壁画:メーカーの視点を知るための推測


By Mark Golden

アクリル絵具の歴史が60年となった現在、屋外環境におけるアクリルの耐久性について、非常に詳細なデータによる理解が出来ていると思います。私は、フィラデルフィアにあるローム&ハース社の試験施設において、初期のアクリルを木製パネルに塗装し1954年から暴露されている試験サンプルを見ましたが、それは非常によい状態でした。塗膜に亀裂はなく、退色もほとんどありません。また南フロリダでの、金属パネルの塗装サンプルも見ましたが、それは暴露3年で完全に劣化していました。

アクリル絵具で描かれた屋外壁画の具体的な経年データはありません。20年以上もったとか、2年ももたなかったというような逸話のような情報なら山ほどもあります。ゴールデンアクリル絵具で描かれた最も古い壁画は、エルサレムにおいてアーティストのアーチー・ランドが創案、企画し描画したものです。壁画は「創世記」を描写したもので巨大な7枚のパネルからなります。過去24年間で黄色の部分は著しい変化が起こりましたが、それ以外は良好な状態です。カナダ・アルバータ州エドモントンにあるノーマン・イェーツによる壁画「西と北」は、4ft×8ft(1.22m×2.44m)のパネル数百枚から構成されていますが、ほとんど変化せずカナダの気候に耐えています。マンハッタンのハーレムにある、故エヴァ・コッククロフトによる壁画「スーラ:グランドジャットへのオマージュ」は1986年に描かれましたが、細かな剥離がひどく、赤と黄がパステルカラーに変色しています。これらの壁画はどれも大体同じ時期に描かれていますが、それぞれの気候や条件は大きく異なります。

壁画は何が原因で、数十年も持ちこたえたり、完成後すぐに劣化したりするのでしょうか。残念ながら、私たちはこれらの公共美術作品に作用する現象原理を理解し始めたばかりです。そうしている間にも、著名な作家の壁画が劣化していますが、その多くの原因は材料によるものではありません。私たちの公共遺産を救うことを使命とするグループは、Heritage Preservation(前身はNational Institute for Conservation:遺産保存協会)が援助しています。このグループはRescue Public Murals(RPM:公共壁画救助隊)と呼ばれ、美術史や壁画、美術保存に多大な業績を持つTimothy W. Drescher博士とWill Shank氏が指揮を取り、2006年にスタートしました。グループの使命は、全国にある重要な作品の目録を作り、作品を破損や崩壊に導いた条件を評価し補修の可能性を探ることです。RPMは最初の仕事として、ウェブサイトに最良の壁画施工法のセクションを作りました。

AMIEN(Art Material Information and Education Network:画材情報教育ネットワーク)管理者のMark Gottsegen氏による新たな活動は非常に素晴らしいものです。彼は既に絵画修復家や壁画家の仲間から、屋外壁画に使われたコーティング材が直面する様々な環境条件に対してどのように耐えるのかをモニターすることの確約を取り付けています。AMIENは、小型の分光光度計を使ってコーティング材を測定することで、多くの推測や風説を真の情報に置き換えるデータを集めていくでしょう。私たちはやがてAMIENが重要な壁画プログラムへの援助を多くの団体から得られることを望みます。それは最少の投資で情報を改善し最良の施工方法を確立するという多大な成果を得るでしょう。AMIENは現在、この作業と使命の初期段階にいます。彼らはRPMと協力し、公共美術が何世代にもわたって鑑賞できるよう保存するためのゴールに向かって組織を進めていきます。


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