オープンアクリリックスの新たな試験結果


By Mike Townsend


新製品のゴールデンアクリリックスは発売前に、専門家用製品としての当社基準に合致しているかを検証する一連の試験を受けました。これらの試験により、このユニークな絵具の性質に関して多くのデータと、作業性に関する有益な知識が得られました。こうした情報により、最終的な配合を決定するとともに、アーティストの絵具箱にオープンアクリリックスを加えるために彼らが興味を持つような製品情報源が得られました。アーティストたちがオープンアクリリックスを使うにつれて、新たな疑問が生まれ、テストや評価がさらに続けられました。本記事では、当社での試験にもとづく最新の結果と注意について考えます。


耐久性試験

製品耐久性試験はどのような新製品でも重要な項目です。この試験により絵具がどのくらい耐久性があるかが分かります。オープンに使われた顔料は他の絵具と変わりませんが、オープン独自の成分があり、それぞれの色について注意深く自然および促進の耐光性試験を行いました。促進耐光性試験は製品の耐久性を決定する要の一つであり、開発初期段階ですべての色はASTM規格の耐光性試験パラメーターおよび暴露塗膜の状態により評価されました。
 
南フロリダにおいて厳しい条件の太陽に45度の角度でさらされたオープンアクリリックス試験設備。写真提供:Q-Panel社

ゴールデンでは、二種類の促進人工光源装置を使用しています。UV-A351蛍光管の紫外線によるQ-Panel耐光性試験機と、イオン化キセノンガス封入ランプを用いたキセノンアーク試験機です。自然の太陽光線あるいは蛍光灯などの人工光源から放射される可視光および破壊的な紫外線を含む広範囲の光への暴露によるダメージに対する、総合的な安定性について、それぞれの機器によるデータから信頼性を高めることが出来るのです。この分野の科学はまだ十分ではなく、一般論として、100年後にその製品がどのようになっているかを正確に予測するには、およそ50年かかるというのが実状です。(促進耐候性試験についての詳細はJust Paint 16参照。)
 

ゴールデン社の促進耐候性試験機 

製品の予測耐久性の基本を理解する上で促進耐久性試験は役立ちますが、絵具の耐久性には、実際の暴露試験がより大きな信頼性につながります。しかしそれを待っていることができるでしょうか。当社では促進試験結果をより確実にするために、長期の屋外試験を行います。この種で最も過酷なものは南フロリダです。湿気と塩分の混ざった空気と紫外線の多い太陽光は、どのような塗装も壊滅状態になり得るのです。
私たちが行ったASTM規格の試験はこの環境下で約3ヶ月の暴露を含みますが、さらに長期間の試験を継続しています。現時点で、太陽輝くフロリダから戻ってきたオープンの9ヶ月暴露パネルを精査したところです。現在すべきことは塗膜の変化を精査することです。クラック、浸食、白濁、曇りなどの視覚的評価が特に重要です。表面劣化、接着不良、変色を見ます。光沢計を使って光沢の変化を追跡します。色の変化は、顔料の退色、顔料の暗色化あるいは樹脂劣化の結果と考えられます。測定により色の変化(色差=デルタE)およびCIE L*a*b*色空間データを、保管の未暴露パネルと比較します。
これらの表面は、屋外環境にさらされているので汚れています。塗膜面は色彩分光光度計で測定する前にまず洗浄します。
QUV、キセノンアーク、南フロリダの暴露という試験と評価を行った後、オープンアクリリックスはヘビーボディー(通常のゴールデンアクリリックス)とほぼ同じようであることが分かりました。どちらにも同じ顔料を使っているので、耐光性についての総合的な性質は同列といえます。一つだけ考慮することは、オープンの塗膜は硬化するまでにずっと時間がかかることです。完全に塗膜が形成される前(数日ではなく数ヶ月)に屋外で暴露されると、不完全な塗膜形成のために著しい塗膜劣化が起こります。しかし、同じ塗膜でも十分に硬化すれば、他のアクリル絵具とほとんど同等になります。


テストデータのまとめ

総括的にはオープン各色は予想通りの耐久性があり、他の絵具製品と同等でした。QUV、キセノンアーク、実暴露の3試験からは強靭な塗膜を形成すると結論できます。
これらの試験パネルは試験場に送られる前に30日間、完全乾燥させました。これは実際の屋外壁画の描画条件とは異なります。
もしオープンを屋外壁画に使うならば、雨や湿気、露にさらされ、それぞれの色が流れ落ちて壁画を損なうでしょう。現状での推奨はワニスをかける前に30日間は硬化時間をとる必要があることを考えると、それに見合う月単位での完璧な天候は、ごく普通の気候でもありそうにないことは容易に理解できます。オープンアクリリックスは直接屋外壁画に使うには向いていません。
可能な手段としては、適切な屋外仕様の基底材(MDO(中密度特殊加工化粧合板)、アルミパネル、屋外仕様の生地など)を使ってアトリエで壁画を描くことです。屋内で十分に硬化させ、適切にゴールデンMSAワニスをかけた後に、屋外に展示することです。

オープンの作業時間に対する下地の影響
オープンの予想作業時間について聞かれた時、実際の数字をいうことはためらわれます。それは様々な要因に影響されるからです。温度、湿度、空気の流れ、塗り厚さ、その他の作業時間に影響するファクターが、どのような組み合わせで実際の描画場面に現れるかを予測するのはほとんど不可能です。オープンアクリリックス製品のインフォメーションシートの場合のように、予想作業時間について述べる場合は、条件を設定した上で行います。0.25mmのフィルムアプリケーターでコート試験紙に絵具を塗付するアーティストはまずいないでしょう。
作業時間についてのより適切な質問は、作業時間を最大限にするためにコントロールできるファクターは何か、ということです。リストはずっと短くなります。アトリエ内では、温度を下げ、湿度を上げることは可能です。この二つのうちでは、湿度がオープンの作業時間により大きく影響します。湿度が高くなるほど、絵具の塗膜から水分や他の添加剤が蒸発する速度は遅くなります。
塗膜厚さも作業時間を考える際に大きな因子です。これが作品に及ぼす他の影響についてもみなさんにお知らせすることが重要です。厚く塗った絵具は、確かに乾燥が遅くなりますが、実際には予想以上に時間がかかるでしょう。私たちの試験で、1/4インチ(6.25mm)の厚さに塗った絵具は粘着がなくなるまで文字通り数ヶ月間かかりました。
空気の流れは見過ごされやすいファクターですが、当社の試験では、オープンアクリリックスの乾燥速度にもっとも影響する因子の一つでした。空気の動きは、乾燥しつつある絵具塗膜から水やリターダー、その他の添加剤が揮発するのを助けます。アトリエでは空気の入れ替えはよくしておくべきですが、乾燥を速めたい場合を除いては、画面に直接、扇風機や他の器具からの風を当てないことです。
最後に、乾燥時間や画面に最も影響を及ぼす因子が残っています。詳しく言えば、画面の吸収性です。
描画用には様々な下地材を選ぶことができます。吸収性のコントロールとは、好みのものをあきらめなければならないということではなく、その絵がどのような構成になるかを選択する必要があるということです。もし吸収性を無視するなら、絵具配合成分を含む他のあらゆる要素では、長い作業時間を達成できないことになります。吸収性の高い下地が乾燥を遅くするすべての添加剤を吸い込んでしまう状態では、描画時間を最大限にすることなど期待できません。
吸収性の下地で描画する場合は、乾燥の速い絵具やメディウムで表面をシールしてしまうのが、もっとも現実的な解決策です。いつ、どのように表面をシールするかは作者のニーズ次第です。水彩紙に描く場合、絵具のウォッシュが望ましいでしょう。この場合はヘビーボディー(通常のゴールデンアクリリックス)か、フルイドで描くことができます。ウオッシュが完成したら、アクリルのメディウムを半透明のシーラーとして使って、画面をシールできます。あるいは、ヘビーボディーやフルイドは色の定着と下塗りに使えますし、乾燥が速いので、ほとんどすぐにオープンアクリリックスで繊細な描画をすることができます。吸収性を減らすもう一つの方法は、絵具を塗る前にアクリルメディウムで表面をシールすることです。その時に応じて最良の方法で進めましょう。
以上の意味は、オープンで描画する前にいつも表面をシールする必要があるということではありません。シールしない場合、最初に塗る絵具は作業時間の特性を十分には発揮できないだろうということです。吸収性の下地は絵具の添加剤を吸い取って乾燥を速めますが、描画を続ければ、やがては表面はシールされて作業時間は長くなっていきます。
 


オープンアクリリックスの平均作業時間
様々な下地材に0.125mmの厚さで絵具を塗った場合の結果

下地材 下塗りなしの300#  水彩紙 GAC100でシールした水彩紙 下塗りなしの綿キャンバス ジェッソを塗ったキャンバス  ジェッソを塗りGAC100でシールしたキャンバス   ジェッソを塗ったMDOパネル    ジェッソを塗りGAC100でシールしたMDOパネル  
ウェット時間 

5-10分

10-15分

2-5分

25-35分

35-45分

25-35分

35-45分

描画可能時間

10-15分

20-30分 

10-15分

55-65分

85-100分

70-85分

110-125分


ウェット時間
:絵具をチューブから出した時の感触が残っており、乾燥で明らかに粘性がでて筆を引っ張るまでの時間。
描画可能時間:ウェット時間を含む。絵具に粘性が出てくるが、描画に支障を来たさないまでの時間。この状態を「スイートスポット」と呼び、独特の粘りが出た状態。


Golden Artist Colors社


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