Golden History

 

用途に合わせてご試験ください

Sarah Sands

 

「用途に合わせてご試験ください。」こんなお決まりの締めくくりがよく当社のeメールの最後に書かれ、話はそこで終わりになります。ごく基本的なレベルでいえば、この意味は単に新しい材料やテクニックをユーザーが考えている使用法にできるだけ近い条件で試すということです。それ以外の場合には美術の探偵や法医学者のようになる必要があります。これから述べることは、試験の背後にある基本的な概念を調べ、それがみなさんの制作プランや問題の解決あるいは知識を増やす上でどのように役立つかということです。

 

最初の質問はおそらく何故私たちがまず試験をお願いするのかでしょう。というのも、当社が作るものの大半については技術シートを既に作成しているではありませんか。それに優秀な技術サポートチームがみなさんのどの質問にもお答えすべく待機しているのではないでしょうか。実を言えば、どんなにゴールデン社の技術サポートや研究室が材料の性能試験を行い最善の策を用意したとしても、特殊な状況が発生することは避けられませんし、材料やテクニックの可能な組み合わせは私たちが十分だと思っている境界を越えて常に広がっていくのです。こうした場合、選択肢を吟味し結果を評価する能力が大切です。またここには教育および所有に関する要素も含まれます。こうした意識で材料に取り組むことは、制作過程をよりよく把握し材料をよりうまく使いこなすことになるのです。

 

どんな試験にもある基本的な特質があり、初期段階でそれを確立することが大切です。最も基本的なことの一つに「基準」の概念があります。簡単にいえば、基準とは測定や比較の際の標準あるいは初期条件のことで、例えば修正を何ら加えていない状態の材料、表面の最初の状況、あるいは他の試験を判断するための対象となる希望する結果などです。二番目に挙げられるのは記録をつけることです。正確な記録をつけることは大切なことであり、それによって試験の繰り返しが可能になり解決策を工夫できますし、また当社へご相談なさる際にはみなさんの技法理解の助けになります。

一般的な項目:

制作の各ステップに関するスケジュールと正確な説明

材料の詳細なリスト、関連製品の製造ロット(右図参照)あるいは購入日付を含む

混合物の比率

試験時点における環境条件

試験体の大きさ

観察記録

 

右図:ロット番号は容器の底かバーコードの横に記入されている。

 

見落としたり取り上げなかったりした些細なことが本質的な要素であることはよくあるので、出来る限り完全を期してください。文書記録だけでなく、写真や描画材料の残り、問題や結果に関する物的証拠などはいずれも重要です。そしてもちろん、どれにも正確に記載したラベルを貼り付け、将来また参照できるように同じ場所に安全に保管してください。ここまで言いますとみなさんは冗談ではないと思うでしょう。「どこまでやれというのか?」 歯磨きを忘れないでおくことの方が簡単でしょう。でもまだあきらめないでください。これまでに述べたことの一部を実行するだけでも進歩の助けになるのです。

 

三番目の項目は実際の試験を考案することです。始める前にゴールとパラメーターを決定するのです。

最終的に何を成し遂げたいのか?

あなたの制作は期限がない実験的なものなのか、それとも非常に正確に焦点をあてる必要があるのか。

試験について、既に分かっている要素や性質は何か。

 

こうしたことを、出来る限り徹底的に細かい点まで書き出してください。反対にあまり評価する必要のないもの、しなくてもよいものはないでしょうか。例えば、温度コントロールや表面を水平に保つ必要性などがあるかもしれません。これらの問題は試験の範囲や見通しを設定するのに必要なことです。よくある失敗は急ぎすぎることです。急がないでください。ここで時間を取ることは後々の労力の節約になりますし、その結果が有益になるのは十分に考え計画した場合だけなのです。まだ前進するための最善策がはっきりしないでしょうか。あるいはまだ私たちのいうことは馬鹿げているとお思いでしょうか。ご連絡ください、喜んでプランの作成をお手伝いします。

 

やがて描画のための画面を作らなければならない時がやってきます。幸いにして、それは完璧あるいは精巧である必要はなくシンプルなのが普通で、よく調整されたパネルやキャンバスで十分です(テクニカルシート「支持体の準備」を参照してください)。しかし、試験の内容や工程を出来る限り正確に再現しなければならない時があります。いずれの場合も、開始前に必要な材料やステップのチェックリストを作ってください。そして前もって必要なものを計画してください。どの試験においても同じ材料を使い同じ制作過程に従うことが、不明な要素を出来る限り取り除く上で大切です。さらに問題のある箇所については全く同じ製品を置いておく(理想的には同じ容器や同じ製造ロットのもの)ことが問題回避には大切でしょう。大きさも見過ごしてはならない要素です。制作する大きさにおける情報はあるでしょうか。例えば30cm四方のパネルによる試験では、壁画の計画に必要な情報は得られないでしょう。最後に、試験が複雑になったり時間がかかったりする場合には制作過程を飛ばしてしまいやすいので、必ず各項目が終了するまではチェックしないようにしてください。

 

終わりに、信頼性の現実的な限界に留意してください。十分にコントロールされ完璧な試験を、時間をかけて様々な条件で実行するつもりでもない限り、試験というものは完全な結果や信頼できる解決策を保証するとは限りません。とはいえ、問題を洗い出して可能な解決策を絞り込み、また新しい視野を得るために貴重な役割を果たすのは間違いありません。

 

いくつかの基本的な試験

 

作家との触れ合いのなかで、いつも繰り返し出てきた話題があります。ここに示すのはこうした問題に取り組むための一般的で役に立つ試験の一部で、次のように分類されています:一般的な材料と用法、接着性、ワニス、新しい材料、問題解決。

 

一般的な材料と用法

 

壁画を描き上げたあとにゲルをローラーで塗装できるかどうか迷っていますか?制作した家具の風合いがどう見えだろうかとお考えですか?仕上げた絵に初めて遮断コートをかける準備をしていますか?

 

ちょっと待って考えてください。この作品は自分にとってどのくらい重要なのか?失敗の可能性について分かっているのか?結果に対し自信を持った上で進めなければならないのか、それとも予想もせず実験的なやり方でうまくいくのか?こうした場合、どの程度のリスクであればよいのかを決めることが大切です。

 

あるいはあなたの疑問は単に材料それ自体のことかもしれません。この二つのメディウムの違いは何か?モデリングペーストを1.3cm盛り上げたら乾燥はどのくらいかかるのか?疑問の種類にかかわらず、新しい技法や製品を試す場合にはその材料の性質を知ることがいつも大切です。そして練習用パネルを作る時間を取ることは、予期しない問題や予想外の結果を洗い出すだけでなく、繰り返しの効かないことが多い作品の制作を始める前に、すべてが期待に沿うものかどうかを確認する上で役立ちます。また将来それが貴重な参考資料にもなるでしょう。

 

こうしたパネルは、実験する材料や用法によって様々な形態をとります。役に立つ出発点としては、使おうとしているメディウムやゲルの基本性質を示したボードを作ることで、これは私たち研究者が「製品評価ボード」と呼んでいるものです。これはまず、よく調整した下地に白と黒の帯を交互に塗付したものから始めます。その上にそれぞれのゲルやメディウムを黒白の双方にかかるように乗せていきます(写真参照)。乾燥後はこのボードは透明性の判断に役立ちます。完全に固まったら、厚さ、粘性、流動性、硬さなどを記録しましょう。次にすることは、これらの製品と絵具(色)を101で混ぜたサンプルです。それぞれのペアを識別できるよう印をつけることを忘れないでください。新しい製品を手に入れたらこのボードに付け加えるか新しいボードを作りましょう。こうしておけば、それぞれの材料についての便利な早見表を手にいれることができるのです。

 

上図:製品評価ボードの一部。白黒の帯が交互にある下地にゴールデンのメディウムやゲルを単独および絵具と混ぜて塗ってある。

 

もう一つの簡単で実践的なガイドはご使用絵具の個々の色についてカードを作ることです。パレットナイフを使って各色をそのまま塗りつけて原色がどのようかを示し、次にそれをカード面に引き伸ばしてアンダートーン(足色:白地に薄く延ばしたときの色)を見せることです。次に絵具とチタニウムホワイトを110で混ぜたものをカードの別の部分に塗ります。これは色やその薄めた色がどのようかを見せるだけでなく相対的な着色力も示しています。最後に、絵具とゲルあるいはメディウムを110で混ぜてカードに塗り、透明にした時の色見本にします。

 

これらのボードやカード以外に、実際のパネルを作っておけば期待はずれや失敗さえも回避することが出来る場合が数多くあります。あまりに多くの大壁画、広大な擬似塗装プロジェクトあるいは貴重な絵画が、作家が新しい材料や道具、手段を理解するための時間を割かなかったことが原因となって取り返しのつかない損傷を受けているのです。こうしたパネルを作る場合は遭遇すると予想されるものと同じ条件を作り出すことが大切です。例えば滑らかで吸収性のある面で作ったものは、粗くてかつ吸収性のない表面の情報は得られないでしょう。キャンバスを張って少量の絵具を垂らしたものは、木の上にたくさん絵具を垂らすものとは同じにならないでしょう。

 

接着

 

「これはあそこに接着するだろうか?」というのはよくある質問で、それはほとんどの場合、異なる材料が接する変移点を含んでいます。この例としては、プライマーと下地材との接着、絵具とプライマーとの接着、そして最終的には絵具とワニスあるいはトップコートとの接着があります。あるいは作品そのものに使われる様々な材料の接着に関した問題でもあり、異種材料が同時に使われるコラージュやマルチメディア作品では特にそうです。こうしたものはどれも材料が剥がれる恐れが最も高い接着点をもつ代表です。

 

大半の接着試験は碁盤目試験と呼ばれる直接的で簡単な試験で行うことができます。これはASTM規格D3359に準じた方法で、最小限の準備と道具が必要です。片刃の剃刀かカッターナイフ、マスキングテープ、試験用材料面あるいは適切な表面が必要です。下地材(支持体)を準備し、描画材料を実際に使うのと同じ条件で塗ります。白地の上にホワイトを塗るとか、光沢のあるゲルの面にグロスワニスを塗るなど、塗ったものの見分けがつきにくい場合にはどちらかの材料を軽く着色して区別できるようにします。72時間以上、乾燥させてください。一辺がおよそ3.6cmの四角の中に約3mm間隔で平行な切れ目を入れていきます。次にその切れ目に直角方向に同じような切れ目を入れることで碁盤目状に切れ目の入った小さな四角ができます。一番むずかしくかつ重要なことは、最上層の描画材だけに確実に切れ目を入れることです。最後に普通のマスキングテープを切り取って碁盤目の上に貼り付け、爪の表面かスプーンの裏側でよくこすり付けます。そしてテープを180度反対方向にまっすぐ引き剥がします(上写真参照)。もし碁盤目が一つも剥がれなければ材料間の接着は優れていることがわかります。いくつかの目が剥がれただけで大半は残っている場合は、接着性は十分だといえます。しかしながら、もっと乾燥時間が経過した後に再試験するか、接着のよい他の方法を考える必要があるでしょう。大半あるいはすべての目が剥離したばあいは接着不良ですから、これを改善する手段を講じなければなりません。

 

上図:自動車用プライマーの上にゴールデンジェッソ(ホワイト):GAC20031で塗った場合の碁盤目試験結果。右端は24時間後、左端は48時間後、中央は72時間後。

 

どのようにこの試験が行われるかの例として、アクリル絵具にGAC200メディウム(国内未発売)を色々な割合で混ぜ、ガラスのような非吸収性の面に塗った場合の接着性の比較試験を見て見ましょう。これはまたもう一つのよくある質問でもあります。実際に制作に使うもの同じで十分に洗浄したガラスを用意します。その表面を5つに等分し、最初の区画には絵具を「そのまま」塗ります。これが基準となります。他の区画には絵具にGAC20010%、25%、50%、75%の割合で混ぜたものをそれぞれに塗ります。これを72時間以上、乾燥させます。アクリル絵具の接着性は時間が経たないと最大限にならないのです。その後、それぞれの区画について碁盤目試験を実施し、結果を記録します。あなたの要求に見合う結果は得られたでしょうか。もし得られたならば、さらに温度が変化した場合や薬品にさらされた場合の接着性を試す必要はありませんか?そのような必要がなければ、今度はガラス面をエッチングしたりサンドブラストしたり、あるいは非吸収性の滑り面専用のプライマーを塗ったりして同じ試験をしてみてください。

 

試験を怠った場合に失敗につながるよくあるケースとしては、不明なプライマーかワニスが塗られた面やよく知らない材料の表面に制作する場合、環境や化学的あるいはその他の条件などの初期の接着性を阻害し得る要因を考慮しかなった場合などがあります。例えばガラス面への接着がよいとしても、食器洗浄器に耐えるかどうかは別のことです。石によく接着する絵具があったとしても、それが水に浸かる噴水の一部だとすれば失敗するかもしれません。

 

ワニス塗付

 

ワニスの塗付は格別頻繁にされる質問で、それは塗付手段である場合か問題解決や修正の必要がある場合のいずれかです。ゴールデンではこの課題に関する試験を続けていますが、成功に導くために自分で出来る様々な手段があります。

 

見過ごされやすい試験範囲は、遮断コートやワニスを塗付した際の外観変化で、特に表面のテクスチャー、光沢、あるいは色彩の明るさや鮮やかさに関する点です。これらの点は、こうした材料を使った場合には変化することは避けられないので、変化の程度や変わり方を理解することは、どのような手段でどの材料を使い、どの程度の変化が美的に許容できるのかを決める手助けになります。もう一つの主要な点は塗り方です。様々な技法や道具を制作に使うことができますから、どれが最適かを決めるには時間と練習が必要です。重要な作品にワニスを塗付する前には、こうした問題を追求し答えを見出すことが大切です。

 

左図:様々な色やテクスチャーを列にした試験パネル。一箇所は標準として何も塗らずに残してある。他の部分はMSAグロス、サテン、マットのワニスを遮断コートの上に塗った場合の影響を示している。

 

作品の外観がどのように影響されるかを理解するために、自分の作品に見られる代表的な色や画面を帯状に平行に塗ったパネルを数枚作ってください(写真参照)。そしてその帯に直角方向に帯状に次のセットを塗り、試験したい様々な要素や技法を探求できるようにします。もちろん、塗っていない部分を作ることと、それぞれ塗った部分が分かるように印をつけることを忘れないでください。また様々な要素をその中で試験したい一つの要素にできる限り絞り込むことが基本です。例えば、異なった光沢を試験したい場合は、それぞれの塗り方を変えてはいけません。そうすれば、他の要素を排除した光沢だけによる変化の結果に自信が持てるのです。同様のことが、塗り方を試験する場合にもいえます。どの筆が一番適切か、あるいはワニスの薄め方がどのくらい乾燥時間やレベリングに影響するかなどを見たい場合も、他の要素をできるだけ少なくしてください。

 

ではまず、異なる光沢が作品にどう影響するかを見ましょう。作ったパネルを一つ取って、それを4つの区画に等分してください。その内の一箇所は基準の印をつけ、ワニスを塗らないでください。残りの3区画にはグロスワニスか遮断コートのいずれか(「ワニスの塗付ガイドライン」参照)を塗ります。こうすると表面が完全にシールされ吸収性がなくなります。そして24時間乾燥させます。次にグロス、サテン、マットのワニスをそれぞれの区画に塗ります(サテンは国内未発売→あらかじめグロスとマットを混ぜて好みの半光沢のワニスを作っておくことで代用できます。その際、混合比を記録しておくこと)。完全に乾燥したらそれぞれの区画を二つに分け、その片方にそれぞれ、二回目のワニスを丁寧に塗ります。こうすれば各ワニスの一回塗り、二回塗りによる光沢の違いが分かる便利な見本ができます。遮断コート、ワニス除去、スプレーと筆塗り比較などについても同じようにして試験パネルを簡単に作ることができます。

 

新しい素材と技法

 

デジタルプリントやブックアート、コラージュ、マルチメディア作品などの世界がどんどん広がっている現在、予想外あるいは未知の性質をもった材料が使われることが多くなっています。こうした新しい手法と材料が伝統的なものと組み合わされるので、お互いの相性が常に問題になります。前もっての試験が行われることはほとんどありませんから、様々な未知の要素と頻繁に相対しなければならなくなります。

 

現在、多くの作家がよく使う素材はデジタルインクジェットやジクレー版画です。試験が必要な項目としてはインクや下地材の耐久性で、特に水あるいはテレピン油やペトロール(ミネラルスピリッツ、ホワイトスピリッツ)などの溶剤に対するものです。そのためには、実際と同じ下地材とインクを使って試験用の版画を作ります。試験を標準化し変化を検証しやすいように、印刷機に使われているインクを別々に帯状に印刷するとよいでしょう。例えばインクジェットには最小限のシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色を使うのが普通ですが、ジクレーでは7色まで使うことがよくあります。場所が空いているなら、実際に使われる混色の代表的な色も帯状に印刷してください。それぞれの帯の境界をくっきりとさせて、インクのにじみやかすれがないかを確かめることも大切です。十分に乾燥したら、使おうと考えている他の材料をそれぞれの準備方法や塗り方に従って、今度はインクの帯の直角方向に帯状に並べて塗ります。ただし一箇所は基準として塗らない場所を残しておくことを忘れないでください(写真参照)。これらが乾燥したら、印刷のにじみやかすれ、変色がないかを見てください。また特に暗い色については、ワニスの光沢によって仕上がりが大きく変わることがあるので、色の明るさの変化などを確認してください。

 

右図:インクジェットキャンバス生地に、シアン、マゼンタ、イエロー、黒および様々な色を列にしてデジタル印刷したもの。

 

関連した試験として、下地印刷に影響することなく上描きするためにはワニスなどによるシール層を何回塗り重ねる必要があるかを見ることがあります。その場合は、前例と同じくまず下地の印刷をします。まず一箇所を基準としてマスキングし残りの部分にワニスあるいは他の保護コーティングを一回塗ります。完全に乾いたら、隣部分をマスキングして二回目を塗ります。これを必要と思われるまで繰り返します。全部が終了し乾燥したら上描きに使う材料をその上に塗り、ワニス等を何回塗りすれば下地印刷に影響がないかを評価します。

 

デジタルプリント以外の素材で試験する必要がある素材としては、水彩、ドローイング、コラージュ、従来の写真、オイルパステル、布地などがあります。それぞれの素材については、上記とはまた違った試験法が必要になるでしょうが、基本は同じです。試験パネルを作り、基準となる部分を残しておくかマスキングしておき、そして一つの要素あるいは材料についての一連の正確なバリエーションを作ることです。こうした試験には新しい技法や材料の使用が、素材の外観や性質にどう影響するかだけを見る場合もあります。これは特に水彩やパステルのようなものでは顕著です。これらの素材では、ワニスや他の材料を塗付するともう除去はできませんし、元々の外観や性質を大きく変えてしまうでしょう。布地では材料によって染料がにじまないか、風合いがどの程度変化するかなどを見る必要があるでしょう。一方、オイルパステルでは、材料の相性や接着性、そしてワックス分に影響することなくワニスを除去できるかなどを見る必要があるでしょう。

 

問題の解決

 

問題解決には、これまで見てきた例とはまた違ったことが必要になるでしょう。これまではあらかじめ試験パネルを作り、材料や技法を検証し未知の問題を防ぐことを考えました。しかしここでは既に問題が起こってしまっており、可能な解決策を発見するか、代替手段を講じるために根本原因を理解する必要があります。

よくある例を挙げますと:

 

マットワニスを塗ってしまったあとに仕上がりが気に入りません。グロスワニスを塗ることで作品は元の状態に戻り問題は解決するでしょうか。

透明なメディウムを塗った場合、曇りが部分的に残る場合がありますが、これは冬場によく起こるようです。これは温度や湿度の変化が原因でしょうか。

ウォッシュを塗るといつも下地の色が動くことに気がつきました。乾燥時間を長く取るとか、メディウムを下地色に加えることでよくなるでしょうか。

 

以上の例はきっと一度や二度は経験されたことがあるでしょう。このような場合は、問題の状態を出来る限り厳密に再現する必要があります。再現試験自体が難問ですが、技法や環境条件、使用材料についてできる限りのことを思い出すのが最初のステップになります。そして問題箇所をできるだけ忠実に再現してください。できれば同じものをいくつか作って個々の要素を区別したり異なった解決手段を比較したり、あるいは特定の回復手段を実際に処方する前に完璧にするようにしてください。一番大切なことは忍耐です。これは骨の折れる困難で時間のかかる仕事ですから。

 

結論

 

永続する芸術遺産を委ねられたメーカーとして、当社は常に広範な独自の研究を行い、最良の手段に対するガイドラインを作っています。しかし常にみなさん自身にも同様に独自の手法を試験するという重要な役割があります。その成功や失敗というものは大体において技法的なものであると同時に感性的なものでもあります。そしてもちろん、新しい技法や材料は作者自身の習熟曲線や習得技術を露呈します。さらに、例え当社の製品試験が十分だったとしても、他の材料が常に変化しているのです。あるプライマーが当社の製品の下地として昨年は満足できるものだったとしても、そのプライマーがその後に配合変更されて適切ではなくなっているかもしれません。私たちの希望は、ご自身で試験をしていただくための情報と支援を提供することによって、直面する選択肢についてより多くを把握し、深い関わりを持っていただくことです。最後に、以上の内容が関係ないものでこのJust Paintの記事はゴミ箱行きだと思われたとしても、当社の技術サポート番号をお手元においてください。そうすれば、何事であれ当社は常に「あなたの用途に合わせて試験」を行い出来る限りのサポートをしたいと願っていることを思い出していただけるでしょう。