Golden History

Just Paint issue 11
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リサーチ・フォーカス

SAFE HANDLING AND TRANSPORTATION

OF ACRYLIC PAINTINGS

 

 

アクリル絵画の安全な取り扱いと輸送

 

画家が絵を制作するとき、その視点は美的な事柄に焦点を合わせています。作品の支持体や下地、画材、全体の耐久性や完成度などについての考慮はその制作スタイルに組み込まれていることもあるでしょうし、そうでない場合もあるでしょう。多くの場合、後回しになるのは作品の保管や輸送における安定性の問題です。画家とは、どの作品においてもそれがショーやイベントあるいは新しい所有者に対しかれらの基準にあうかどうかを幾度も考えているものでしょう。しかし作品が存続するためには、運送業者の全く異なる視点から作品を見ることが大切です。作品はどのくらい壊れやすいのか?重さは?大きさは?この作品について特別に考えなければならないことは?美術作品を成功裏に運搬するには、いくつかのキーとなる項目があります。どのようなことが間違いの原因になり、どのような注意事項を取るべきかを理解すれば、起こりそうな問題を大きく減らすことができるでしょう。

 

アクリル乾燥の4段階

 

第1段階 - 初期揮発、絵具はまだ作業可能

第2段階 – 固形分はより密集して揮発はゆっくりになる

第3段階 – 固形分は連続した蜂の巣状の構造になる

第4段階 – 最終揮発、連続した膜を形成する

*接着性、硬さ、透明感、粘着性の消失などの重要な性質は塗膜が完全に硬化するまでは完了しない。

*アクリル塗膜は、乾燥段階にあるとき最も危険性が高い。

図1

専門家用アクリル絵の具で作られた絵画は、ガッシュや水彩、エンコースティック、テンペラ、あるいはパステルや木炭などの線描用具などの傷つきやすい画材に比べると不滅のようにみえます。油彩に対するアクリル絵具の利点は、時間経過に伴いもろくなるという油絵具の問題がないことだと理解されています。ほとんどの場合、アクリル絵画は柔軟性を保ち相当な酷使にも耐えます。しかし、このようにアクリル絵画は取り扱いやすいものだと画家たちが考えていることは不注意につながり、運送したり移動したときに重大な問題を引き起こしてきました。

作品の梱包や運送をする前に見ておくべき有益な情報がたくさんあります。本号ではこれらの情報のいくつかをご紹介します。ただし、本記事の目的はこうした豊富な事例や提案を含む情報を繰り返すことではなく、そこには含まれていないアクリル絵画についての重要な課題を検証することです。記事の最後にアクリル絵画の移動や保管をする場合の適切な扱いに関する貴重な情報源を掲載しています。

 

実践的考慮

(または事前の注意事項)

本記事はすべての包装、梱包技術の中で最も効果的なものから始める構成になっています。それは最善の方策に特に注目することから始まりますが、アーティストは他の独自の運搬方法を見つけるということがよくあるということも頭に入れておく必要があります。そうした他の方法でも最善策は可能ですが、どのような方法であってもリスクはつきまとうことを忘れてはなりません。最善の策を怠れば、リスクは著しく増加し作品に悪影響を及ぼすことになります。

 

何を保護するのか。

アクリル絵画はいくつかのユニークな性質を持っており、それはファインアートの媒体としての価値を生み出していますが、そうした性質は絵画の梱包と運搬に際しても考慮すべき重要な要素になります。ほとんどの環境下においてアクリル絵画は十分な柔軟性があるので、さまざまな状況下でもヒビ割れの可能性はとても低いのですが、それは逆に画面が柔らかいという代償を払うことになります。つまり引っ掻きや擦り傷、こすり傷に弱いということです。特に、非常につや消しな画面つまり固着力の弱いアクリル絵画(顔料や他の固形分が、顔料と樹脂の配合割合限界を超えるほど過剰に入っている場合)では重要な課題です。この柔軟な描画面のもう一つの特性は、比較的透湿性があるという水性アクリルの性質です。この性質のために、チリや汚染物が(特に新しい画面で)定着しやすいのです。最後に、最も重要なアクリル画面の特性(やはり特に新しい画面に著しい)は画面が粘着しやすいことです。

こうしたアクリル画面の性質は、アクリル絵画においては画面を保護することが決定的であるという当然の結論を導きだします。読者の方々はお分かりでしょうが、油彩画においては最大の危険性は画面の割れであるということに対して、アクリル絵画の保護においては少なくとも別の考慮が必要になります。画面の保護がアクリル絵画の梱包と運搬には第一義的なことに違いないのですが、それだけで済むというものでもありません。

アクリル画面は大体において温度が5°Cを下回るともろくなります。冬季の航空便や暖房のないトラック便では、搬送中の振動により画面にヒビが入る可能性があります。この問題を防ぐには温度管理されたトラックで運送するのがよいことは明らかです。航空便の場合は、搬送中に画面が振動を受けないことを確認しなければなりません。硬質な板で裏打ちすれば搬送中の振動は十分に抑えられます。

 


作品の物理的な考慮事項

絵画がどのように作られているかは、運送手段を決定する重要な事柄である。

キャンバスは枠に張っても張らなくても運ぶことができますから、そのために起こりうる結果を考えることが大切です。キャンバスを巻いて運ぶのは簡単で安価な方法ですが、到着地ではそれを広げる必要があります。こうした作業は作品を傷つけるかもしれません。 巻いておくと表面は保護されているように見えますが、重なったキャンバス地の繊維質が画面につかないようにしなければなりません。枠に張ったキャンバスを移動する場合、表面と裏面を保護しなければなりませんし、角の部分は取り扱いによる衝撃に耐える必要があります。さらに寒冷期の運送では、画面への衝撃を抑えるような準備が必要です。これらについては後ほど述べましょう。

硬い板に取り付けられたパネル画や作品についても表面や角の保護が必要です。これらは振動には強いとはいえ、その上に物を重ねることは避けなければなりません。

 

作品の古さもまた移動においては重要である。

アクリル絵具は非常に速く乾きますが、完全に硬化するにはかなり長い期間が必要です。塗り厚さ、使われた材料、環境要因などが画面の硬化に必要な時間を決定します。硬化していない画面はやわらかくて粘着やフェロタイピング(押し痕)が出やすいのですが、古い作品で完全に硬化している場合はそうした損傷は起こりにくいものです。

 

運送中における画面硬化の影響

アクリル画の乾燥には4つの段階があります(図1参照)。第1段階は一定の速さで進む初期の水分蒸発で、その間は塗膜は濡れて作業がまだできる状態です。第2段階は塗膜に含まれるアクリル固形分が密になる状態です。乾燥の第3段階では、内部から表面に出てくる水分の毛管現象により球形に近いアクリル樹脂粒子が変形し、粒子の間隙がなくなって連続したハニカム(蜂の巣)構造を作ります。この時点では触ると乾燥したように感じられます。最終段階は、水と融着溶剤(増膜助剤)の最終的な蒸発と粒子の密集化が樹脂粒子のからみ合いとともに起こり、連続した皮膜を作ります。接着性、硬さ、透明性などの重要な性質は皮膜が完全に硬化するまでは完了しません。 (アクリル皮膜の形成に関する詳細な情報は、当社の「乾燥に関するテクニカルノート」インフォメーションシートをご覧ください。)アクリル画面はこの硬化過程において危険性が最も高くなります。

作品が完全に硬化するのを待たずに運送した場合には、いくつかの悪影響が考えられます。塗膜はまだ成長段階にあるため、接触したものは何でもすべてくっついてしまう可能性が非常に高いのです。グラシン紙やダンボール紙などの包装材料は画面に完全に接着してしまいます。二つの作品の画面が互いに接触している場合には簡単に接着してしまい、双方に損傷を与えるでしょう。さらに、新しい画面はチリやホコリが付きやすく、そしてそのまま画面に永久に固着してしまう可能性が高いのです。厚塗りの膜は、硬化途中で動かしすぎるとヒビやシワができる可能性があります。温度が低い場合は画面の硬化が阻害され早期に剥離することさえあり得ます。 10° C以下では樹脂粒子の適切な配列と変形が起こらなくなります。

塗膜は硬化する際にその形を保ちます。もしまだ部分的にしか硬化していない作品を運搬のために巻き硬化が進む間も巻いたままにした場合、作品を広げるときには平らに戻すことがとても困難になるでしょう。このように巻かれた画面はヒビが入りやすく、特に温度が低いとそうなりやすいのです。折りたたんだ場合はもっと困難な事態を招くでしょう。

 

絵画作品輸送のための包装

作品を輸送するたびに新しい条件がでてきます。理想的なアクリル絵画の搬送方法は、画面に何も触れないようにすることです。これはいくら強調しても足りないことですが、輸送時の損傷のほとんどは画面に何かが接触したために起こるもので、次のような損傷を引き起こします。

 

フェロタイピング(押し痕)

・包装材料のテクスチャーの画面への転写

・盛り上がった部分の光沢変化

・平滑な部分に望ましくないテクスチャーができる、あるいはその逆の現象(テクスチャーがなくなる)

画面上の繰り返し運動

・摩擦傷

・つや消し画面の光沢発生

・塗膜の物理的損失

・粘着/表面への物の付着

・紙やプラスチック、その他包装材料の画面への付着

・無理にはがそうとすると塗膜がはがれたり支持体を損傷することがある

・永久的な損傷になりやすい

ヒビ

・一般には温度が8°以下の環境で支持体あるいは画面への鋭い衝撃があった場合

・あるいは乾燥過程の絵画が緩やかな衝撃を受けた場合

 

自分の作品の寿命を最善の状態にしたいなら、作品一つずつをそれぞれ別の梱包にすべきです。こうすれば画面どうしがつくことはなくなり、作品は損傷することなく目的地に着くことができるようになります。注意深く計画し梱包すれば基底材の損傷の可能性もずっと低くなります。もちろん、これは一番コストのかかる梱包・輸送方法ですし、制作者は運搬についてかなりの妥協をせざるを得ないのは確かです。しかしより簡単な方法を選択する前に少なくとも考えてみることが大切です。

図2、美術品輸送ハンドブック、ワシントンナショナルギャラリー

 

美術作品のための梱包ケース

最良の梱包ケースとは、以下の条件を満たすものです。

 

・作品、断熱材、発泡クッションを支えている

・内容物を衝撃や貫通から守り、著しいひずみがない

・密閉性を確保する

・湿気の進入を防ぐ

・持ち上げたり移動するための取っ手がついている

・上記のいずれの事項についても妥協することなく、多くの開催地への輸送に耐える

 

ケース寸法とサイズ限度

ケースの容量は梱包する作品のサイズや数、断熱材の厚さ、クッション材の厚さによります。梱包ケースに使う発泡材の種類と量はケースを作る前に決めなくてはなりません。ケースのサイズは運送手段によって限度があります。寸法や重量の規定についてはお近くの運送会社にお問い合わせください。

 

ケースの材料

今でも大半のケースは合板で作られていますが、これはアルミやグラスファイバーよりも本質的に有利です。合板は重量比強度が高く、適度な断熱性や湿度に対する緩衝作用などに加え比較的安価です。

 

耐貫通性

合板を使った場合、その厚さはケース側面の耐貫通性に大きく影響します。0.9cmから1.3cm程度の厚さの合板が180cm以下の小〜中サイズケースによく使われます。厚さ1.9cmまでの合板は大きなケースに使われています。

 

耐衝撃性と構造的剛性

ケースの組み立て方法、特に材料の接合部はケースの強度と剛性に大きく影響します。端部や角がしっかりと接合されているケースは、接合不良のものにくらべ強度は10倍以上、剛性は100倍以上にもなります。端部や角はネジ止めと接着剤の両方を使うことが推奨されます。

 

持ち運びのための準備

一人か二人で持ち運べる程度にケースが軽い場合は取っ手を付けておくべきです。輸送機器が必要な場合は、ケースの下にフォークリフトのフォークが入るようにブロック(枕木)を用意します。(図2参照)

 

ケース安定性と倒壊防止

大きな作品が一つしか入っていない大型梱包ケースは高さに対し幅が狭くなります。そのため不安定で倒れやすく、がたついたりもします。そのような事故を防ぐ準備が必要です。

 

キャンバス作品の振動・打撃保護

図3、美術品輸送ハンドブック、ワシントンナショナルギャラリー

背板

どの絵画の場合も背板を裏側につけて、貫通や振動、打撃などによる損傷を減らすようにすることをお勧めします。

・硬い裏打ちの板は作品の裏側に空間を作ります。その結果、背板とキャンバス裏の間に閉じ込められた空気の強化作用により作品の振動が減ります。

・柔軟な背板では効果が限られます。背板には硬いめの材料が適しています。あるいは大型作品に柔軟材を使う場合はX字の筋交いを入れて中央を補強します。

・大型のキャンバス枠には大抵、横木があります。できることなら、背板材を小さくいくつかに切って横木と外枠で区切られた四角の空間に取り付けます。

 

発泡材つきの背板

作品のキャンバスの張りがゆるいと、取り扱いや輸送時に枠の横木を生地が打つことがありますが、背板に発泡材をつけると防ぐことができます。(図3参照)

・発泡材はキャンバス裏のごく近くに、しかし実際には触れないように取り付けます。

・低密度のポリエステルウレタン発泡材がやわらかくて軽いので適しています。ポリエステルウレタン発泡材は化学的には安定していないので、作品裏側に長期間取り付けたままにしてはいけません。さまざまな要因が発泡材の劣化に影響しますので、どの程度の期間発泡材を作品裏側につけておいてよいかは判断できません。

・発泡材は背板に両面テープかホットボンド(熱で融ける接着剤)で取り付けが可能です。発泡材は、背板からはがれてキャンバスに直接ついたりしないようにしっかり取り付けます。

・背板はキャンバス枠にネジでしっかり取り付けます。

 

キャンバス枠裏打ち

キャンバス枠裏打ちはテイトギャラリーのピーターブースによって開発されたキャンバス作品の振動を抑える手法です。この手法では新しい布、できればポリエステル帆布のような薄くて非常に強い布を元のキャンバス枠に付けます。絵画作品は全く乱れることがありません。修復家が「裏打ち」と呼んでいる元のキャンバスに新しい布地を張って強化する工程とこの手法を混同しないでください。

布地を正しく取り付ければ、横木の端部だけでなく連続した面で接触しているので、衝撃を受けたときの横木に起因したヒビ割れを抑えることができます。振動試験ではさらに低周波振動に起因するキャンバスのずれを大幅に抑える利点が示されました。

 

キャンバス枠裏打ちの取り付け方法:

図4、美術品輸送ハンドブック、ワシントンナショナルギャラリー

・作品とほぼ同じサイズの布地を切り取ります。

・ホッチキスでキャンバス枠に布地を仮留めします。

・横木と角のクサビ(枠の差込)の部分が空くようにその部分を円くカットします。

・ホッチキスをはずし、布地を折りたたんでキャンバスと横木の間に差し入れます。

・布地を広げ正しい位置に置いたら、キャンバス枠の裏面に縁に沿って取り付けます。

・取り付けるときに布地をよく伸ばしてください。(図4参照)

 

運搬用梱包木枠

美術館では絵画によく運搬用の梱包木枠を使います。木製の枠は構造剛性を与え、その裏側に裏打ちの板を取り付けることができます。梱包用木枠は作品の厚みよりも深くし、発泡材を貼り付けた硬いカバーが、作品面に触れることなく囲いの木枠に取り付けられるようにします。このようにして梱包用木枠、背板、表面カバーといった梱包全体を、作品面を傷つける恐れなしにポリシートで包装できます。

 

ソフト梱包(袋梱包)

美術品の輸送において注目すべき最近の傾向は、展示会費と絵画輸送運賃の上昇に伴うソフト梱包の増加です。ソフト梱包は版画やドローイングなどのグラフィック作品でよく使われ、民間ギャラリーや作家から美術館へと広がっています。ソフト梱包は合板付きケースの替わりに使われ、片面にダンボールや発泡ボードが付いています。

ソフト梱包は、大きな損傷のリスクをあえて犯すのでなければ採用すべきではありません。またソフト梱包には多くの実績があるとはいえ、最小限のコストで最良の保護を得る方法についての科学的な研究はほとんどないのです。

ソフト梱包を選ぶ場合は近隣の移動だけに限るべきです。ナショナルギャラリーは、絵画か枠の裏側に木枠か搬送用フレームを取り付けて保護することを勧めています。画面には何も触れないようにします。包装材料は作品面につかないよう離し表面の粗くない材料にすることです。断熱性と耐衝撃性を備えるために発泡材を作品周囲に使ってください。

 

作品を巻く

時には絵画を巻いて輸送せざるを得ない場合もあるでしょうが、以下のヒントはリスクを最小限にします:

 

・描画面が完全に硬化するまでの十分な時間をとります。

・キャンバスを巻く前に100μm以上の厚さのポリエチレン製シートを画面に乗せます。シート面の離型剤やチリ、その他の汚れを十分に取り除きます。エアクッション(プチプチ)やビニールシート、薄いシートはフェロタイピング(押し痕)を画面に起こす可能性があるので、この目的には使わないでください

・作品を巻く場合も広げる場合も室温で行います。低温下で巻くと、特に厚塗り部分でヒビ割れが起こる可能性があります。

・フェロタイピングや付着を避けるために、なるべく緩く巻きます。

・描画面を外側にして巻きます。内側にして巻くと画面を圧縮して画面に加わる応力が増加します。

・包装したらきっちりと、しかしきつ過ぎないようにテーピングします。

・できるだけ均一にキャンバスを巻きます。

15cmかそれ以上のダンボール芯を使います。きつく巻くと画面を圧縮する力が増加します。

・巻いたキャンバスを大きめの円筒ケースに入れます。大きめの円筒に内円筒がきっちりと納まるように梱包材を足します。

・できる限り円筒は縦向きにして一箇所だけに重量がかからないようにします。これは特に大きなキャンバスで重要です。

・作品を巻いたまま長期間保管しないこと。できる限り早い目に作品を広げてください。

・ソノチューブ(Sonotube)は、多くの作家が絵画作品を巻いて運搬する際に使っている製品です。ソノチューブについてはwww.sonoco.comを参照してください。

 

梱包容器のマーキングと開梱指示書

送り主以外の人が作品を開く予定の場合、開梱や再梱包についての明確な指示書を入れた封筒を梱包容器の外側にしっかりと貼り付ける必要があります。貼り付けた封筒には「損傷を避けるため、開梱前にまず読むこと」などの文章を書きます。こうした指示書は、もし搬送中や開梱時あるいは展示会後の再梱包などで生じた損傷について争議が起こった場合には非常に重要になります。全ての梱包材料が梱包箱の中に入っていることを確認させてください。開梱した同じ人が作品を再梱包するものだなどと考えてはいけません。作品を外国へ送る場合、先方の国の言葉で文書を作ることが必須です。そうしないと検査官が適切な予防措置もなしに不注意に梱包を開けることになりかねません。適切な文書作成のためには、全ての該当取り扱い業者に問い合わせてください。

 

美術品の保管と輸送に関する情報

美術品の輸送を取り巻くリスクや問題は難しいものですが、乗り越えられないものでもありません。ここで述べられた内容は最小限のリスクとコストでの美術作品輸送を可能にするでしょう。このような仕事を専業としている業者もありますから、もし作品が十分に価値のあるものなら業者に委託するのもよいでしょう。またこの分野についての指導書もあります。いくつかの情報源をリストアップしています。

この件についてさらにご質問がある場合は、どうぞゴールデンテクニカルサポート部(国際電話1-800-959-6543)またはホームーエージwww.goldenpaints.comにご連絡ください。

 

 

ゴールデン社研究室による研究

輸送のために巻かれた絵画作品

ヒビ割れ試験:1.7°C(35°F)において実施

 

1/8-3/16インチ

塗面内側

1/8-3/16インチ

塗面外側

1/8-3/16インチ

塗面内側

1/8-3/16インチ

塗面外側

1/8-3/16インチ

塗面内側

1/8-3/16インチ

塗面外側

巻き径(インチ)

1.5

1.5

4

4

6

6

レギュラーゲル(グロス)

3

2

0

0

0

0

(絵具)ウルトラマリンブルー

5

5

5

5

0

0

(絵具)キナクリドンレッド

3

0

0

0

0

0

(絵具)バーントアンバー

4

3

2

1

0

0

(絵具)ジオキサジンパープル

0

0

0

0

0

0

(絵具)マーズイエロー

1

3

0

0

0

0

マット・バーントシェナ

5

4

4

4

0

0

表1は35°F (1.7°C)、湿度28%において1.5インチ(3.8cm)、4インチ(10cm)および6インチ(15cm)の芯に巻いたアクリル塗膜を開いた場合の結果を示す。

塗膜をそれぞれ内向きまたは外向きに巻いて、起こり得るヒビの効果を見た。

テスト試験片は、幅1/2インチ(1.25cm)または1インチ(2.5cm)、厚さ250mil(約1/4インチ=6.35mm)。

注:ヒビの評価は0〜5段階。0=識別可能なヒビなし、5=著しいヒビ。

(絵具)=ゴールデンアクリリックス

 

アクリル絵具塗膜を素早く荷積みしたり衝撃を与えたりした場合の影響はMecklenburgらによって十分に研究されているが、作家が見過ごしやすいのはキャンバスを素早く開くときの影響で、特に温度が低い場合に問題になる。

ゴールデン社の研究所員は、キャンバスを巻いて輸送した場合の現実的な影響に関する試験を最近行った。試験には、古くなったアクリル塗膜をいくつかの直径の芯に巻いたサンプルが含まれている。数種類の色(顔料分)とメディウムについて圧縮状態(描画面内側)と伸長状態(描画面外側)の二通りの巻き方をした。これらの塗膜について複数回の開き試験を数段階の温度(7.2、1.7、-10.6°C)において行った。

6インチ(15cm)芯で行った試験もあるが、多くの試験はより厳しい1.5インチ(3.8cm)、4インチ(10cm)直径の芯で行った。絵具塗膜は十分に古く、3〜9年前のものである。開き試験は一秒に約1インチ(2.5cm)の速さで行った。もっと遅い速さで開いた場合(ただし極低温条件は除く)、アクリルはヒビが入ることなくよく伸びた。

結果は予想された通りであった。大きな芯に巻かれたものは非常にヒビが入りにくい(表1)。特に6インチ(15cm)芯に巻かれたものは1.7°Cではヒビは見られなかった。これも予想されたように、巻いたアクリル塗膜は低温になるほどヒビが入りやすくなる(表2)。描画面を外向きに巻いた場合はヒビの程度がより軽くなることも試験で確認された。 顔料含有の有無により大きな差があったが、これもまたMecklenburgらの研究から予想されたことを裏付けた。顔料分が高い色は非常に硬いため1.7°Cで開いた場合に顕著なヒビ割れを起こした。表3にある-10.6°Cで行った試験結果にはいくつか異常値がみられる。 Meckelenburgの論文にあるように、アクリルは温度が低くなると引っ張り強度が著しく増加する。塗膜は非常に硬いため、塗膜を開くにはスタッフが二人必要だった。塗膜を損傷するだけでなく、綿キャンバスまで痛めるほどの力が必要であった。

 

異なる温度でのヒビ割れ試験

 

1/8〜3/16インチ

塗面内側

7.2°C

1/8〜3/16インチ

塗面外側

1.7°C

1/8〜3/16インチ

塗面内側

-10.6°C

巻き径(インチ)

1.5

1.5

4

レギュラーグロス

4

4

5

(絵具)ナフソールレッドライト

5

表2は、250mil(未乾燥厚さ約1/4インチ=6.35mm)の塗膜をいくつかの温度条件で開いた場合の結果を示す。注:ヒビの評価は0〜5段階。0=識別可能なヒビなし、5=著しいヒビ。

 

10.6°Cでのヒビ割れ試験

 

 

1/8〜3/16インチ

塗面内側

1/8〜3/16インチ

塗面外側

1/8〜3/16インチ

塗面内側

1/8〜3/16インチ

塗面外側

巻き径(インチ)

1.5

1.5

4

4

レギュラーグロス

4

4

5

(絵具)ナフソールレッドライト

5

3

マット・ナフソールレッドライト

5

4

表3では、-10.6°C、湿度39%で開いた厚塗り塗膜はすべて著しいヒビを示している。(試験では塗膜は二人がかりでないと開かないほどに硬くなった。)

注:ヒビの評価は0〜5段階。0=識別可能なヒビなし、5=著しいヒビ。


 

文献:アクリル絵画の安全な取り扱いと輸送

詳しい情報は以下をご参照ください:

Peter Booth, "Stretcher Design: Problems and Solutions,"

The Conservator 13, (1989).

T. Green, "Vibration Control: Paintings on Canvas Supports,"

Art in Transit: Studies in the Transport of Paintings (1991).

P.J. Marcon, "Shock, Vibration, and the Shipping Environment,"

Art in Transit: Studies in the Transport of Paintings (1991).

Mervin Richard, Marion F. Mecklenburg and Ross M. Merrill.

"Art in Transit," Handbook for Packing and Transporting Paintings (1991).

Jill Snyder, "Caring for Your Art," A Guide for Artists, Collectors,

Galleries, and Art Institutions (2001).

 

 

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