色の機微


By Sarah Sands

小さな違いがやがて大きな違いに

画家が誰でも知っているダンスがあります。絵から数歩下がり、やや首を傾げ、目尻を引っ張って目を細め、手をかざして視界の一部を遮るなど、行きつ戻りつしながら、感覚と感性を調整するのです。そのダンスの最大のテーマが色だとすると、多くの場合、求めるものは手元の色から引き出されるまだ見ぬ機微といえるでしょう。たとえ不調和の結果生じた効果であるとしても、「きちんとした」ものであってほしい、すなわち最高のピッチに合わせた、あるいは魅力的な趣のある不調和であってほしいという望みは残ります。結局のところ、画家の拠り所は機微、すなわち、やがて大きな違いとなる小さな違いであり、その要求に対応できる色への探究心は尽きることがないのです。
このように計測不能な事柄はすべて、どれほど希薄になったように思えたとしても、最終的に共通の商売道具である顔料と絵具の性質に根づいた重要な基礎を持っています。以下では、まずこの基礎的要因をいくつか見直し、その後、自分の目的に合った正しい色を選ぶ際、ごくわずかな違いがなぜ大きな違いになりうるのか、その理由を検証します。

数値でわからないこと:比色分析の限界

色の独自性を生むものについて説明しようとするとき、その色をCIE L*a*b*やマンセルといった明確なシステムの中に位置づけたくなります。そうすることで、マップ化され、数値化された空間にその色の独自性を置くことができ、貴重な居場所を求めてせめぎ合う他のすべての色との違いの度合いを計算することすらできると感じられるからです。しかし、すぐにわかることですが、このプロセスではそうした機微が失われてしまいます。分光測光器はサンプルから反射する光の正確な構成を精密に読み取ることはできますが、その情報は、絵具を実際に使うために知るべきこと、すなわち他の色と混ぜたときの状態、不透明度、着色力、物理的特性の数を本当に教えてはくれません。絵具は結局、活動的なダイナミックでエネルギー溢れる色であり、スタジオのパレットを舞台とした鮮やかな生を1枚のスナップ写真に写し取ることなどできないのです。
もちろん、完璧な測定システムはありませんが、色のニュアンスを最も捕らえることができるのはおそらくスペクトル反射率曲線でしょう。マストーンにも比率を指定した着色にもスペクトルが利用できる場合はなおさらです。この2点を参考にすると、ある絵具を他の色と混ぜるとどうなるかをざっと測定することができます。しかし、この場合でも難しい点があるため、注意しなければなりません。例えば、カドミウムとハンザイエローミディアムは、そのままの濃度ではほぼ同じスペクトルを共有するかもしれませんが、実際にはこの2つを同じものと間違える人はいないでしょう。それだけでなく、さまざまな波長に対する目の反応も計算に入れなければなりません。目が色を感知する際、こうした反応がその方法を大きく形成する可能性があるからです。色はデータそのものとは全く異なる場合があります。

微妙な違いの基礎となる原因

色の機微の原因を追求すると、ほとんどすべて、顔料の物理的特性と、光が吸収、反射、散乱、透過により塗膜内の粒子と相互作用する方法にたどり着きます。次に、顔料を大きく特徴づけるものとして、基礎となる化学的組成とともに、粒子の大きさ、屈折率、散乱係数などの要因が挙げられますが、塗膜は、顔料の量、濃さ、光沢を通じて色に影響を及ぼします。以下、これらの点をすべて簡潔に述べ、目に見える微妙な違いの背後には、多くの場合、いくつかの複雑な理由があることを紹介したいと思います。

顔料の物理的特性

顔料の結晶構造
顔料にはすべて、ほぼ例外なく、その色を決定づける結晶構造があり、このレベルでの小さな変化ですら、吸収される波長や反射する波長を変えることがあります。例えば、フタロシアニンブルーには2種類の結晶構造(αとβ)があり、レッドまたはグリーンシェードに若干傾く要因となっています。一方、キナクリドンの結晶格子の変化は広範囲の要因となり、明るいキナクリドンレッドから深みあるマゼンタやバイオレットまで範囲が広がります。3番目の例にはカドミウム系の色がすべて含まれ、例えば、硫化カドミウムは純粋状態では黄色いですが、結晶格子状の硫黄と増量したセレンを置換すると、赤みと深みが増します。この置換により、吸収可能なスペクトルの量が広がり、十分なセレンを加えると、カドミウムが実際に黒く見えることもあります。

透明度/不透明度および着色力
粒子の不透明度は光散乱力に大きく依存し、光散乱力は主として粒子の屈折率と大きさに依存します。粒子とそれを取り巻く媒体との屈折率の差が大きくなればなるほど、光の散乱量が多くなるため、下の層が不透明化し、ちょうど霧で車のヘッドライトが散乱するのと似た現象が生じます。逆に、この差が小さくなればなるほど、粒子の透明度は高まります。例えば、カドミウムイエローとチタニウムホワイトは屈折率が高く、そのことが高い被覆力と不透明性のほぼすべての原因となっていますが、ジンクホワイトとハンザイエローは屈折率がアクリルポリマーにかなり近いため、透明性が高くなっています。フタロシアニンのように屈折率が低い黒っぽい顔料はあまり光を散乱させないため、被覆力の理由はほぼすべて、光吸収力、顔料の量、膜の厚さにあります。
粒径に関する他の側面は、分散力にも着色力にも等しく劇的な効果をもたらします。粒子は小さくなるにつれて、より効果的に光を分散させますが、ある最適な大きさに達すると、その後分散力は急速に衰え始めます。この閾値からさらに小さくなり続けると、顔料の粒子はますます透明化すると同時に着色力が最大化します。トランスペアレントアイアンオキサイドの不思議はここにあります。通常は不透明な酸化鉄系顔料を微粒子で製造することにより、驚くほど半透明になり、グレージングや透明で彩度の高い色を出すときに高い効果を発揮します。他方、チタニウムホワイトは、最大の光分散、つまり不透明度を得るべく粒径を慎重に最適化して製造しています。実際、チタニウムダイオキサイドの幅1センチの結晶は完全に透明ですので、これはひとえに、結晶が微小化して散乱力が強まった結果、人の目には顔料が本質的に「白い」と映る、つまり、細かい粉末状のガラスが白く見えるのと同じ効果によるものです。チタニウムダイオキサイドがさらに微小化してナノレベルになれば、実際、完全に透明になるでしょう。一般にチタニウムホワイトといえば不透明なものと強く関連づけていることからすると、ほとんど魔法といってもいいような功績です。

純粋性および均一性
顔料の形状や大きさの分布の均一性だけでなく、化学的純粋性の差により、まだ他にも思いがけない色の事象が発生します。例えば、天然土独特の趣とニュアンスは、酸化マンガン、シリカ、酸化アルミニウム、粘土といった微量元素の量が多様であることや、さまざまな粒径が混合していることに由来します。このことが貴重なアンダートーンの多くの主な原因となり、世界のある地域がオーカー、シエナ、アンバーの人もうらやむ宝庫となった理由の説明になりますが、これらの色が一般的に類似の合成酸化物より着色力が弱く、彩度が低い理由にもなります。また、資源は採掘されるものであるため、これらの顔料は新たに採掘した資源の不純度によって、ロットごとに色が大きく異なります。ウルトラマリンブルーは、もう一つの例、すなわち最も初期の合成顔料の一つを示しています。それ以前の本物のラピスラズリよりも豊かで飽和しており、採掘した岩のように、方解石、方ソーダ石、パイライトなどの不純物が常に付着しているため、色調が弱まっています。

絵具の物理的特性

膜の厚み

画家なら誰でも知っているように、塗膜の厚さや薄さにより、色がいつも同じであるとは限りません。高濃度の顔料を厚く塗った膜では、マストーンが強く、色はより飽和して深く見えるでしょう。膜が薄くなるにつれアンダートーンが目立つようになり、色全体の透明度が増し、明度、ときには彩度も高くなるのは、下地のトーンがとても明るくなるからだと想定されます。こうした効果は結局、後方散乱という形で顔料と下地から反射する光の量が増えることにより生じるものです。

顔料の量
膜厚以外に、塗膜の顔料の量や濃度を変えるだけで、色の感じ方が明らかに変わることもあります。例えば、高濃度の半透明の顔料を塗った膜では、光の内部散乱と透過はその後繰り返される吸収によってかなり失われるかもしれませんし、人の目には主に表面から反射した光しか見えません。この光の減少は色相の深まりや強力な吸収帯の補強に見えます。顔料の量が減少し、光が膜を通じて浸透し始めるにつれ、分散と吸収の相互作用が色全体に及ぼす影響は大きくなります。同じ模様のステンドグラスを互いに重ね合わせると、似た効果を想像することができます。何枚も積み重ねるほど、色は深みを増し、飽和するでしょう。
最も極端な例として、スペクトル反射率曲線は、より多くの光が素材に深く浸透するほど、大きく変化することができます。この現象は、グリーンゴールドやニッケルアゾイエローなどの透明色で見ることができます。そこでマストーンとアンダートーンとの劇的な違いが現れ、フタロシアニンブルーG/Sではスペクトルが微妙に移行します。

光沢および表面
表面に光沢があるかマットであるか、滑らかであるかザラザラしているかも、最終的に色の表現に影響を及ぼすでしょう。塗膜に光沢があり、滑らかであればあるほど、表面の光分散は少なくなり、顔料そのものによる光の浸透と吸収が高まります。その結果、通常、暗い色は、光沢がある場合はより深く、飽和して見えますが、逆に、マットの場合は明るく見えます。川床の底から黒っぽい色の石を取り除き、水の蒸発とともに一見濃厚な色が目の前で消滅するのを見るという現象に似ていなくもありません。

ケーススタディ

以下のケーススタディで使用したスペクトルのデータはMinoltaR分光測光器を使って得られたものです。サンプルはラッカー塗りのカードに垂らした10ミル(0.254ミリ)のドローダウンで、色ごとに、そのままの濃度のものとレギュラーゲル(グロス)またはチタニウムホワイトをさまざまな比率で混ぜたものの両方で実験を行いました。この記事に使用したグラフの多くはスペクトル曲線で、実験室の設定から外れた一般的なものではないため、多くの画家にとってなじみ薄いものかもしれません。これらを理解する最も簡単な方法は、単に、可視スペクトルの波長ごとに表面から反射する光の量を示すものと考えることです。反射量が多ければ、曲線はその点で高くなります。もう少し簡単に読み取れるよう、各グラフの上辺に沿って、バイオレット、ブルー、グリーン、イエロー、オレンジ、レッドと、色帯域の大まかな範囲を示す印をつけています。底辺をなすX軸には、実際の波長を記載しています。
 

 


同族の類似性

キナクリドンバイオレットとキナクリドンマゼンタのマストーン
グラフ1
キナクリドンバイオレットとキナクリドンマゼンタのマストーン


キナクリドンマゼンタとバイオレットは、きわめて近い色に見えるため、画家がどちらに手を伸ばそうとまずたいした問題ではないというよくある組み合わせの一つです。もちろん、どちらを選ぶかは皆さんのニーズ次第です。キナクリドンバイオレットは、透明度が高く、赤みが強いいとこのマゼンタと比べ、アンダートーンが不透明で青っぽいといえます。そのままの濃度で使うと、この特徴には容易に気づきませんが、着色時や透明のグレーズで使用した時はスペクトルグラフで見ることができるため、機微がはるかに顕著になります。キナクリドンバイオレットとマゼンタのマストーンのスペクトル曲線(グラフ1)は、最終的に一番端にあるレッドの寒色圏内で急上昇するまで、バイオレットからイエロー(400-600nm)の範囲までずっと、ほぼ無視できる程度の反射率レベルであり、事実上同じ形状であることがわかります。この2色を判別することは困難でしょう。しかし、これらをチタニウムホワイトと1対10の割合で、またはレギュラーゲルと1対50の割合で混ぜると、それぞれのスペクトルの形が劇的に変化するだけでなく、その違いも際立ちます。この2色の透明度の低下(グラフ2)と着色(グラフ3)では、キナクリドンマゼンタ本来の暖色面を「見る」ことができます。そこではスペクトルがはるかに早い段階で上昇し、新たなオレンジの強い構成要素を示す一方、キナクリドンバイオレットは600nmを超えても強い吸収を示し続けます。
 




   
 グラフ2
キナクリドンバイオレットとキナクリドンマゼンタをレギュラーゲル(グロス)と1対50で混ぜた場合
 グラフ3
キナクリドンバイオレットとキナクリドンマゼンタをチタニウムホワイトと1対10で混ぜた場合

 


グラフ4
キナクリドンマゼンタをレギュラーゲルグロスと1対50で、チタニウムホワイトと1対10で混ぜた場合
注意すべきもう一つの側面は、キナクリドンマゼンタにゲルを混ぜた場合とチタニウムホワイトを混ぜた場合の差です(グラフ4)。ゲルを混ぜた場合は赤の寒色圏の反射率レベル(チタニウムホワイトを混ぜた場合とほぼ等しい)に達しますが、525-575nmの範囲では吸収度がきわめて浅いままで、これがグリーンの相補的陰影の説明となるでしょう。この相補が抑制されるため、この透明の混合物は彩度が非常に高く明るく、チタニウムホワイトを加えても達成できないまばゆいピンクを作ることができます。この耳障りな高音を発することができずにいつもイライラする人にとっては覚えるための良い練習ですね。理由は簡単です。チタニウムホワイトを加えることで、スペクトルのプロファイルは横ばいになり始め、グリーンの範囲で光がどんどん反射された結果、寒色の色調が暖色の補色を本質的に取り消し、灰色化し始めるため、最終的に色度が失われ、「チョーク状」になるからです。

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フタロブルー(GS)(PB 15:3)/フタロブルー(RS) (PB 15:1)


 
グラフ5
フタロブルー(RS)とフタロブルー(GS)を)チタニウムホワイトと10対1、3対1、1対1、1対3、1対10で混ぜた場合
 
この双子は興味深い謎を呈します。最初、ごくわずかに下降し、その場合のマストーンはレッドまたはグリーンの一定の色合いであり、フタロブルー(GS)は最初小さなエッジがレッド区域にあり、ブルー区域の中でも暖色のバイオレット側に大きく傾いてさえいます。色が落ち、または着色されると、位置が逆転し、最後はフタロブルー(RS)の暖色のアンダートーンが上に来ます。貼付のグラフ(グラフ5)がこれを表しています。このグラフでは奇妙なことに、フタロブルー(GS)は最初、おそらくより暖色の兄フタロブルー(RS)より実際に赤いのですが、チタニウムホワイトと混ぜると、グリーンシェードが最終的に正しい位置を想定し、フタロブルー(RS)がたどる曲線を通過してグリーンの軸に沿って簡単に引き離します。この奇妙な突然の転換は絵具をゲルで伸ばしたときにも発生し、黄色と混ぜたときにはっきり感知され、多種多様なグリーンを生み出すことができます。

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カーボンブラック(PBk 7)/マースブラック(PBk 11)
 

 
 グラフ6
カーボンブラックとマースブラックマストーンをレギュラーゲルグロスと1対50で混ぜた場合
ロス・ブラボスの古い歌に「ブラック・イズ・ブラック」というのがありますが、もちろん絵具の世界ではこの決まり文句に真実味はありません。マストーンのスペクトルはわずかに差を示しつつ、スペクトル反射率チャートの底辺沿いに地味で平らな線を表していますが、混合物の検証後、事態は変わり、マースブラックの顕著な暖色アンダートーンが急に目立ち始めます。下のグラフにおいて、カーボンブラックとマースブラックは、CIELABカラースペースの2つの主要軸、すなわちA(レッド/グリーン)とB(イエロー/ブラック)のバランスがきわめて似た状態でスタートしています。しかし、各サンプルをレギュラーゲルと1対50の割合で混ぜると、カーボンブラックは本質的に動かず、中立に近い均衡を保っていることがわかります。一方、マースブラックでは、すぐに顕著な茶色がかったアンダートーンが現れ、レッドとイエローの四分円の下部で上に向かっていることがわかります。

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偶然の色の一致
 

 
 グラフ6
フタロブルー(GS)をハンザイエローミディアムおよびカドミウムイエローミディアムと1対3で混ぜた場合
フタロブルー(GS)をハンザイエローミディアムおよびカドミウムイエローミディアムと1対3の割合で混ぜる

ハンザイエローは家族の夕食に遅刻した招かれざる双子のようにカドミウムの反対側に座っています。多くの概念に反し、これらは「実物」の乏しい代用ではなく、画家のツールボックスの中で独自のひらめきと目的意識により本当に赤くなります。ハンザにはカドミウムの不透明さはないかもしれませんが、透明であるがゆえに、透明のグレーズ、深いグリーン、複合ブラックの本質的成分になることができます。カドミウムのがむしゃらな屈強さに比べ、ハンザは持ち前の明るい声で話します。
これらの機微を経験する良い方法は、2つの色がさまざまな混合物にどのように影響を及ぼすかを見ることです。例えば、カドミウムイエローミディアムをフタロシアニンブルーやキナクリドンマゼンタに混ぜると、チタニウムホワイトが混ざったような感じの濃く明度の低い色が生まれます。添付のグラフ(グラフ7)では、500nmを超えると明度が急上昇し、オレンジと赤の全範囲にわたり反射率が上昇することがわかります。他方、ハンザイエローミディアムを混ぜるとフタロブルー(GS)の飽和はかなり保たれ、明度を最低限の上昇にとどめた状態で色相がグリーンに移行するにとどまります。ここでも示されないことは、透光性も保たれるという事実、すなわち混合物は依然としてグレージングや、豊かで濃いグリーンの開発に最適であるということです。

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パイロールレッド(PR 254)/カドミウムレッドミディアム(PR 108)

ハンザと同様、パイロールレッドとそのカドミウム系派生色も、マストーンより混色時にしばしばドラマが演じられます。カドミウムレッドミディアムもパイロールレッドも、そのままの濃度では不透明であり、スペクトルもごくわずかな違いがあるだけで密接に呼応しあっているため、パイロールレッドの方がわずかに暖色で、彩度が高く見えます。しかし、チタニウムホワイトと混ぜた場合に起こる鋭い分岐についてはほとんど何の説明にもなりません。パイロールとカドミウムはほとんどレッドの波長と等しくなっていますが、パイロールレッドはオレンジで依然として高い反射率を維持しており、最も重要なことは、グリーン全体とブルー区域で吸収がかなり強くなり、その後バイオレットでわずかに上昇を示していることです。その結果、パイロールレッドの色合いはより中立的なカドミウムレッドミディアムより豊かで、深く、チョーク状ではないように見えます。想像できるように、こうした着色力と彩度の差は、これらの色が主な役割を果たすほぼすべての混色において繰り返されることになります。
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 グラフ8
パイロールレッドとカドミウムレッドミディアムのマストーン
 グラフ9
パイロールレッドとカドミウムレッドミディアムをチタニウムホワイトと1対10で混ぜた場合
 

 

不透明な顔料を通して見る

このセクションでは合成酸化鉄と天然酸化鉄の組み合わせから始めます。2つの違いの根本はほぼすべて粒径にあり、天然アースカラーは通常どっしりした大きな粒子でできた顔料ですが、それと比べると合成酸化物はきわめて小さい粒子です。前半で述べたように、粒子が小さくなればなるほど、表面積全体が急増するだけでなく、光分散力も減少します。顔料と光との相互作用は、分散力を最低限にとどめつつ、吸収と反射を通してのみ行われ、いずれも着色力を最大化し、透過性を高めます。その結果、より明るい混合物とより透明なグレーズが必要な場合、合成酸化物が好ましい選択になることが多いのですが、より標準的なアースカラーの場合、マストーンに依存すると驚くべき不透明度と濃度を表現することができるでしょう。

バーントシエナ(PBr7)/トランスペアレントレッドアイアンオキサイド(PR 101) 


 
 グラフ10
トランスペアレントレッドアイアンオキサイドおよびバーントシエナをチタニウムホワイトと10対1、3対1、1対1、1対3、1対10で混ぜた場合
この分類では、なじみ深いバーントシエナと、色相が似たトランスペアレントレッドアイアンオキサイドを対比します。どちらも中間色のアースカラーとしてスタートしますが、バーントシエナの方が少し明るく、オレンジからイエローの暖色区分で反射率がわずかに高くなります。一方、トランスペアレントレッドアイアンオキサイドは赤みがかった豊かなマホガニーブラウンを表現し、レッドの寒色区分の深いところで反射率が最高に達します。しかし、そのいずれも、サンプルをチタニウムホワイトで着色し、またはゲルと混ぜてグレーズを形成するときに起こる変化について何の説明にもなっていません。例えば、グラフが示すように(グラフ10)、トランスペアレントレッドアイアンオキサイドは、チタニウムホワイトと1対1の割合で混ぜたときでさえ、彩度、すなわち飽和度が劇的に跳ね上がります。対照的に、バーントシエナは、彩度が非常に低いままで、出発点を大きく超えて上昇することは決してありません。チタニウムホワイトのみと混ぜると、ほとんどすべてのブラウンの紛れもない寒色の粘着性パステルになるからです。同様に、トランスペアレントレッドアイアンオキサイドは、グレーズを作ると、明るく燃えるようなオレンジのアンダートーンを持つ豊かなブラウンになりますが、バーントシエナは常に少し暗い感じを与えます。

追加的な視覚資料にリンク

イエローオキサイド(PY42)/トランスペアレントイエローオキサイド(PY42)

イエローオキサイドとトランスペアレントイエローオキサイドは、おそらく色指数指定が同じPY42であるため、その違いがわかりにくいかもしれません。実際、画家の多くが同じ色指数指定の顔料は同一不変であると想定していることがあまりにも多いのです。しかし、グレージング用あるいは着色剤や混合物用に黄土色を選ぶ場合は特に、この話が真実から遠いとは言いがたいでしょう。チューブから出したての時に違いがわかります。イエローオキサイドの場合、最初は明るく非常に不透明ですが、トランスペアレントイエローオキサイドの場合、はるかに深みがあり、ローシエナのマストーンとほぼ同じで、当社の製品の中でも最も透明な色の一つです。その後、違いが大きくなるのですが、化学的性質というよりも、専ら粒径の問題に起因します。 

 

イエローオキサイド(PY42)/トランスペアレントイエローアイアンオキサイド(PY42)

貼付の最初のグラフは、どちらの色もマストーンで、一般的なグレージング用の割合と同様、1対10でレギュラーゲルグロスと混ぜたものを表しています。明るい2本の線で示されたイエローオキサイドは、強い不透明度を忠実に表し、重量の10倍に相当する透明のゲルと混ぜた割にはほとんど変化していません。混ぜる前よりやや明るくなっているというだけでなく、暖色がより顕著になり、スペクトル曲線全体の形状は保たれています。他方、トランスペアレントイエローオキサイドは劇的に変化し、イエロー、オレンジ、レッドの波長帯で急上昇し、非常に暖かい色調を呈しています。

貼付のグラフ(グラフ12)は、ゲルの量を変えて加えたときの彩度の推移です。見てわかるように、イエローオキサイドは全体に比較的平坦な状態を保ち、加えるゲルの量を増やすとごくわずかに上昇します。イエローオキサイドは、どれほど透明にしても適度な飽和の落ち着いた色のままです。他方、トランスペアレントイエローアイアンオキサイドは彩度全体がかなり下がり始めますが、ゲルを加えると実際に飽和度が劇的に高まり、遂には1対1の点でイエローオキサイドを超え、さらにその後も上昇し続けます。逆説的に言えば、おそらくゲルで伸ばすにつれて色は明るさを増し、光沢あるグレーズを作るには適した選択であるという証明(もし必要なら)となります。

追加的な視覚資料にリンク 

   
 グラフ11
イエローオキサイドとトランスペアレントイエローアイアンオキサイドをレギュラーゲル(グロス)と1対10で混ぜた場合
 グラフ12
イエローオキサイドとトランスペアレントイエローアイアンオキサイドをレギュラーゲル(グロス)と1対10で混ぜた場合


 

ニッケルアゾイエロー(PY 150)/グリーンゴールド(PY 150, PG 36, PY 3)

この2色は、一つは単独の顔料でもう一つは混合ですが、着色やグレーズに使用すると驚くほど色が変化することがあります。例えば、グリーンゴールドの場合、初めは暗く彩度の低いライムグリーンのマストーンですが、白い面にこすりつけると、あるいはゲルと混ぜて伸ばすとアンダートーンが現れ、その途端、彩度がはるかに高い明るいイエローグリーンが目に入ります。これは他の手段では容易に出せない色です。これを表にしたスペクトル曲線では黒っぽい線が最初は低い位置にあることがわかりますが、これはそのままの濃度を表すものです。レギュラーゲルグロスを加える量を増やすと、グリーンとイエローの区分(500- 600nm)で反射率が劇的に上向きに振れ、グリーンゴールド1に対し、レギュラーゲル50の割合で極端に薄めても、ブルーとバイオレットが同時にほぼ完全に吸収される状態が持続します。それは寒色帯の完全な抑制であり、光に対して目が最も敏感になる560nmあたりでピークとなり、この色の印象的な鮮明さの一因となっています。

最後はニッケルアゾイエロー(グリーンゴールドを構成する色の一つ)ですが、これも同じような動きをし、そのままの濃度ではブラウンがかったローシエナのような色調から始まり、その後ゲルを加えるにつれ半透明のオレンジと黄色がかったアースカラーを呈し、最後には明るく透明感のあるハンザイエローミディアムを思い出させるピッチの高い黄色い色調になります。貼付のグラフは、チタニウムホワイトだけでなく、ゲルと混ぜたときの彩度の推移を表したものです。チタニウムホワイトを1対1で加える間ずっと、最初はニッケルアゾイエローの彩度は高まりますが、最終的にチタニウムホワイトがある色に加えられたときに持つ中和的影響に屈するのは興味深い点です。

追加的な視覚資料(ニッケルアゾイエロー)にリンク
 
追加的な視覚資料(グリーンゴールド)にリンク


   
 グラフ13
グリーンゴールドをレギュラーゲルグロスと1対10、1対50で混ぜた場合
グラフ14
Mixed ニッケルアゾイエローをチタニウムホワイトと10対1、3対1、1対1、1対3、1対10で、レギュラーゲルグロスと3対1、1対1、1対3、1対10、1対50で混ぜた場合
 


 

Golden Artist Colors社


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