ごあいさつ審査員のことば入選作品一覧
審査員のことば
鞍掛 純一(日本大学芸術学部 美術学科教授 彫刻家)
全体としては、図柄のような作品が多かったように思います。油絵具で制作する際に考えるようなマチェールなどの問題よりも、色彩や技術的な部分で考えているように思いました。僕は立体作品を制作しているので、つねに造られたものが現実に突きつけられますが、それに比べて平面作品は平面の向こう側に作者の想いを閉じ込めることができると思っています。今回、小林あずささんの作品は“そういう”表現がなされているような気がしました。一点だと作品として弱いところがあるように感じますが、二点あわせての評価として大賞に推薦しました。個人的には技術的なことよりも、描くとか造るというようなことが「手の延長線上にある」。そういうところを重要視したいという想いがあります。今回ゴールデン賞に小林さんを推薦した理由は、そのような理由もあります。もちろん増田さんの作品も他の作品に比べて安定した力が感じられますし、大賞に値するものだと思っています。(出品点数が少なかったことの質問を受けて)今回、僕の受け持つ学生にも出品するように声をかけました。最近の学生が公募展に出品しないということに関してよく学生から耳にするのは、審査そのものを信用できないという意見や、あえてグループ展に身を起きたくないという意見でしょうか。学生が公募というものに拒否反応をおこす状況は、かなり前から存在していたと思います。もちろん、美術を続ける上で公募展やグループ展が必要な人もいると思いますから、問題はその状況を自ら選択しているという客観的な意識ではないでしょうか。これは現代美術も含めてなのですが、必ずしも“現実”だけが全てというわけではないわけですから、いろんな価値評価があって当然です。そういった中で公募展のような場所があってもかまわないのかなとは思います。
天明屋 尚(美術家)
過去に5年間、ターナーアワード(学生向けの公募展)の審査員をやらせていただきましたが、今回、学生と一般の差がほとんどないのではと感じました。年を取れば上手くなるわけではないなと。技術的な上達はあるのでしょうけど、作品の本質である核の部分は変わらないといいますか。過去にTAの審査を行った時に一番いい賞に選んだのが、今回ゴールデン賞を受賞した増田さんでした。その時は、手書きで淡い色合いの不思議な風景画を描いていましたね。今回は手描きではないシルクスクリーンに挑み、そういった部分に彼の新たな進化を感じました。力がとてもある人だと思います。でもかといって、他の作品よりもずば抜けて良かったというわけではないのですけれど。最後まで、ゴールデン賞を争った小林あずささんは、どこかフランス人のような色彩感覚ですね。日本人離れしている色合いと存在感に惹かれ選ばせていただきました。技術的な面で言えば、小林さんの二点は、ぱっと見同じような描き方に見えますが、片方の作品のバックは、エアブラシを使って描いているんですね。しかしもう一方の作品のバックは、エアブラシを使わずに筆のストロークのみで描いています。描き方が違うのに、二つとも同じような効果が出ているのが不思議だなぁと感じました。また、近くによるとかなり雑な描き方ではあるのですが、遠くから見てみると作品として細かく見える不思議な効果もある作品ですね。例えばベーコンなんかは三点で一つの作品、いわゆる三部作が多いのですが、そういう“複数で一つの作品”という作り方をする作家は美術史を見渡せば結構たくさんいます。僕もそういったタイプなのですが。三枚とか、二枚とか複数で出品してくる人は、それなりの意味合いがあって出してきているのだと私は思います。そこのところもちゃんと汲んだ方が良いのではないかと今回の審査は思いました。一枚だと作品が弱いから二枚出しているとか、単純にそう思われる方もいるのかもしれませんが、少なくとも僕はそのような考えでいます。小林さんは、複数枚を出品していること自体、力が相当あることの表れだと感じました。一枚の大作で出品してもいいのに、連作でわざわざ二枚出してきているわけです。二枚で“合わせ技で一本”という事でゴールデン賞にしたかったのですが、規定で一点ずつしか選べないということになり、今回は増田さんに僅差で軍配があがりました。“受賞までにはこのような経緯がありました”ということを、ご理解いただきたいです。
堀 元彰(東京オペラシティ アートギャラリー チーフ・キュレーター)
小林さんの作品には色の魅力がありますが、作品としては増田さんのほうがちょっと抜けているという気がします。ぱっと見たときはよくわからなかったんですが、じっくり見ていくと、良く描けてるなぁというのがわかる作品ですね。わりと鮮やかな作品が多い中で、ちょっと地味だけどもしっかりした堅実な仕事の作家が賞を取るのはいいことなのではないでしょうか。小林さんと増田さん、どっちが賞とってもおかしくなかったのかなぁという感じですね。ほんとにゴールデン賞を選ぶのは難しかったように思います。気になった点としては、募集規定で国籍年齢経験不問と書いてある割には、出品者にちょっと偏りがあるように思います。とても若い方と年配の方、両方わずかしかいないという感じなので、そのあたりがちょっと気になるかな…という感じです。一次を通過した四十点の作品にも結構バリエーションがあり、いろんなタイプの作品が見れたので、良かったと思います。出品されている作品が、ある一定の傾向だけに偏ってないのも良い点かなと。しかし、賞をとった作家とそれ以外の佳作入選の作家に、ちょっと差があったかな…というのが気になったところです。もうちょっと面白い作家が出てきてもいいのかなと思いました。
山口 裕美(アートプロデューサー 現代芸術振興財団ディレクター)
応募作品が減少したのはとても残念ですね。ゴールデンコンペティションの特徴の1つは副賞が絵具であることで、その意味では「絵が描きたくて仕方がない」というような人が応募して欲しいし、国籍、年齢、経験を問わないという応募要項の情報をより多くの人に知っていただきたいです。最年少13才の湯沢くんには、頑張って欲しいです。ゴールデン賞受賞の増田君の作品は、シルクスクリーンの技法ですが、かなり高度なテクニックを使っています。ターナーアワードを受賞しているそうですが、ゴールデンコンペティションでも受賞出来ることは、ステップアップとして良いことだと思います。これから応募する方へのお願いですが、一次審査は写真審査ですから、自分の作品がよりよく見えるくらいの写真を撮影する、配慮が欲しいです。制作をギリギリまで行って、写真はあまり気を使わないのでは、もったいないです。力を込めた魂の一点の応募を期待したいです。