ゴールデンアクリリックス
ゴールデンフルイド

Golden History

エアブラシを始めるためのヒント Part II

「スプレー、乾燥、マスキング」

このインフォメーションシートではエアブラシで起こりうる問題を避けるための提案をします。またエアブラシ作品の品質と作業性を上げるためのヒントもあります。

テクニカルインフォメーション
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用法解説

 

アクリル絵具を調整する

作品を長く保つためには、絵具がそのプロジェクトの要求事項全てに応えるものでなければなりません。布地を使った作品では、絵具はソフトで柔軟性を保ち、着用したり洗濯したりした時もひび割れないようなものでなければなりません。硬くて柔軟性があまりない絵具は、金属などの滑らかで硬い面への接着がよく、剥がれにくいものです。プロジェクトを始める前に、作品がアトリエを離れた後に影響を及ぼす要因を理解しておくことが大切です。

 

ゴールデンの一連の製品はいずれも類似したアクリル樹脂を使用しています。柔軟ですが、乾燥後は粘着するほどには軟らかくはありません。そのため、キャンバスや大半の布地への描画には最適ですが、マスキング技法のように性能が要求される用途にはもっと硬いアクリル樹脂で調整してやる必要があります。

 

アクリル絵具を硬くする

ゴールデン・トランスペアレントエクステンダー(国内未発売:ゴールデン英語サイトに技術資料あり)は無色のエアブラシカラーといえるもので、フルーィドアクリリックスと混ぜたり、その上にトップコートとして塗ることができます。使用しているアクリル樹脂が硬いため、マスキングを剥がす際に浮き上がるのを防ぎます。エアブラシカラーのアクリル樹脂は同じ硬いアクリル樹脂を使っています。このためルーズマスク()や粘着性マスキングフィルムに適した製品になっています。

()ルーズマスク:マスキングに使うシートや紙などを画面に接着せず手で持ってエアブラシする方法。

 

アクリル絵具をスプレーするためには、ゴールデン・エアブラシメディウム(国内未発売)を混ぜます。これも硬い樹脂を使っており、フルーィドアクリリックスに11の割合で混ぜると最も効果的です。粘度の高い絵具にはエアブラシメディウムをもっと混ぜる必要があります。他の絵具との混合については、ゴールデン社英文サイトのthe Airbrush Medium Information Sheetをご覧ください。

 

一般にほとんどのエアブラシのニーズには、ゴールデン・エアブラシカラーまたはフルーィドアクリリックス(エアブラシメディウムで調整)で十分です。

 

アクリル絵具をスプレーするための適切な希釈

ゴールデン製品にはスプレー用に調整できるアクリル絵具がいくつかあります。スプレー用に調整できる絵具は、ヘビーボディーおよびイリデッセント(以上はゴールデンアクリリックスとして国内販売、これら以外の製品は国内未発売)、インターフィアランスアクリリックス、フルーィドアクリリックス、ハイロード、マットアクリリックスなどです。エアブラシカラーだけはそのままスプレーできます。絵具を混ぜることは、面倒というよりは絵具を完全にコントロールできることと考えましょう。キーポイントはそれぞれの絵具やメディウムの得失を知ることです。ゴールデン製品エアブラシ早見表(図1)にある、それぞれの絵具の用途適正をご覧ください。

 

図1

代表的なエアブラシ用途

ゴールデン推奨製品

ゴールデン推奨メディウム

推奨圧力

イラスト(加熱圧縮ボード)

エアブラシカラー、フルーィド

エアブラシトランスペアレントエクステンダー

20-40psi

(1.4-2.8kg/cm2)

ファインアート(キャンバス、サインボード、その他)

エアブラシカラー、フルーィド、肺ロード、ヘビーボディー

エアブラシメディウムまたはトランスペアレントエクステンダー

25-50psi

(1.76-3.58kg/cm2)

自動車関係(ヘルメット、ガソリンタンク)

エアブラシカラー、フルーィド

エアブラシトランスペアレントエクステンダー

25-50psi

(1.76-3.58kg/cm2)

テキスタイル(Tシャツ、皮、その他)

フルーィド

エアブラシメディウム

40-70psi

(2.8-4.9kg/cm2)

 

全ての道具とテクニックを役立てる

プロの作家は作品制作にいくつかの手法を使うのが普通です。「フリーハンド」でエアブラシだけで(他の道具やマスキングを使わずに)制作する人もたくさんいますが、大半の作家は利用できる全ての道具や手法を用いて作品を制作します。下書きのスケッチは、他の画法と同様にエアブラシにおいても大切なことです。適切なマスキング技術も必要です。

 

エアブラシを使う上でよく誤解されていることはおそらく、いつエアブラシを置いて他の道具や手法でスプレーした部分を補筆するかでしょう。商業イラストレターは引き算的なテクニックを使い、イラストボードの白地を利用します。引っかきや削り取りの手法やアンモニア性クリーナーを使って描画面を取り除いたりします。

 

エアブラシの際、手による描写の効果も軽視すべきではありません。詳細な描写はエアブラシより筆で描く方がずっと簡単です。一緒に使えば全体的な写実性が高まります。

 

準備について

 

スプレー前の準備

エアブラシの準備で重要なのは、絵具がきちんと混ぜられているかどうかです。ゴールデンのアクリル絵具は耐光性のよい顔料で作られています。これらの濃い粒子をうすいメディウムで溶いた場合には、容器の底に沈殿する傾向があります。この「軟らかい沈殿」は相分離した結果です。相分離とは、絵具の成分が物理的に分離することで、一番濃い(重い)成分が底に溜まり、残りの成分が上澄みになります。混色した場合には、チタニウムホワイトのように重い顔料がよく底に溜まります。

 

ゴールデンではセラミック製の混合ボール(技術用語ではbarundumバランダム)をエアブラシカラーのどの容器にも入れています。絵具は容器を振るだけで簡単に混ざります。作業の開始はその日に使う予定のエアブラシカラーの容器を振ることから始めましょう。よく混ぜておけば絵具はずっと均一になります。スプレーの前に予め混ぜておけば、気泡が消える時間も取れます。気泡があると絵具のスプレー具合に影響します。日々の作業で必ずこれをしておけば、絵具が相分離することを防ぎ、長期的には振る回数も減ります。

 

メディウムで薄める必要のある絵具を混ぜるには、エアブラシカラーの容器を再利用するか新しい容器に混合ボールを入れてください。スプレーする前に大半の混合は済ませておきましょう。これは混ぜたものを保存する場合に大切なことです。それはエアブラシカラーに使われている顔料に比べ、他の絵具の顔料は固く「固まる」からです。「固まる」というのは、顔料が固く沈殿してしまい混ぜなおして分散が難しく(時には不可能に)なることです。予め作られたエアブラシカラーについても完全に混ぜるようにしてください。そうすれば色がより均一になり、詰まることも少なく、塗膜の出来具合もよくなります。スプレーにおける問題の多くは不適切な混合と希釈が原因です。

 

ゴールデンメディウムで薄める

フルーィドをスプレーに適切な粘度にするにはゴールデン・エアブラシメディウムで薄めるのが理想的です。エアブラシメディウムはアクリル樹脂とリターダー、レベリング剤(訳注:平滑な仕上がりにする添加剤)、流動性促進剤の混合物です。アクリル絵具と混ぜると、優れたスプレー特性を持つ絵具ができます(添加量や他の情報はゴールデン英文サイトのInformation Sheet ”Airbrush Medium”をご覧ください)。エアブラシメディウムは、加え過ぎるとリターダーが過剰になってマスキングの時に色が剥がれることがあるので、混合量には限界があります。

 

ゴールデン・エアブラシメディウムと絵具の混合比が21を超えそうな場合は、ゴールデン・エアブラシトランスペアレントエクステンダーを使うか、さらに大幅に薄めたいならば水を使うことを考える必要があります。フルーィドアクリリックスが1に対しエクステンダーを210混ぜれば、エアブラシ用の色は40色以上にふくらみます。同様に、ゴールデンアクリリックスや、イリデッセント、インターフェアレンスカラー、ハイロードアクリルなどもエアブラシ技法用に薄めることが出来ます。これらを混ぜた場合は一週間程度で使わないと、顔料が固く沈殿したり時とともに徐々に粘度が上がったりします。

 

絵具を水で薄める

粘度の微調整に水を加えることが出来ます。例えば、ゴールデン・オペークエアブラシカラーのナフソールレッドライトの粘度が目的の用途にはやや高いと思った場合、水を1015%加えると必要な粘度範囲に近づくでしょう。加える水がこの程度であれば、塗膜が弱くなったりスプレー特性が変わったりすることはありません。

 

ゴールデンのフルーィド(400700cPs) はスプレーには粘度が高すぎるので、適当な粘度に薄める必要があります。水だけで薄めることも出来ますが、先にそうしてしまうとエアブラシが詰まってしまったり塗膜が弱くなったりします。あるいは多くの大切な絵具添加剤の濃度がずっと低くなってしまうので、垂れたり流れたりする傾向が高くなるでしょう。望ましいやり方は、水の代わりにメディウムを加えることです。

 

ゴールデン・エアブラシカラーの調整

ゴールデンのオペークおよびトランスペアレントエアブラシカラーはそのままスプレーできますが、それは個々のニーズに応じた調整ができないという意味ではありません。オペークエアブラシカラーは他のゴールデン絵具製品と同様、顔料濃度がとても高くなっています。ジオキサジンパープルやフタロ系の色のような強い色にゴールデン・エアブラシトランスペアレントエクステンダーを加えると、顔料の輝くような色調が際立ちます。

 

トランスペアレントカラーはオペークタイプの約1/10の強さですが、これも調整できます。エクステンダーを加えると透明性が増す一方、オペークカラーを加えれば強くなります。トランスペアレントエクステンダーを加えると物理的な強度も上がります。オペークカラーは顔料濃度が高いので、薄く塗った場合にマスキングフィルムをこすりつけると(フィルムを剥がす際に塗膜が)剥がれることがあります。トランスペアレントエクステンダーを1020%加えると顔料濃度を大きく下げることなく問題を軽減できるはずです。

 

スプレーの準備

 

目的にあわせて圧を調整する

多くのエアブラシ作家は、圧力を目的によって調整せず一定にして使うことに慣れています。「噴霧」は点描パターンから非常に細かなスプレーまで調整が可能です。エアブラシカラーは点描向きの5-7psi0.35-0.49kg/cm2)の低い圧から、完全な噴霧の60psi4.2kg/cm2)の高圧までスプレーできます。もちろん、圧力調整は他の性質にも影響します。圧が低いと塗膜は厚くなるのでフリスケット(用語1)が貼れるまでの乾燥時間が長くなるのと、ノズル内やニードル上で絵具が乾く可能性が高くなります。高圧だとマスキングをうっかり吹き上げてしまうこともありますし、スプレーし過ぎのために塗膜が不均一で「粉っぽい」あるいは粗い感じになってマスキングが付着しにくくなることもあります。

 

絵具粘度と噴霧の関係

エアブラシイラスト専用に作られた絵具の粘度(相対的な固さ)は大抵、35-60センチポイズです。粘度とは粘度計を使って材料の抵抗性を測ったものです。測定単位はセンチポアズあるいはcPsで表され、水の抵抗値は1cPsですから40cPsとは水の40倍の抵抗性(粘度)があるということです。0.18mmサイズのノズルでのエアブラシには、35-60cPsの粘度が理想的な噴霧になります。絵具が薄くなると水と同じようになって、流れたり外向きに「クモの巣」状になったりします。薄い絵具を使う場合は、それにあった圧に調整してください。同じように、ファブリック(布地)用に作られた絵具やゴールデンのフルーィドアクリリックスのように絵具が固い場合は、ずっと高い圧でスプレーしなければならないでしょう。ファブリックペイントは一般に0.25mm以上のノズルでエアブラシするように作られています。

 

エアブラシの一般的注意

 

絵具カップに入れる

これは当たり前のことのようですが、多くの作家がカップに絵具を入れ過ぎたために作品に絵具をこぼして台無しにした経験を持っています。入れ過ぎは絵具の無駄になりやすいので、いつも絵具カップに入れる絵具量は必要と思うより少なめにする方がよいでしょう。絵具を何度もこぼしてしまう場合は、カップにフタのついたエアブラシか、容量の大きいエアブラシやカップを使うことを考えてください。

 

適切なスプレーテクニック

以下は、主として均一な色のグラデーションのための注意事項です。このテクニックで満足な結果を得るには、練習に何時間もかかるかもしれません。正しいスプレーの習得は、知識ではなく経験でしかできません。しかしながら、これらの要点は習熟カーブを短くしてくれるでしょう。

 

絵具塗膜は非常にゆっくり塗る。

未乾燥の絵具を厚くすると完全乾燥に時間がかかるので、しないこと。

絵具が乾いていない場合は、エアブラシからエアだけを吹いて乾燥を速める。

絵具が強過ぎると思ったら、特にカーボンブラックのような場合、エアブラシエクステンダーを加える。

エアブラシは画面に対し常に出来る限り垂直にスプレーする。斜めにスプレーすると、スプレーのし過ぎになる。

スプレーを一定に保つには、手首ではなく肘を動かす。

マスキングした箇所の手前からスプレーを始めその上を通過するようにして、境界線に絵具が溜まらないようにする。

 

マスキング/フリスケットのヒント

マスキングを適切にすればハードで明確なエッジができます。作品で実際に使う前に、テストピースでマスキングテクニックの一般ルールを学びましょう。

 

         フリスケットを置く前に、軟らかい綿の布で画面を軽く拭きます。これで消しゴムのカスや余分な石墨 (鉛筆カス)、油分(指紋)を取り除きます。

         剥離予防には適切な乾燥が必須です(次項参照)。

         下地に適したマスキングを選びましょう。マスキングテープはイラストボードを損傷しかねません。

         接着をよくしようとしてマスキングをこすり過ぎないこと。絵具面につかない場合は、画面にエアブラシトランスペアレントエクステンダーを軽くスプレーして乾燥させてからにします。

         エアブラシした塗膜が弱いと、水性マスキング液を塗った場合に浮き上がることがあります。非常に薄い塗膜の上には、エアブラシトランスペアレントエクステンダーを軽くスプレーし十分に硬化させてから、こうしたマスキングを使います。

         塗膜がザラザラしているとマスキングがうまく接着しません。エアブラシトランスペアレントエクステンダーを上に薄く塗るか、絵具に混ぜて均一な塗膜にしてください。

 

乾燥を速めるテクニック

 

イラストにフリスケットのテクニックを使う場合は、絵具がきちんと乾燥している必要があります。完全に乾燥していないと、マスキングを剥がす時に絵具がボードから剥がれることがあります。ヘアドライヤーや扇風機、赤外線ランプなどの道具を使って乾燥を速めます。ただしどれも注意して使いましょう。風を起こすとフリスケットを吹き上げることがあります。熱をかけるとイラストボードが曲がったりフリスケットにシワがよったりすることがあります。さらに熱によってボードへのマスキングの接着性が上ることがあります。ひどい場合は完全に乾いているにもかかわらず絵具を剥がしてしまいます。

Figure 2

以下にあるのは、乾燥時間を短縮して効率を上げるテクニックです。アクリル絵具の乾燥についてのもっと詳しい資料は、インフォメーションシート「乾燥に関するテクニカルノート」をご参照ください。

 

         アトリエ内に絵具が速く硬化するための乾燥場所を設けましょう。赤外線ランプか高出力ランプのついた調整可能な卓上スタンドで高温低湿度環境を作り出せます。そうすればエアブラシを掃除する間に絵具がほぼ乾燥します(図2参照)。

         ヘアドライヤーや赤外線ランプで塗膜乾燥を速める。

         熱を過剰にかけないこと。フリスケットが柔らかくなって浮き上がったりシワがよったりすることがあります。イラストボードが曲がるかもしれません。

         フリスケット部分に泡が出たら熱のかけ過ぎということです。作業を続ける前に冷やしてください。

         作品の乾燥に熱を使った後は、マスキングをする前に冷やして、熱による接着過剰が起こらないようにしてください。

         乾燥をよくするには空気の流れが必須です。

 

壁に沿って小さな扇風機を置き、空気の循環をよくしましょう。乾燥したい部分に扇風機を直接向ける必要はありません。特にヘアドライヤーを使う場合はそうです。

 

用語

1         フリスケット® -低粘着性の透明マスキングで、主に商業イラストによく使われる。

 

免責事項

ここに記載する情報は、当社が行った研究とテストに基づくものであり、製品の可能な使用法を理解する基礎として提示するものです。作品を制作する手法、素材、状況は多岐にわたるため、当社は、製品がご使用者の用途に適していると保証することはできません。したがって、各プロジェクトの要求を満たすことができるよう、その都度テストすることをお勧めします。弊社は、ここに記載する情報が正確であると考えますが、商品性や特定用途への適合性に関する明示的または暗示的保証を行わず、製品を使用した結果生じる(間接的、派生的、その他)いかなる損害にも一切応じかねます。