ストレッチャーとストレーナー
作業のコツ

By David Headley

ストレッチャー(留め継ぎ木枠、または斜め継ぎ木枠)は、拡げて弛んだカンバスをピンと張ることができます。ストレーナー(角を固定した枠)を引っ張っても緩んだ画面を張ることはできません。これらよく使われる二種類の支持体の機能の違いはこれだけです。しかし、これがあらゆる問題の出発点でもあります。支持体が拡がるか拡がらないかは、基本的な構造に関係します。描き終えた絵が平坦になるかどうかは、ストレッチャーの枠木と横木(桟)の製作に使用する木の真直度と強度によって決まります。

ストレーナーを作る際、最も時間を費やすのは木材の選定です。一つ一つ手にとって確認する必要があるからです。歪みや湾曲を調べるためにそれぞれの木材全体をじっくり観察します。まっすぐな木材を選ぶために先端から見て確認しましょう。使いやすそうな木材を選んだら、平らな床に寝かせて再度確認します。左右に揺らそうとしたときに木材全体がグラグラするようなら、それは駄目です。木材が平坦でないのに、ストレーナーが平坦になるはずはありません。(悪い木材が1つあると、残りの3つが良い木材であっても、最終的に歪んだ作品になってしまいます。)材質が良いと、あまり上手でなくても平坦なストレーナーを作ることができますが、材質が悪いと、どんなに腕前がよくても平坦なストレーナーを作ることはできないでしょう。秘訣はひとえに木材にあります。

留め継ぎしたストレッチャー枠木を組み立てるには、平らな作業面が必要です。平坦な木材を選んでも、若干の湾曲や「突起」はあるものです。突起がある面を上にしてバーを作業面に置いてみましょう。4つの角が作業面(最終的には絵をかける壁面)に接するはずです。

ストレーナー製作の秘訣は、最初に釘やネジで角を留めないことです。釘やネジで留めると、ストレーナーは直角にならず、歪みが生じ平らになりません。釘やネジを使う代わりに、まず留め継ぎしようとする面に木工用接着剤を塗り、しっかり合わせて角を接着させ、密着圧をかけるために外周をマスキングテープで巻いて角を密着させ接合を保ちます。ストレーナーを直角にするには、メジャーを使って両対角線を測定します。作業面に平らに置き、糊付けしてテープを張ったばかりのストレーナーを対角線上にゆっくり引っ張り、両方の対角線が同じ長さになるまで続けます。元に戻ろうとして直角にならなければ、1つの角に重しを置いて接着剤が定着するまでそのまま置いておきます。

一晩置いて接着剤を乾燥させます。この工程を短縮すると良いものができません。翌日、留め継ぎした角に外側からドリルで呼び穴を開けた後ネジを差し込みます。留め継ぎした角に釘を打つことはお勧めできません。(木材用接着剤は変形に対する強度が弱いため)釘を打ち込むことで接着した接合部に亀裂が生じることがあるからです。

75センチを超えるストレーナーには横木を加える必要があるかもしれません。横木をぴったりの長さに切断し、ストレーナーの枠木に合うよう、パイプクランプ(固定金具)を使って「突起」面を上にして適切な場所を糊付けします。この場合も、一晩置いて接着剤を乾燥させます。

ストレーナーまたはストレッチャーの枠木に縁(へり)をつけるには、ストレーナーの外周に細長い薄板を貼り付け釘で打ち付けます。この方法により、ストレーナーの歪み耐性が高まります。(ストレーナーの表面に四半円形の補強材を打ちつけるのが一般的な方法ですが、この方法は歪み耐性を高めることはできません)。薄板は、ストレーナーのサイズに合せてさまざまな幅と厚みのものを購入することができます。

適切に実行すれば、この製作方法なら必ず平坦で強度の高いストレーナーができるでしょう。ちゃんとしたストレーナーを作ることは手間のかかる退屈な作業です。そして画家が時間をかけたくない工程であることも理解できます。誰でも一刻も早く絵を描きたいのですから。木材を選ぶのに1時間もかけたい人がいるでしょうか?木材を切ってアトリエを埃だらけにしたい人がいるでしょうか?大きなストレーナーを作るには広々とした平坦な作業面が必要不可欠ですが、それを備えたアトリエというものをほとんど見たことはありません。そもそも「パイプクランプ」とは何でしょう?誰もが平らで真四角のキャンバスに絵を描きたいと思っていますが、それを作るために時間と労力をかけたいと思う人はほとんどいません。どうすればよいのでしょうか?

ストレッチャー枠木は、標準的な長さのものであれば画材店で購入することができます。上に述べた木材選別方法を実行するのであれば、画材店レベルの品質をもつ平坦で完璧に四角のストレッチャー枠木を購入できるでしょう。組み立てるときに留め継ぎ部の「ほぞ」に接着剤を1滴塗ると、キャンバスを張ったときにも、ストレッチャーは四角形を維持することができます。後日、木製のクサビで枠を拡げる必要が生じた場合、先程の接着剤が緩やかに変形し、ストレッチャーを正常に引っ張ることができます。

画材店で入手できない長さが必要なとき、あるいはたくさんの横木を必要とする頑丈なストレッチャーや特殊なタイプや変わった形状が必要なときは、さまざまなメーカーから特別仕様のストレーナーとストレッチャーが提供されています。ただし、自分で作る場合の倍の費用がかかるでしょう。

特別仕様のストレーナーを、「だぼ」(合せくぎ)、角の三角補強材、両端をネジで留めた重ね継ぎ横木で接合すると、きわめて強度が高くなります。最も強度が高いストレッチャーバーは2個の木材、すなわち薄板のへり材と枠木で作られたものです。この方法で作られたストレッチャー枠木は、I型梁と同様の強度が得られます。1個の木材を削って作ったストレッチャー枠木は、湾曲に抵抗する力があまりありません。I型梁のように作られたストレッチャー枠木は、拡げる力が強くても湾曲しにくいと思われます。

Knape&Vogtボールのついた吊りボルト
右:完全なKnape&Vogt Tite Joint Fastner
機械的な金具のついた拡張可能なストレッチャーは広く使用されています。これは、1950年代にジェームズ・レブロンがフォーマイカ(合成樹脂製品名)製カウンター上部の取り付け部に使用されている一種の留め具を使って開発したものです。その留め具は、コーヒーショップの長いカウンターの基板を年に何度か調整してフォーマイカの天板に亀裂が生じるのを防ぐためのものでした。レブロン氏がストレッチャーの構造にKnape & Vogt®の特許Tite Joint Fastener(タイトジョイントファスナー)を使用したことは、戦後の大型絵画の革新的な拡張手法として、近代美術館でも紹介されました。

この「革新的手法」には概念的に大きな欠落があり、それが致命的な欠陥になっています。タイトジョイントファスナーは接合部を拡張するのではなく、引き寄せるように設計されています。タイトジョイントファスナーの「ボール」部品を使用して、(Knape & Vogtが提供する「締め付けボルト」や「ロッキングリング」ではなく)「吊りボルト」で接合する方が適切でしょう。こうすると、もともとの設計の欠点をカバーすることができます。それによって接合部を拡張することができ、吊りボルトをストレッチャー枠木にネジでしっかりと留めることにより機械的強度も増します。(対照的に、タイトジョイントファスナーで提供される「締め付けボルト」は大きすぎる穴の中で浮遊し、拡張しても接合部の強度は高まりません)。レブロン氏の「革新的手法」は精巧ではありますが、機械的ストレッチャーを作る場合、この金具を使用するには、上に述べたKnape & Vogtのボールや吊りボルトの手法が唯一の方法です。

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