Golden History

 

GAC Products on Inkjet Prints

 establishing best practices

 

インクジェット印刷用の製品

By マイク・タウンゼンド

テクニカルサポート部にいただくメールや電話の件数から、インクジェット印刷を作品に取り入れる作家の数が増え続けていることがわかります。高品質の印刷を重視する作家もいますし、印刷をオリジナル作品制作の出発点と考える作家もいます。この章では、材料と使用方法、デジタル印刷物に当社の製品をお使いいただく場合の製品の相互作用について述べます。

印刷システム

現在、作家には、前処理をした用紙、キャンバス、特殊なプリンター、インク、保護コーティング、ワニスなど、さまざまな選択肢が用意されています。販売管理にとどまらず、印刷の性能を高めるために、各メーカーはプリンター、インク、基底材を一つのシステムとして開発しています。たとえば別の基底材を使う場合、受理層によっては、推奨された基底材の面と同じようにインクが浸透しないこともあり、その場合、印刷の質は損なわれます。確立したシステムを出発点とすると、将来の実験の基準になります。

基底材

基底材をインクジェット印刷に使うことができるかどうかを判断する重要な条件は、インクシステムに対してどのくらい受理性があるかということです。基底材の物理的特性はその後の製品の使用に影響を及ぼします。

一般的な基底材のメリットと潜在的な問題を項目別に記載します。

インクジェット用紙光沢のある写真用紙からつや消しの用紙まで、さまざまな種類があります。特にインクジェット印刷用に製造された水彩画用紙もこのグループに含まれます。インクの性能に関わらず、色の変化や黄ばみを生じる紙やコーティングも数多くあります。したがって、すべてのインクジェットペーパーが保存に適しているとは限りません。

インクジェット用キャンバスプリンターでの使用を目的としたキャンバスは、表面の吸湿性があまり高くないため、コーティングやシールがしやすい傾向にあります。適切にコーティングすれば、キャンバスのテクスチャーが保たれ、絵画のように枠に張り額に入れることもできます。これらのプレコートはすべてのインクに対する受理性を備えているわけではなく、メディウムやワニスを塗るとはじくこともあります。紙と同様、インクジェット用キャンバスのコーティングには保存の問題がつきものです。

コーティングを施していない基底材多くの作家が、綿100%の紙など、デジタル印刷用のさまざまな素材を試してきました。たとえ長期保存に耐え、美術品に適した素材であっても、特にインクジェット印刷用に開発されたわけではないために表面がインクを受け入れにくい素材もあります。inkAIDTMや他のインク受理層のように適切なサイジングを施さなければ、出来上がった印刷の質は損なわれるかもしれません。受理層を塗らずに使う場合、吸湿性の高さから、多孔質の表面を封じるために何層も下塗りをする必要が生じるかもしれません。

インク

インクジェット印刷に使用できるインクは、染料をベースとしたインクと顔料インクの2種類です。媒材となる溶剤に溶ける着色剤が染料です。性質上、光、特にスペクトルの紫外線部分に曝されると退色しやすくなります。顔料は、大きく溶解しない粒子で、結合力がきわめて強いため紫外線に曝されても分解しにくい性質を持っています。

顔料系の方が耐久性は高いですが、染料を主成分としたインクセットの方が色域は広いです。もちろんこれは一般論ですが、作家はそれぞれ、どちらを選ぶか決定しなければならないでしょう。その選択次第で、使用する基底材とその後のコーティングもほぼ決まります。染料を主成分としたインクは一般的に顔料インクより水に敏感ですが、問題を最小限に抑えるように作られた基底材を使うことにより対処することができます。顔料系は染料より鮮明度が低い傾向にありますが、耐水性が高いため、思いがけない反応が生じることも少なく、コーティングの選択肢が広がります。顔料インクを使用した場合、水性コーティングを直接塗ることができます。

シールコート

シールコートの働きは基底材の吸湿性を低くすると同時にインクをカプセル化することで、それにより上塗り材料との反応の影響を受けにくくします。基底材のインク受理層がある場合にもこれをシールします。最初に塗布したシールコートの吸湿性と反応の度合いは基底材によって異なります。シールすることにより、ワニスの塗付膜が均一化され、後に塗る製品の塗付と扱いが容易になります。均一の膜ができれば、作家は絵具、ゲル、メディウム、あるいはワニスで自由に「リ・マーク」すること(色やテクスチャーにより印刷物に後から手を加えること)ができます。

多くの場合、たとえ「耐水性」と考えられているシステムであっても、絵具の上に水性コーティングを直接塗って色がにじまないということは稀でしょう。スプレーで吹つけると最も均一な膜ができます。速乾性のシールコートを薄く塗れば、インクのにじみや画像のゆがみの発生を最小限に抑えることができます。

水性コーティングが使えるとわかれば、次は、このコーティングに必要な性能と最良の塗付方法を決定します。たとえば、スプレーの場合、GAC 500とエアブラシトランスペアレントエクステンダーを混ぜたものを使うと全体にうまくコーティングすることができますが、筆塗りの場合、ソフトゲル(グロス)を水で薄めたものを使う方がよいでしょう。表面をシールするには薄い膜がベストです。吸湿性の高い紙の場合、適切にシールするためには何度も塗る必要があるかもしれません。グロス製品を使うと、セミグロス製品やマット製品を使うよりも色の透明感と深みが増します。

水性コーティングを直接塗ると画像がすぐににじんでしまう場合、最も実践的な解決方法は、下塗りのシールコートとしてMSAワニス(グロス)かエアロゾルアーカイバルワニス(グロス)を塗ることです。溶剤をベースとしたこのアクリルワニスは、水溶性インクやインク受理層と反応しないはずです。(MSAワニスは06.7.1に国内発売予定)

 

 

印刷面のシール法3種

左上 ゴールデンアーカイバルワニススプレー
右上 ゴールデンMSAワニスを筆塗り
左 MSAゲルをスキージで塗付

これらのミネラルスピリッツアクリル(MSA)をベースとした製品は水に敏感なプリントを傷めない

「リ・マーク」

相性のよい塗膜で印刷物にシールをしたと想定して、表面の扱い方を説明します。最初のシールコートがインクと基底材の安定を助けることで描画時間が長くなり、泡立ちが抑えられてスムーズに塗付することができ、印刷面の上に描画することもでき、絵具、ゲル、メディウムを薄く塗ることも厚く塗ることもできます。インクジェット印刷に「リ・マーク」するには、一般的に下記の製品を使用することができます。

ゲルとメディウム過剰な泡立ちや水に敏感なインクのにじみを避け、印刷を損なわないようにするためには注意が必要です。セミグロス製品やマット製品を好む作家もいますが、透明感や画像の鮮明さを保つための標準的な推奨事項はグロスゲルを使用してテクスチャーを出すことです。MSAワニス(サテン)などのつやを抑えたトップコートで作品を仕上げることにより、後でグロスのつやを修正してください。

カスタムMSAゲル (国内未発売)ミネラルスピリッツとアクリルを主成分としたこの製品は、1つの製品に耐水性の向上、テクスチャー感の追加、UV保護がすべて含まれているため、1度塗るだけでよく、複数の材料を塗る必要はありません。しかし、MSAゲルを印刷物全体に使用するつもりではない場合、MSAワニス(グロス)を全体に下塗りすれば、ゲルに適した均質な面ができます。MSAゲルは紫外線光安定剤(UVLS)システムを含むものと含まないものがあります。

絵具とメディウムの混合ヘビーボディやフルーイッドなどのアクリル絵具はシール後の印刷物の「リ・マーク」に適しています。専門家用の絵具には、顔料の耐光性と色彩範囲に大きなメリットがあります。イリデッセントカラーやインターフェアランスカラーなどの特殊な色を使うと、デジタルでは表現できない要素を印刷に加えることができます。半透明のグレーズを作り出すために絵具をゲルやメディウムと組み合わせることもできます。グレージングの理解を深めるにはJust Paint 12の「輝きの効果の定義」という章をご参照ください。

ワニス
ワニスは退色や黄ばみなどの変化を軽減することにより重要な保護を提供します。保護に必要なコーティングの回数は塗付の方法と材料によって異なります。詳しくは、Just Paint本号のテスト結果や他のインフォメーションシートをご参照ください。

MSAワニスにもポリマーワニスにも、退色を抑えるために紫外線安定剤(UVLS)が含まれていますので、基底材のシールもUV保護も1つのシステムで行いたいと思う作家もいるでしょう。どちらの製品も、溶剤や水に対する耐性の問題さえなければ、シール面に使うことも、印刷面に直接使うこともできます。これらの製品には耐水性がありますが、印刷に防水処理を施すわけではありません。しかしワニスを塗ると、一般的なクリーニングと取り扱いが可能になります。

左:紙やキャンバスの表面をソフトゲルでシールし、乾燥させる

右:貼り付け用の糊としてソフトゲルを薄く塗る

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左:ゲルが乾かないうちにキャンバスにプリントを均一に貼り付ける

右:プリントが反り返らないように重しを注意深く置き、乾燥させる

ミクストメディア

ミクストメディアを作品に使おうとする場合は必ず、接着と相性を確認するために製品の関係を理解することが重要です。たとえば、鉛筆や木炭などの繊細な画材で描画する場合は特に、層と層の間をシールすることが必要な場合もあります。印刷物に使う前に各製品を試しに塗り重ねてみると、成功と失敗の違いを知ることができるでしょう。ミクストメディアの作業にインクジェット印刷を使用する場合、最も重要な問題は、接着と、材料によって印刷のにじみが生じないかどうかという点です。

Preparing Prints for Use in Collage

コラージュ用の印刷の準備

印刷可能な基底材に限定して制作するよりもむしろ、絵に印刷の要素を加えようとする作家もいます。コラージュの場合、印刷の耐性に対処すれば、作品での他の紙の要素と同様に印刷物を使うことができます。

キャンバスやパネルへの印刷貼付

アクリルのメディウムとゲルは、印刷を貼り付ける接着剤として使用することができますが、耐水性の低い素材を使って印刷する場合、まずこの点に対処する必要があります。たとえば、パネルに貼り付けた水彩画用紙に、染料を主成分とした耐水性の低いインクでジークレー印刷したものを密着させるなどの場合があります。

紙の裏にソフトゲルを12回薄く塗ることにより、実際にパネルに紙を貼り付ける前に吸湿性を封じます。パネルの表面にも同時にソフトゲルを塗り、パネルの吸湿性を封じます。このように前もって表面をコーティングしておくと、実際の接着工程でソフトゲルが少なくてすむうえに接着力が強くなります。この工程により、端が丸まったり、2つの材料の間にゲルがないために空洞が生じたりすることが少なくなります。大きな印刷物を貼り付ける場合、2つの素材が接着可能な状態になるまでゲルが湿った状態でなければならないため、きわめて難しくなる可能性があります。

実験の重要性
デジタル印刷の世界は日進月歩です。Just Paint本号が公開される頃に新たな基底材や着色システムがいくつも発売されていることも十分にありえます。相性を確認するには材料を繰り返し実験することが重要です。インクジェット用のキャンバスや紙には特殊な受理層が施されているため、こうした膜がある種の材料の接着性を損なうこともあります。耐水性とうたわれているインクでも、アクリルのゲルを厚く塗ると水分が表面に長時間残留するために画像のにじみや色の変化が生じることもあります。ある製品がある種のインクとある種のキャンバスにうまく作用したからといって、別のインクやキャンバスにもうまく作用するとは考えないでください。

まとめ
耐久性のある作品を制作しようとする場合、情報収集と実験に時間をかける心づもりが必要です。この新規のデジタル媒体は作家に多くの選択肢を与えることができます。単なる印刷媒体として使うことも、はるかに複雑なミクストメディア作業の一部として使うこともできます。そのため、この媒体の耐久性については未解決の疑問がたくさんあります。この技術の範囲を押し広げようとする作家が増え、作品の存続性にもっと自信を持ちたいと考える顧客が増えるにつれて、製品は改良され続けるでしょう。この分野が進歩する限り、この媒体を使ってできることを研究し続け、実践的なアイディアを提供し続けることが私たちの目標です。