ジャッキー・バッテンフィールド
アーティストガイド:
好きな仕事で生活するには


マーク・ゴールデン: ジャッキー、この6月に『アーティストガイド:好きな仕事で生活する方法』を出版されましたね。この仕事を始めたきっかけは何ですか?
ジャッキー・バッテンフィールド: 1989年から8年間、ブルックリンの非営利展示スペース、ロタンダギャラリーの運営に携わった経験がありましたので、その技術を活かして自分の絵で生計を立てようと決心したのです。
当時は今と同じように不況で、ニューヨークのアート界も大打撃を受けていました。私も1つのギャラリーに望みをつなぐのではなく、全米の多くの画商による作品の幅広い支持基盤を開発することにしました。自分で調査し、直接会って話をし、手紙を送り、山ほど断わられましたが、前向きな反応もありました。その後数年かけて複数の画商との関係を構築し、その顧客が私の作品を見てくれるようになったのです。
1992年、ブロンクス美術館からアーティスト・イン・ザ・マーケットプレイス(AIM)というセミナーの後任を依頼されました。新進アーティストの精鋭グループを対象に12回の夜間講座を行うプログラムで、アーティストたちはそこでプロの美術家と会い、ビジネスについて議論をしたものです。
夜の外出は私にうってつけで、アトリエにこもって制作する日々の気晴らしにもなりました。自身のキャリア構築で直面する教訓や課題を学ぶことができ、意欲に満ちた新進アーティストたちと情報を共有することができました。
マーク: AIMプログラムにそういったカリキュラムを設けたのですか?
ジャッキー: 完全にではありません。AIMプログラムは10年以上続きましたが、私は変更を加えました。アーティスト同士の意見交換を活発にし、宿題を出し、コミュニティを育成し、私なりの「塹壕」経験を共有しました。
仲間同士で問題を話し合い、情報を交換することができる安心な場所で、一人のアーティストとして他のアーティストと忌憚なく話をすることができました。
マーク: 著書にもそういった場面が頻繁に出てくると思います。現場にいた誰かの声なのですね。
ジャッキー: アーティストたちには、良いことも、悪いことも、嫌なことも、どんな経験でも持ち込んでほしいと働きかけました。他の誰もがすでに解決した問題を、自分だけが奮闘していると考えがちですが、経験を共有することで、他の人も同じ問題に取り組んでいることが理解しやすくなるのです。
マーク: あなたと一緒にプログラムを体験した多くのAIMアーティストに会ったことがありますが、皆、どれほどプログラムに感謝し、あなたのスキルを賞賛していたかがわかりました。
ジャッキー: ありがとうございます。AIMセミナーが有名になってくると、他の仕事も依頼されるようになりました。クリエイティブ・キャピタル基金のデザインワークショップのお手伝いをしたこともありますし、現在はコロンビア大学修士課程の専門能力開発講座で教鞭をとっています。こうした経験のおかげで、セルフプロモーションや助成金申請、金銭管理、組織化などの戦略を教えるスキルを磨き、キャリアのさまざまな段階にいるアーティストたちに提供することができました。
クリエイティブ・キャピタル基金では週末を過ごすための静養所を開発したのですが、そのおかげで、全米各地のすばらしいアーティストたちと共同で作業することもできました。彼らが大都市、小都市、小さな町、地方の小規模な共同社会で制作を継続するために直面する課題をこの目で見て対応したこともあります。
マーク: ジャッキー、大学レベルのカリキュラムを構築されたときのお話を少しお聞かせ願いたいのですが。意義ある課題と議論すべき点があったと想像します。
ジャッキー: 2学期制のすばらしい点は、系統的に情報を提供し、宿題を出すようになったことです。卒業後10年間に必要となるスキルに重点を置いていたのですが、一部の学生にとっては理解困難なメッセージもあることが分かりました。例えば、アトリエでの制作がどれほど孤独なものになりうるかとか、生活と外での仕事を両立しながら作品を制作するために必要な自己規律などです。
15週間以上も学生と一緒に勉強するからこそ、組織、宣伝、資金など、彼らがこれから遭遇する課題に対応することができ、対処方法に導くこともできました。こうしたスキルがきっちりとした構成で提供されることは、時々あるキャリア講習会以外ではめったにないことです。半期にわたるカリキュラムの系統的手法と講習会の成り行きまかせの手法には大きな違いがあります。
マーク: 実に魅力的なスクールがあったことは確かです。しかし、アーティストとして生きていくことを学生に教えるという話題になると、あなたの教えはキャリア第一主義であると言う人も多いですね。
ジャッキー: それは残念です。私の授業は、アーティストが一生のうちに最高の作品を作るためのスキルと技法を理解し、応用する手助けをするために構成されているからです。
マーク: キャリア第一主義。そうですね。情報の価値が分かる学生同士や、すでに実社会に出てそうした教育を受けなかったまさしく新進アーティスト同士で議論が繰り広げられるのではなく、教育機関がこのような授業に対して最大の障害を作っているように見えます。
ジャッキー: 私の本と授業の内容はライフスキル、すなわちアトリエでの制作を継続する方法を教えることです。有名になる方法ではなく、芸術家として充実した生活を送る方法です。
マーク: ご自分の活動に関するすばらしい信任状を控えめに表現された著書で何度もそれを実感ました。ご自分が単なる「フィールド制作者」にとどまらないと考えることができるのはどの時点でしょうか。
ジャッキー: (笑)アーティストたちと共同で仕事をした経験がたくさんありますので、申し分のないキャリアの例を一つ挙げることができます。世間は芸術界のスターか路上の画家以外の成功例をあまり提供してはくれません。したがってアーティストは結局、両極端で自分を判断することになります。しかし、アーティストに成功とは何かと尋ねてみてください。ほとんどの人は、心に描く作品を制作するための時間や場所やお金があること、そして理解してくれる観客と作品を共有することと答えるでしょう。
マーク: アーティスト向けのハウツーものを扱うあらゆる種類の書籍、ビデオ、ウェブサイトをご存知だと思います。「アーティストガイド」とそれらとの違いは何ですか?
ジャッキー: 確かに、たくさんのアドバイスが出ていますね。長年にわたりアーティスト向けのキャリアガイドをたくさん読みましたが、現役アーティストが書いたものはほとんどないため、私のように親密に語りかけることができていないと思います。私はアーティストと同じ問題に直面していますから。
ですから、私の本は、アーティストに「何」をすべきかを伝えるだけではなく、「なぜ」そうすべきなのか、どのようなメリットがあるのかも取り上げています。例えば、誰しも時間や資源は限られていますから、アーティストの話や、記録や、ネットワークや、予算などをうまくまとめ、その結晶を理解してもらう必要があります。そうしなければ誰も時間や資源を投じないでしょう。
マーク: 同じく有益な点は、さまざま分野の専門家、すなわち共有すべきより大きな芸術社会ネットワークから生まれた言葉が著書のいたるところに引用されていることであり、その言葉にあなた自身が強調を加えていることです。
ジャッキー: その通りです。AIMとコロンビア大学の学生に教えるときにわかったことは、私が提供した情報を別の専門家が検証すると、ポイントが理解されることでした。したがって、別の人の意見も書いたのです。
ジャッキー: プロの芸術家に34回のインタビューを行いました。多くはさまざまな分野で成功したアーティストです。例えば、インタビューしたアート弁護士の1人であるセルジオ・サーミエントは、制作の一環として弁護士になりました。ジャック・シャルティエは、作品が広く展示される画家であり、マイアミ・バーゼル芸術祭を共同で創設しました。
マーク: 本の出版前からスタートしたウェブサイトも継続的に活用されていますね。どのような目的で始め、どのように進展していると思いますか?
ジャッキー: おそらく、有益なウェブサイト以上にすぐれたマーケティングツールはないでしょう。実施したインタビューをすぐ共有したかったので、出版の18ヶ月前に著書のウェブサイトに掲載し始めたのです。本が店頭に並ぶずっと前から、アーティストや教師とその生徒たちが情報を利用していました。
マーク: 大きな貢献であり、著書に勝るチャンスも提供するのですね。
ジャッキー: 原稿の編集に手間取り、執筆が遅れてしまいましたが、十分その価値がありました。
マーク: 実に意義深いと思ったことは、著書が個人事業主としてのビジネスマンに対して語りかけていることでした。珍しいメッセージですが、なぜこれをアーティストと共有するのですか?
ジャッキー: アーティストが自分をビジネスだと考えていないからです。近年の芸術教育は技法と理論を重視する学術的環境でなされており、学生にはアーティストが日々遭遇する問題を自分の目で見る機会がありません。ほとんどのプログラムは、カリキュラムに実際の問題に対応する余裕がないと主張しています。過去の芸術教育は巨匠に師事することで成り立っていました。床掃除から始め、背景を塗るところへと昇格していきます。地位が上がるにつれ、巨匠がアトリエを経営し、パトロンの愛顧を得る姿を見たはずです。
マーク: きわめて恣意的な乖離がありますね。
ジャッキー: その通りです。美術教師は1種類のモデルを提示し、実技をサポートします。ほとんど場合、アカデミーの外でキャリアを継続するための他の方法に対応することはできません。
マーク: ジャッキー、執筆中はこの厳しい経済危機の真最中でした。『アーティストガイド』の中で、アーティストたちが今直面している事態に対するメッセージはありますか?
ジャッキー: 本に書いていることは、景気の良い時にも悪い時にもアーティストの役に立つツールと技術、すなわちライフスキルに関することで、これは経済がどんなときでもアーティストを支えてくれます。景気絶好の時でさえ、作品が売れない可能性もありますから。
マーク: あるいは良い時期でさえ、画廊の支援は受けられそうにないですからね。
ジャッキー: おっしゃる通りです。私の本では、誰もが習得できるスキルについて書いています。
マーク: それでは、現在の環境はたいした問題ではないのですね。
ジャッキー: 問題を過小評価したくはありませんが、芸術家は、豊かな時代に欠乏を経験することもありますし、不況の時に多くのチャンスに恵まれることもあります。
マーク: ジャッキー、あなたは本の発売前でさえ、アーティストのキャリア開発に関する専門家兼講師として引く手あまたでした。生活の中に制作時間を取り戻すことはできましたか?
ジャッキー: 今は自分のアトリエにいますので、新たな作品が少しずつ生まれるでしょう。
マーク: ありがとう、ジャッキー。ほとんどの人にとって、あなたが選んだ各キャリアのどれ一つをとっても十分追求する価値のあるものだったにちがいありません。しかし、あなたは複数のキャリアを成し遂げ、驚くほどうまく舵取りをしてきました。お話に感謝します。
ジャッキー: 毎朝目覚め、作品を制作し、コミュニティと共に働けることを幸せに思います。これ以上のどんな生活を望むことができるでしょう。


著者について
20年前、ジャッキー・バッテンフィールドは多くのアーティストが直面する恐ろしい選択に対峙しました。夢をあきらめるか、自分の芸術で生活する方法を見つけるかという選択です。画廊の責任者としての経験を活かし、何年も試行錯誤を繰り返した結果、彼女は目標を達成し、さらにそれ以上の成果も得たのです。現在、ニューヨーク市と全米のワークショップとセミナーにおいて、キャリアのあらゆる段階にいるアーティストたちにこうしたスキルを伝えています。『アーティストガイド』は美術学校が教えないことを取り上げ、アーティストの才能を世界とうまく共有する方法を教えてくれます。
実践力、思いやり、ユーモア、洞察を等しく併せ持つジャッキー・バッテンフィールドは、自立したアーティストとしての長年の経験を人々と分かち合い、芸術家としてのキャリアを育み維持するという手に負えない仕事を明確で管理可能なものにしてくれます。『アーティストガイド』はアーティストがキャリアのあらゆる段階で立ち戻る貴重な資料です。
ジャッキー・バッテンフィールドの作品は全米の画廊と、世界各国の多くのコレクションで展示されています。また、コロンビア大学とクリエイティブ・キャピタル基金でもプロフェッショナル実践法を教えています。
著書の注文や、画廊経営者、アート弁護士、学芸員、アーティストとの20を超えるインタビュー(ノーカット)の閲覧をご希望の方は、下記サイトにアクセスしてください。
www.artistcareerguide.com

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