写真とGOLDENデジタルグラウンドの役割

マイケル・タウンゼント

Golden Artist Colors社では、この数年、画材を使って実験的制作を行う写真家の意見を聞く機会が増えてきました。彼らと話をするうちに、写真の新たなトレンドもわかってきました。幸い、これまで一緒に仕事をしてきたプロのアーティスト3名がこうしたトレンドに関する意見交換に快く応じてくれました。デジタル・ペイント・マガジンの発行人であり、肖像写真家兼画家でもあるティム・オニール、アーティストであり、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツの中心的教授でもあるマーク・ヨゼフ・バーグ、ロサンゼルス在住の美術家であり、商業写真家でもあるステファニー・ファーです。

「・・・ファッション写真は、実用性を重視した、生活のための写真でした。ファッションに夢中になったのは、創造性に関する限り最大の自由があるように思えたからです」。写真家兼アーティストのステファニー・ファーはプロのファッション写真家として成功を収めましたが、満足してはいませんでした。彼女は高い理想を持ち、この数年間、自分流の制作プロセスを開拓することに専念しています。



「自分ではアーティストだと思っています。私にとって最も高度なツールがたまたま写真であるということです。世界がどんどん小さくなり、国境がなくなりつつある現代において、作品はもはや単なる絵ではなく、単なるスケッチでも、陶器でも、写真でもありません。瞬時にあらゆるものになることができます。自由に使えるツールが多ければ多いほど、作品の主題の中に幾重にも重なる意味を切実に探ることができるような気がします」

アーティストであり、スクール・オブ・ビジュアル・アーツの中心的教授でもあるマーク・ヨゼフ・バーグも、伝統的な撮影方法の限界に挑戦しようと努めてきました。「本拠地のニューヨーク市では数え切れないほどのアートが目に飛び込んできますので、日常的に見るものから常に刺激を受けています。それに、それまで取り組んできた素材はいささか飽和点に達しつつあるなと感じていました」。新たな探求分野を模索し始めたころ、制作中に生じるさまざまな問題と格闘しながら必要に応じてアクリルを取り入れる考えに興味を感じたそうです。「・・・簡単に言うと、両手を泥水につっこんだらどうなるか、見るようなものでした」

写真家兼アーティストであるティム・オニールにとって、写真という媒体と美術品という媒体の融合は、これまでにも肖像アーティストとして制作スタイルに取り入れてきた手法です。彼の制作プロセスは後作業が重要です。「いったん印刷したら、それは下書きになり、その後、もうひと手間から数手間かけます」。限界を押し広げたいという気持ちに拍車をかけたのは「新参者だけでなく、常連の専門家からも自分を分離する必要性」でした。

それぞれの個性を達成しようとする写真家にとって、化学薬品を使う暗室は過去の開発ツールです。今日、画像がいったんカメラに取り込まれれば、デジタルスタジオが写真家の主要なカスタマイズツールになります。デジタル暗室では実にさまざまな方法で画像を操作することができます。実際、最近では、プロの画像でデジタル的加筆修正が一切行われていないものを見つけるのが難しいほどです。しかし、AdobeR PhotoshopRなどのソフトウェアプログラムが提供する表現オプションをすべて使ったとしても、現実に画像を印刷するのは今でもほとんどの場合、市販の紙や印刷用キャンバスです。写真家が現在使うことのできる支持体は、通常、何十年も改良を重ねて開発されたものです。

「写真用素材は伝統的にどちらかというと工業的な既製品です」とマーク・ヨゼフ・バーグは説明します。「もちろん、軽んじるつもりは毛頭ありません。ただ、こうした素材の表面には自ずと限界があるということです。」ティム・オニールも同じ限界を感じてきました。「手すきの紙でも、ラグペーパーでも、プリンターを通過できるものなら何にでも印刷できればいいのにといつも思っていました」

ステファニー・ファーにとって、デジタル写真と印刷に対する懸念は、工程に「手」の入り込む余地がなくなってきたことでした。「このことが、代わりの手段を探し始めた第一の理由の一つです。自分自身が最終製品にもっと関わりたいと思いました。シャッターを押すことは、1/30秒よりもっと長く対話を続けたいという切望のきっかけにすぎません」

3名の写真家すべてにとって、デジタルグラウンドの発見により、過去に取り組んだ工程の問題点を解決するだけでなく、新たな分野を開拓することが可能になりました。デジタルグラウンドを使用し始めた他の写真家と同様、再び制作工程に関わることができるのは魅力的です。

ティム・オニールの言葉を借りると、「アーティストは、独自の素材(プリンターを通過する素材なら何でも)を見つけ、手を加えることができるようになりました。特殊な効果を出すために特殊性の高い紙や支持体がほしいのに使えないことがよくあります。・・・今では、画材店に行って、これはというものが見つかれば、迷わず買います。これまでは、本当にいい素材だけど、印刷する方法がないなという感じでした。今では、新しい面に印刷する何らかの方法があるとわかっているので、迷わず買うことができます」

写真と支持体を一対にすると、画像の意味をより伝えることができます。アクリル絵具とゲルメディウムでさえ、印刷用の支持体になり得るのです。ステファニー・ファーは、デジタルグラウンドを使おうと決める前にいくつかの方法を試しました。

「代替の処理方法で実験を始めた時、最も重視したことは、透明の画像層を作る方法を考え出すことでした。以前、PolaroidR転写プロセスで制作した経験があります。手作業可能な透明画像ができますが、小さく、脆く、高くつきます(彼女の作品の平均サイズは約120センチ×180センチ)。コラージュ作家がアクリルゲルを使って(間接転写技法を使って)小さな白黒コピーからインクを移し取ったデモ作品を見て、答えを得たと思いました。制作中のイメージゲルはほぼあらゆる表面に貼り付けることができます。サイズ管理が可能になり、耐久性が高く、色を取り込むこともできます。ゲルでインクを移し取るという従来の手法にとって唯一の障害は、インクが常に一番底、すなわち数層のゲルの下にあることでした。そのため画像の透明度を制御する可能性が制限されます。デジタルグラウンドにすぐに惹かれたのは、それまでに試したどのリキッドエマルジョンより効果があり(かなり実験しました)、画像を表面に仕上げるからです」

写真家であれ、芸術家であれ、この探求分野に着手した人は皆、学習曲線に遭遇することになります。特に、アーティスト用の製品に慣れていない写真家はなおさら、インク受容性グラウンドで制作し、支持体を作り、画材を使うことを学習する必要があります。

マーク・ヨゼフ・バーグはそれを見事に言い表しています。「私にとって、実用という点ではまだほんの初歩です。とても興味深く、実にエキサイティングであると同時に、ある意味ではおそろしくもあります。しかし、ご承知の通り、私はそれもすべて、ある種、制作工程の一部と考えています。つまり、行こうとしている所が目的地になるというか、心の赴くままに向かう場所についてできることはあまりないというのが実感です」

さらにこう続けます。「前人未踏の場所であっても、そこにたどり着く実に多くのさまざまな道があります。興味深い事実の一つは、今日私たちが利用する技術が多種雑多な組み合わせであるということであり、世の中には非常に多くの組み合わせが存在するため、新たな境地を開拓する可能性もあるということです。前人未踏の道を進めば、いずれその分野のマーケットリーダーになれるかもしれません。そうは言っても、100もの道があるかもしれませんし、ある道を進んでも期待する結果が得られるとは限りません。しかし、いつか、『これだ、ここで何かが得られそうだ』と言える道がみつかるでしょう。大切なことは、これまで全く存在しなかった広々とした新たな活動の場があり、誰にでも開かれていることです。さらに、活動し、経験するためのコストはわずか2~3年前よりもかなり低くなっています」。

デジタルグラウンドを使うことで、写真家は新たな領域に入り込むことができます。絵に画像を付け加えたり、画像の上から描画したりする手法は前からありましたが、今、その境界線はぼやけ始め、過去の規則は破られつつあります。少なくとも、独自の支持体を使うことで、写真家は昔のように制作工程に手を加える感覚を得ることができます。「今では、中に入り、描き、その方法で微調整し、和紙に描き、パピルスに印刷し、望めば樹皮に印刷することもできます」とティム・オニールは言います。

ステファニー・ファーも同意見で、「写真そのものの新規性は薄れ始めているため、理屈抜きにファインダーに惹きつけられる写真家は境界を越えることができるでしょう。人はアーティストとして、先人の作品を生涯かけて研究し、その知識を基に芸術の推進に努めます。私は現在の可能性を評価しつつ、優れた先人たちが達成したことから学ぼうとしてきただけです。このことを念頭に、自分の疑問に対する答えを見つけるのに最も有益だと思う作品と方法を選びます」

この20年間、この工程に助けを求める画家や写真家の数は着実に増えています。デジタルグラウンドのおかげでテクニカルサービス部はさらに多くの製品や、技法と素材の組合せを研究することができるようになりました。当社にとって、他のアクリル製品と同様、これらの素材についての研究は続きます。プロセスに終わりはなく、アーティスト達と協力して、新たな使用方法と次に開発が必要となる新製品の発見に取り組み続けるでしょう。ティム・オニール、マーク・ヨゼフ・バーグ、ステファニー・ファーのような写真家兼画家の協力を得て、新たなソリューションとプロセスを一緒に学んでいるところです。マーク・ヨゼフ・バーグはすべての考えをうまくまとめ、こう表現しました。「可能性は本当に無限であるということに皆気づいているはずだし、人々がこれらの素材をどのように使おうとしているのかを知ることはとても興味深いことに違いありません」

マーク・ヨゼフ・バーグ
オハイオ州クリーブランドに生まれ、州立ケント大学に通う。欧米で写真の個展を何度か開催。ニューヨーク市在住。スクール・オブ・ビジュアル・アーツで教鞭もとる。

ステファニー・ファー
ミズーリ州育ち。この8年間、ロサンゼルスで独自の媒体の研究と実践を行ってきた。ミズーリ大学で美術学士号取得後、更にカメラの専門知識を学ぶためにブルックス写真専門学校に通う決心をし、トップの成績で成績優秀賞を受ける。その後、ファッション写真家との実務研修を確保し、撮影方法、保管方法、顧客の見つけ方を学ぶ。吸収できることをすべて吸収した後、自分のスタジオを開き、UniversalRやAvonRなどの企業が使う画像の制作を始めた。4年後、商業界を去り、芸術作品の制作に専念し始めた。

ティム・オニール
ネブラスカ州の肖像画家ティム・オニールの画家兼写真家としてのキャリアは、高校時代、地元の会社のアルバイトとして暗室でフィルム処理の仕事をしたことに端を発する。それ以来彼が目指してきた芸術、写真、ビジネスにはさまざまな勉強方向があった。2002年、デジタル革命の波が彼のスタジオにも押し寄せ、肖像アートに新たな息吹を吹き込んだ。ミクストメディアで制作した肖像画が目の肥えたクライアントに人気を博し始めている。経営者として作品を制作し、ブランドを育てると同時に、オンラインやオフラインのワークショップやセミナーでアーティストにビジネスとマーケティングの技術を教えている。現在力を入れていることはオンラインビジネスを立ち上げ、肖像画や美術作品を委託制作することである。

Golden Artist Colors社


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