デジタルミクストメディアとの実験的混合

エイミー・マッキノン

新たな革新的製品によってアーティストが限界を打ち破ることができれば、目の前の扉が次々と開く局面の始まりです。通常、新製品の標準テストが完了すると実験に進むのですが、その際、認識すべきことは、製品に限界があるからといって構想を断念しないこと、またアーティストは製品に想定した用途以上のものを求めるということです。アーティストとは、なかなか決められたとおりに行動しない人たちであり、言うまでもなく取扱説明書もめったに読みません。その結果、楽しい発見や幸せなミスが生まれ、教訓を学ぶのです。

Golden Artist Colors社の新たなデジタルグラウンドは初期段階を卒業し、デジタル画像とインクジェットプリンターを使う人々のさまざまな世界で定番になりつつあります。お好みの平坦な支持体にインクジェットプリンターで印刷することが可能になったことで、多くのアーティストが印刷可能な下地に関する古い考えから解き放たれました。下地を変えることができれば、印刷の可能性と多様性は高まります。デジタルグラウンドに他の製品を混ぜたものを大量に作り、限界、互換性、潜在性をテストしたところ、興味深い結果に到達しました。うれしい驚きへの期待から、予想外の興奮までさまざまです。

デジタルグラウンドの種類は、ホワイト(マット)、クリアー(グロス)、ノンポラスの3種類です。デジタルグラウンドを平坦な支持体に塗り、乾燥すると、平坦な支持体はインクジェットプリンターを通ることができ、グラウンドはプリンターインクの受容体の役割を果たします。デジタルグラウンドを使うと、プリンターを通る平らな面ならほとんど何にでもきれいに印刷することができます。3種類のデジタルグラウンドにはそれぞれ異なる機能があります。ホワイト(マット)は小さな固体粒子でできた多孔質のコーティングで、プリンターインクは粒子の固体と固体のすき間に吸収され、その過程で粒子をコーティングします。デジタルグラウンドホワイト(マット)の構造はインクをほぼ瞬時に乾燥させます。デジタルグラウンドクリアー(グロス)は多孔質の面に適した透明のメディウムで、下地が透けて見えます。クリアー(グロス)は水に敏感なポリマーで、印刷するとプリンターインクにより膨潤します。ホワイト(マット)より乾燥に時間がかかりますが、インクをカプセルに包み込むことで、保護力が高まり、深みのある豊かな色とすぐれた透明性が生まれます。非多孔面用デジタルグラウンドは、クリアー(グロス)と同様、透明で、印刷すると膨潤します。この2つの違いは、非多孔面用デジタルグラウンドがアルミ箔やプラスチックなど非多孔質支持体に密着するように作られている一方、クリアー(グロス)は多孔質の面に適するように作られていることです。

デジタルグラウンドに絵具、メディウム、ゲル、ペースト、グラウンドをさまざまな分量で加えると、興味深い結果が生まれ、アーティストにとって印刷画像の出来ばえのコントロール幅が広くなりました。デジタルグラウンドはプリンターインクを受け入れるように作られているため、グラウンドの配合を大きく変えると特性が打ち消されることがあります。
実施したテストでは、まず、グラウンドに各要素を1%だけ加えました。率を上げ続け25%に達すると、混合物によっては、画像の鮮明さとデジタルグラウンドのメリットが失われ始めたため、これが限界点だとわかるものもありました。

デジタルグラウンドの混合

デジタルグラウンドにさまざまな製品を混ぜる前に、デジタルグラウンド同士がどのように作用しあうかを確かめる必要がありました。ノンポラスとクリアー(グロス)を組み合わせた混合物は、所定の支持体への機械的密着の度合いが異なるだけで、興味深い結果は生まれませんでした。ホワイト(マット)のインク受容メカニズムはクリアー(グロス)やノンポラスの種類とは異なるため、それらを混合した結果は基準から逸脱すると予想されました。これら膨潤性グラウンドのいずれかにホワイト(マット)を混ぜたとき、その比率は結果に大きな影響を及ぼしました。ホワイト(マット)の比率を増やすと[ホワイト(マット):クリアー(グロス)/ノンポラス=3:1]、画像はほとんど変化しませんでした。[ホワイト(マット):クリアー(グロス)/ノンポラス=2:1]と徐々に均等化すると、若干変化が現れ始め、クリアー(グロス)とノンポラスとの違いが出ました。どちらも鮮明性がわずかに失われた感じになりましたが、決定的な点は、ホワイト(マット)とノンポラスとの混合物が全体として暖かい色調となったことでした。画像の赤は蛍光色のようになりました。ホワイト(マット)をクリアー(グロス)またはノンポラスのいずれかと等量で混ぜると、画像の形と色の一般化が完全に分割されるという結果になりました。この効果は一般的にポスタリゼーションと呼ばれるもので、連続的階調の部分がいくつかの原色帯に変化し、ある色から別の色へと唐突に移行するのです。その違いはこの場合もまた、ホワイト(マット)とノンポラスとの混合物に温かみのある赤みがかった色相が生まれたことです。ポスタリゼーション効果は等量の場合にのみ生じました。ホワイト(マット)とクリアー(グロス)を1対2、1対3で混ぜると、バランスがとれ、鮮明で識別可能な画像になりました。ホワイト(マット)とノンポラスを1対2で混ぜると、暗い部分に少し斑点の特徴が見え始め、1対3に増やすと、暗い部分の鮮明性が失われ始め、画素化と似た効果が現れたことがわかりました。よく見ると、印刷スペースの暗い部分全体に小さな亀裂が生じていました。

絵具との混合

デジタルグラウンドホワイト(マット)と絵具を混ぜると、グラウンドが着色されると同時に、斑点のある卵のように見える効果が生まれました。絵具に含まれる顔料の大きさと種類は、斑点の大きさと頻度を決定する直接の要因になりました。ヘビーボディ、フルーイド、マットフルーイド、エアブラシカラーを選び、デジタルグラウンドと混ぜてみたところ、それぞれ、他の絵具と少し違いが見られました。エアブラシカラーは顔料分子が最も小さいため、とても均質な面ができました。マットフルーイドはエアブラシより分子が少し大きく現れ、均一な斑点の面ができました。フルーイドになると、粒子はさらに少し大きいため、間隔が開き、ヘビーボディでは、大きく、頻度は低いものの、多様な斑点が現れました。明るい色ほど、顔料粒子と斑点効果を見るチャンスは少なくなりました。ホワイト(マット)グラウンドに絵具を1%混ぜると、鮮明で識別可能な画像が生まれましたが、5%に増やすと、画像の最も明るい部分が暗い背景を取り込むことでコントラストが小さくなり始めました。絵具とクリアーグラウンドを併用すると引き続き斑点が現れましたが、絵具で印刷した画像が不鮮明になる傾向が生まれました。

メタリック絵具との混合
メタリック、イリデッセント、インターフェアランスの絵具は、顔料系絵具をデジタルグランドと混ぜたときと同様、斑点が現れる傾向にありましたが、全体に着色することはありませんでした。メタリック、イリデッセント、インターフェアランスのデジタルグラウンドに混ぜる量を増やすと、顔料系絵具とは異なり、そのままの状態よりも反射性の光沢がより鮮明になりました。絵具を5%以上加え、黒い面に印刷すると、絵具の斑点の上にのみインクが残るため、幽霊のような画像になりました。インターフェアランスはメタリックと同様の作用を及ぼしますが、トレードマークのフリップ効果により、見る角度で変化する画像をもたらしました。

グラウンドとの混合

デジタルグラウンドと混ぜるために選んだのは、ジェッソ、アブソーベントグラウンド、パステル用アクリルグラウンド、ライトモデリングペーストの4種類です。ジェッソをホワイト(マット)と混ぜたときにできた画像は、かなり鮮明で、もともとの色に近いままでした。ジェッソを1%から5%に増やすと、鮮明さ、強さ、くっきりしたエッジ、色の鮮やかさが失われました。アブソーベントグラウンドも同様の効果がありましたが、ジェッソより肌理(きめ)が粗くなりました。パステル用アクリルグラウンドは、アブソーベントグラウンドと同様、画像の変化が感じられたのは肌理だけでした。画像全体に影響を及ぼすことなく、十分描画できるくらいの肌理の粗さはまだ残っていました。それはクリアーデジタルグラウンドが25%のときに最も良くなりました。ライトモデリングペーストをデジタルグラウンドと混ぜると、スエードのような肌理が生まれます。見る角度によって粒子が違って見えます。画像を正面から見ると、インクが肌理の表面のほとんどの部分にあたっていることがわかりますが、別の角度から見ると、粒子の側面は白いままです。

メディウムとの混合
デジタルグラウンドをさまざまなメディウムと混ぜると、より鮮明に、きれいな色になりました。すなわち2つのメディウムが混ざったとき、2つの異なる目的を果たすということかもしれません。デジタルグラウンドと混ぜるために選んだのは、マットメディウム、スーパーローデッドマットメディウム、GAC 100、GAC 900です。GAC 100と900はほんのわずかしか変化しませんでしたが、異なる下地を使う可能性を開きました。
デジタルグラウンドを変化させた実験はと、印刷の潜在的可能性のほんの一部を示しただけです。この実験から、デジタルグラウンドの有用性を維持するためにはどのような比率で使えばよいか、大まかにはわかりましたが、更なる混合と利用の選択肢はまだ無限にあります。ここに記載していない大きな要因として、支持体の色、テクスチャー、吸湿性、印刷する画像、使用するプリンターとインクが関係します。画家の皆さんが望む効果や予期せぬ発見を達成するために素材を実験し、その可能性を押し広げることができるよう、これからもお手伝いしていきたいと思います。


 


Golden Artist Colors社


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