月経っても高い粘着度があります。最後に、サフラワー油のサンプルは独特の道筋を示します。初期にはわずかながら重量減少があり、その後上昇して1週間以上経ったところで最大の~9%を示します。その後は一定の割合で減少し、2カ月後に1.5%をわずかに超えるところまで低下します。この劇的な減少は研究(Tumosa, Mecklenburg 2003)の記録と同様で、この研究では重量減少は2年以上続き、初期の重量よりも少なくなります。この特異なパターンは、サフラワーの脂肪酸分布はより反応性の小さいリノ-ル酸の比重が大きく、亜麻仁油に多いリノレン酸が含まれないことによるとされます。そしてこれは、サフラワー油を専門家用油絵具に使う面では諸刃の刃となります。まず反応性が低いことから、サフラワー油は黄変しにくいのですが、それは低レベルの酸化反応は変色の主因と考えられる副産物の生成が少ないからです。しかしながら架橋性の二重結合が少ないことからは、サフラワー油の塗膜はより弱くまた透過性があり、そのために揮発性生成物はより多く逃げていくために重量減少も大きくなります。これらすべてのために、サフラワー油の絵具を下塗りに使うことには問題があり、アーティストは注意すべきです。
 

塗膜厚さ


これまでは250ミクロン厚さの塗膜について考えてきましたが、それ以外の暑さでは非常に異なる結果が得られます。次の図では3種類の異なる厚さで塗付された複数のサンプルでの平均重量増加を示しています。前述のように、亜麻仁油単独での重量変化をみるために、顔料と下地の重量は差し引いています。(図4)

75ミクロンの塗膜は指触乾燥と最大値22%に二日目で達し、その後二週間急激に重量が減少しその後はおよそ16%で一定になりました。250ミクロン塗膜はそれほど劇的ではなく、六日目に平均14%増となり、およそその辺りを数週間維持した後、わずかずつの減少傾向を示しました。これらと対称的に、1.5mmサンプルは最初の3週間はほぼ変化がなく、その後50日目に至るまで増加しており、この傾向はさらに継続するものと思われます。

 


図4:アルカリ精製亜麻仁油で練ったチタニウムホワイト
:厚さ75ミクロン
:厚さ250ミクロン
:厚さ1500ミクロン(1.5mm)


 

図5:ウィリアムズバーグ油絵具チタニウムホワイト
:厚さ100ミクロン
:厚さ250ミクロン
:厚さ1500ミクロン(1.5mm)


これらの厚さは乾燥初期段階では非常に異なる挙動を示しますが、私たちが行った同様のサンプルの長期試験の多くは、最大値は異なるものの、最終的には同程度の重量%増に治まることを示しています。図5では、ウィリアムズバーグ・チタニウムホワイトの1年以上におけるよい例を示しています。(図5)

 


図6:酸化チタンとアルカリ精製亜麻仁油の絵具を1.5mmに塗付したテストサンプル

図7:ウィリアムスバーグ・ローシェナをチューブから絞り出し、一年後に切り開いたもの

ここで起こっている事柄を単一の原因に求めることは困難なほど機構は複雑ですが、それ自身が少なくとも一つの可能性を示しています。まず、いずれの時間に観察された重量も、吸収された酸素から生成した揮発性副産物損失を差し引いた指標であることを確認することが大切です。ですから、塗膜が厚くなるほどその重量増加パーセントは、非常に薄い塗膜が達した酸素吸収パーセントに達することはなく、揮発成分の損失とのバランスが大きくなるということです。この点で、主要因となるのは表面積の問題となるでしょう。酸素は薄い膜には容易に浸透し、塗膜全体に対し一度に多くの酸化反応が起こり、その後、重量減が始まります。逆に塗膜が厚くなると、一度に起こる酸化反応の塗膜に対する割合は大きく低下します。薄い膜でのはなばなしい反応に対し、よりゆるやかな重量増加パーセントの上昇を示します。これはグラフに反映されていることが分かります。

しかしながら、何層にも塗り重ねた油絵具塗膜における乾燥については本当に難しい事柄になります。酸素も光も塗膜全体に浸透するのは非常に困難になりますが、これは顔料や他の固形成分がそれらを阻止するからです。加えて、厚い塗膜では最初に表面皮膜が形成されますので、浸透に対するバリヤーとなり酸素の自由な流入を制限しますが、表面皮膜がしっかりしてくるほどその傾向は強くなります。こうしたことを踏まえると、これらの要因は塗付後何年あるいは何十年後でも内部が未乾燥という結果を招きかねません。またこれは、厚い塗膜にシワが入りやすい原因ですが、大抵は重量増と体積増の段階で初期の表面皮膜が形成され、それはまた揮発成分が失われる前だからです。こうした例は、1.5mm厚さのサンプルや、チューブから絞り出したまま一年以上乾燥させた絵具に見ることが出来ます。(図6、7)

コバルト・マンガンドライヤーの添加


私たちの最後の探求の一つは絵具に異なる濃度でドライヤーを添加した場合の影響です。この目的のためにはコバルト・マンガン混合物を主に試験しましたが、それはこの組み合わせが最も一般的であり、またアーティストが使うにも手に入れやすいからです。しかしながら、これらの金属類は主に表面乾燥のドライヤーと考えられ、塗膜全体のには、ジルコンやカルシウムの添加で改善されるとされ、異なった結果となることでしょう。

この分野で直感と最もかけ離れた重要な結果は、あるレベル以上にドライヤーの量を増やしても、予想されるような乾燥速度の増加は見られず、むしろ遅くなったことです。これは同様に亜麻仁油単体にドライヤーを添加した場合の影響をみた研究の結果と一致しています。(Mallol, et al., 2000) 250ミクロンの結果を示す図8から分かるように、微量のドライヤー(0.005%)を含む絵具はより素早くかつより多くの重量増加を見せ、短時間でより完全な酸化があることを示唆しています。しかしながら、ドライヤーが二倍以上(0.011%)になった場合には、ドライヤーを全く含まない標準のウィリアムズバーグ・チタニウムホワイトよりも悪い結果となっています。

塗膜が厚くなると若干異なるパターンを示しますが、本質的には同じ傾向となります(図9)。前述の結果とは異なり、ドライヤーが最も多い絵具は初期には速めのスタートとなり、数日早く3%重量増のラインを超えます。しかしこの立ち上がりは長くは続かず、増加速度は低下し、半分以下のドライヤーしか含まない絵具以下となってしまいます。おそらく最も驚くべきことは、全くドライヤーを含まない標準のウィリアムズバーグ・チタニウムホワイトが、最終的には3者の中で総体的には最も高い重量増となることです。

これら二つの例では何が起こっているのでしょうか。そして、何故ドライヤーを増やすことが、重量増加速度つまりは架橋の程度を低下させるのでしょうか。

 

 


図8:ウィリアムズバーグ油絵具チタニウムホワイトに
ドライヤー添加-厚さ250ミクロン

:絵具そのまま
:0.005%添加
:0.011%添加


 

図9:ウィリアムズバーグ油絵具チタニウムホワイトに
ドライヤー添加-厚さ1500ミクロン(1.5mm)
:絵具そのまま
:0.005%添加
:0.011%添加


その答えはいくつかの分野にまたがります。まず、これらのドライヤーは表面でより活性があるため、より速く絵具の表面に皮膜を形成するので、結果として先に述べたバリヤーを作りだします。このようにして、乾燥時間を速めようという純粋な試みは現実には全体的なプロセスを遅くし、場合によっては絵具の完全硬化を妨げてしまいます。一年後の絵具のかたまりの内部が未乾燥になっている図7に見るように、、ドライヤーはかなり初期の段階で表面皮膜を形成しますが、それはシワの原因ともなり、内部の絵具を柔らかくて動かせる状態のままにしてしまうことがあります。次に、コバルトドライヤーの効力は一旦酸化が始まるとかなり短命です。実際、その試験を行った研究者(Mallol, et al, 2000)によると、コバルトは生成されるある種の副産物による抑制効果のために、7時間か8時間後には効力が大幅に低下し始めるとしています。これはまた、より厚い塗膜ではしっかりした皮膜が出来る前に増加速度が低下してしまうことも説明しています。


今後の取組


本記事は、私たちが進めている現在の試験のごく一部でしかありません。これらの試験は期待する答えよりも多くの疑問を産み出し、その過程で将来に向けての探求の新たな道を開くでしょう。最終的な希望は、過去の分析と理解を主体とする修復研究と、現在のアーティストに対し材料選択と最良の使用法の情報を支援するという二つの事柄の間にあるギャップを埋めることです。


この研究に関する最新情報は、goldenpaints.com および williamsburgoils.comをどうぞ。


文献


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Nicholson, Douglas G., 1941, Drying of Linseed Oil Paint: Effect of Atmospheric Impurities on the Rate of Oxygen Absoption, Industrial & Engineering Chemistry 1941, 33 (9), 1148-1153

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Rasti, Faramarz, Gerald Scott, 1980, The Effects of Some Common Pigments on the Photo-Oxidation of Linseed Oil-Based Paint Media, Studies in Conservation, Vol. 25, No. 4 (Nov., 1980), pp. 145-156

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